8月6日(木)の名盤は…
今日は、このコーナー紹介した中でも一番個性的だったのでは!?
という「クラウス・ノミ」という人を紹介したいと思います。
彼は少年時代、かのマリア・カラスに憧れ、オペラ歌手を目指します。
ベルリンの音楽学校で声楽を学び、1972年にニューヨークへ渡りました。
ホテルでパティシエとして働きながら、歌手活動も続けていたのですが、
折しもニューヨークパンク勃発前後の最も刺激的だった
アンダーグラウンド・アート・シーンを目の当たりにしたことで、
オペラとロックとアートをグチャグチャにしたような独自の世界観をもつ
パフォーマンスを完成させたのです。
顔は白塗り、髪型は実写版鉄腕アトムのようで、
プラスチック製の逆三角形の上着に蝶ネクタイで
ロボットのように動きながらロックン・ロールクラブで、
ロックをオペラ風にアレンジした曲や、
正調のオペラまでも歌ってみせました。
聴かされるロック・ファンはたまったもんじゃなかったでしょうが、
これを評価したのがデヴィッド・ボウイ。
彼に衣装デザインとバック・コーラスを依頼したのです。
もっとも、あまりに強烈すぎて数ヶ月で解雇されてしまうのですが、
これで名前が広まり、ソロ・デビューを果たすことになります。
彼の本気だか冗談だかわからない異形のパフォーマンスは
世界中の一部の進歩的な人々から面白がられ、
日本でもスネークマン・ショーに参加しますが、
実はこの頃すでに彼の体は病魔に侵されていたのです。
当時はまだ原因不明の病気だったAIDS。
そして26年前の今日、1983年8月6日、
わずか2枚のアルバムを残しただけの39歳の若さで帰らぬ人となりました。
彼こそがAIDSで亡くなった著名人の第1号です。
今日は彼の中でも比較的聴きやすい曲ですが、
唯一無二の強烈なオペラ・ロックは感じられると思います。
できれば動画も見てもらいたいですね。
今日お届けしたのは、「トータル・イクリプス」という楽曲でした。