11月5日(木)の名盤は…
長く活動を続けるミュージシャンは人気の浮き沈みを避けられません。
10年、20年と第一線に留まり続けることは
ほとんど不可能に近いものがあります。
結局、人気が下降してきたときに「次の一手」を打つことができた人達が
生き残ることができるのでしょう。
今日は、そんなバンドの紹介です。
アメリカが生んだ偉大なるバンド「シカゴ」。
1969年にデビューし、当時珍しかったブラス(ホーン)セクションを
大胆に取り入れたダイナミックなサウンドと政治的メッセージの強い歌詞で、
一気にシーンをリードする存在となった彼ら。
1970年から77年にかけて発売したアルバム10作連続で
全米トップ10入りさせ、名実ともにトップ・バンドとして君臨するのですが、
その後、不幸な事故やトラブルが続き、
1980年~81年頃はハッキリと落ち目になってしまいました。
追い詰められた彼らはマネジメントを代え、レコード会社も移籍し、
さらにかつてのライバル・バンドのリーダーを引き抜き、
新体制で再起を計ります。
そこへ登場したのがデヴィッド・フォスター。
今でこそヒット・メイカーの大物プロデューサーとして
泣く子も黙るフォスターですが、当時まだ駆け出しであり、
シカゴ側から見ればただの若僧に過ぎません。
その若僧が”ブラスを思いっきり引っ込めてシンセを
前面に出しましょう”などと言うのですから、
バンドは烈火の如く怒ります。
”ブラス・ロックのシカゴがブラスを抜いてどうすんだ?
せっかくの再出発を台無しにする気か?”
というわけです。しかしフォスターは冷静に、シカゴには後がないこと、
再出発だからこそ大胆に攻めること、
自分が責任をもって音を若返らせることをメンバーに説きました。
“僕はシカゴを聴いて育ったんです。
シカゴがなくなったら一番悲しいのは僕なんです“。
こうして生まれたのが「素直になれなくて」。
期待通りに久々の全米No.1を獲得。
大きくイメチェンしましたが、ここから第2期の黄金時代が始まったのでした。
「次の一手」に成功したのです。