11月26日(木)の名盤は…
今日は、“音楽は世界を変えることはできないけど、
誰かの人生を変えてしまう力がある”というお話です。
今日の話の主人公、テキサス出身のエディ・ブリケルは音楽経験ゼロ。
楽器を触ったこともなければ、歌いたいと思ったことすらない
ズブの素人の女子大生でした。
それどころか人前で何かやることが大の苦手というシャイな性格。
しかし、ある日友達に連れて行かれたクラブで演奏しているバンドを
見ているうちに興奮してきて、
気がついたら頼まれもしないのにステージに上がって
即興で歌詞を作って歌ってしまっていました。
大胆な行動に一番ビックリしたのは彼女自身でしたが、
昨日まで想像もしなかった新しい自分に出会った瞬間でもあったのです。
そのままそのバンド、ニュー・ボヘミアンズに作詞兼ボーカルとして
加わることにしました。ここからトントン拍子に話が進みます。
ほどなくメジャー・レーベルと契約が成立。
1988年、デビュー曲「ホワット・アイ・アム」が全米7位。
アルバムは全米4位で250万枚のビッグ・ヒットを記録しました。
他のメンバーはキャリアがあったとはいえ、
エディは音楽を始めてからわずか3年でミリオン・アーティストとなったのです。
夢のような話ですが、この歌声の素晴らしさや、
初めからアドリブで詞を作ったくらいですから、
まぁ、天才だったのでしょう。
でもそんな才能も”あの日”友達に連れていかれなければ、
バンドを聴いて開花することはなかったのですから人生は面白い。
彼女はこの数年後、音楽を通じて知り合った超大御所ポール・サイモンと
25才の年の差を超えて結婚し、
現在も寡作ながら夫の力を借りて活動を続けています。
地味で目立たぬ女子大生が、あっという間にスターダムに登り詰め、
ちょっと考えられないような伴侶と結ばれたエディ・ブリケルの人生は、
”あの日”音楽と出会ったことによって大きく変わったのでした。
今日お届けした曲は、
1988年、全米7位の曲、エディ・ブリケル&ニュー・ボヘミアンズで
「ホワット・アイ・アム」でした。