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5/13「ランDMC」

今日も先週の続き♪

先週お送りしたトム・トム・クラブの「おしゃべり魔女」のヒットで

身近に感じられるようになったラップ/Hip Hopでしたが、

その後はまた何年も目立つヒットは生まれず、

まだまだ日本の音楽ファンから市民権を得るには至りません。

しかし1983年末、Hip Hopカルチャーを描いた映画「ワイルド・スタイル」が公開、

翌84年にはラップ界の大物グランドマスター・メリー・メルが

見事なラッピンを絡ませたチャカ・カーンの「フィール・フォー・ユー」が大ヒットと、

少しずつですが確実に下地は出来ていたのです。

そして1986年。ついに黒人による本物のラップ・ヒットが誕生しました。

ランDMCの「ウォーク・ディス・ウェイ」。

これは多くの意味でエポック・メイキングでした。

まずはさっき言った通り初の本格ラップ・ヒットだったこと。

次にファッションをはじめとするHip Hopカルチャーを伝えたこと。

3つめに他人のレコードをそのまま使って再構築するという

Hip Hopの本質を実にわかりやすく教えてくれたこと。

4つめは当時世界で一番影響力のあったロックを利用したヒットだったこと。

これなくして日本での普及はなかったでしょう。

5つめは3つめ、4つめに挙げた点とも関係がありますが、

この曲、エアロスミスのカバーなんです。「ネタに使った」ではなく「カバー」。

歌い方(というか、しゃべり方)もほぼそのまんまだったのです。

要するに原曲のエアロがすでにラップだったという、

それまで誰も気付かなかったことを逆説的に示してくれたこと。

これによってロック・ファンにとってラップとの間の壁がグッと下がったのです。

そうして白人ロック・ファンを油断させておいて、

さらにそれまで何十年と続いた「黒人音楽を模倣し、盗み、搾取する白人」

という図式を根本から覆したこと。これはとても重要なことでした。

このたった1曲のヒットがラップ人気を爆発させ、

10年後には音楽勢力地図を完全に反転させ、

搾取の構図をも逆転させるきっかけとなったのです。

今日お届けしたのは、ランDMCで「ウォーク・ディス・ウェイ」でした。