5/6 「トム・トム・クラブ」
2年ほど前のこのコーナーで、
”ほとんどの日本の音楽ファンにとってのラップ初体験は
ブロンディの「ラプチュア」とクラッシュの「7人の偉人」だった”
と紹介しました。
その後一気にラップ/Hip Hopが受け入れられたかというと、
そうではありません。
言葉や文化の壁があり、なかなか浸透することはできなかったのです。
そもそも一般的音楽ファンからすると、”ブロンディのちょっと変わった新曲”とか
“クラッシュがやってるので、パンクのひとつの形態”という認識でしかなく、
その後ろに存在するブラック・カルチャーなどはまるで見えてなかったのです。
そんな大多数の日本人の前に、次に登場したラップ音楽は、
ほぼ1年後の1981年末から82年初頭、
やはりクラッシュの「ディス・イズ・レディオ・クラッシュ」と、
トム・トム・クラブの「おしゃべり魔女」でした。
クラッシュの場合は2作続いたため、カンの鋭いパンク・ファンは
”何か新しい動きがあるんだな”と薄々ながら感づくことができましたし、
トム・トム・クラブは音の感触が従来のロックの文脈とは
微妙に違うことに気付かせてくれました。
今にして思えば、その感触こそ”Hip Hop感覚”なのですが、
当時の日本人にとってはそこまで理解できるはずもなく、
彼らの正体が実はトーキング・ヘッズの
リズム隊であることが知れていたため、
やはり新しいロックの一部という解釈にとどまってしまったのです。
さらに「おしゃべり魔女」は、まぁ、これはあえてやっているのですが、
かなりヘタウマ感というか、キワモノっぽい作りだったため、
ノヴェルティ・ソング的な売れ方をしてしまい、
ラップ/Hip Hop的なるものが、
より解りにくくなってしまったかもしれません。
まだまだラップが日本に根付くには時間が必要な時代でした。
今日お届けした曲は、トム・トム・クラブで「おしゃべり魔女」でした。