8月5日「夏休み特別企画」①
今月は夏休み特別企画“生まれる前の音楽を聴いてみよう”と称して、
4回連続でお送りしていきます。
夏休み中の学生さんにしてみれば1990年代の音楽でさえ、
自分が生まれる前のものになってしまうのですが、
1970年代から80年代の曲は普段のこのコーナーでよく取り上げていますので、
ここは私マツザキの生まれる前、
1960年代の音楽と限定してみたいと思います。
1回目の今日はモータウン・サウンドを取り上げました。
モータウン、というのはレコード会社の名前で、
1959年に自動車産業の街 デトロイトで設立されました。
モーター・タウンの短縮でモータウンというわけです。
モータウン・サウンドの特に全盛期は1962年から1968年くらいになります。
ソウル/リズム・アンド・ブルースの専門レーベルで、
南部 メンフィスのスタックスと同時期に人気を二分していました。
南部の田舎のスタックスが、いかにも黒人らしい
泥臭くディープなソウルだったのに対し、北部の都会のモータウンは、
洗練されたスマートなソウルで、白人にも聴かれることを
最初から考えていた点が対照的です。
面白いのはスタックスの社長は白人で、モータウンは黒人の社長だったこと。
あれ?逆じゃないの?と思いそうですが、白人だからこそ
黒人特有の感覚にカッコよさを見出し、
逆に都会の黒人にとってはそんな感覚は早く忘れたい、
白人と対等になるには洗練しなければいけない、という思いだったんですね。
そう、モータウンといえば明るく、若々しく、ポップ。
それを実現するための戦略が徹底していました。
優れた作曲家たちによる楽曲自体の素晴らしさ、ハウスバンドによる快活で
ファンキーな演奏の見事さ。
新鮮なアレンジとAMラジオで聴いたときに一番耳に残る音作り。
そしてダンスレッスンはもちろん、普段の振るまいや歩き方まで矯正する
アーティスト向け教室と、これら全てが効果を上げて
完成したのがモータウンです。
映画「ドリームガールズ」、「永遠のモータウン」、この2本を観ると
感じがつかめると思います。
モータウンの当時のシングル盤の袋にはこう印刷されています。
“The Sound Of Young America”。
そしてまさに当時のアメリカの若者の心をガッチリつかんだのでした。
今日お届けしたのは、1966年の全米No.1ヒット曲。
ザ・シュープリームスで「恋はあせらず」でした。