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9/9「トーマス・ドルビー」

今週は1980年代に斬新なエレクトロ・ポップ・サウンドでヒットを連発した

「トーマス・ドルビー」を紹介しました。

彼はイギリス人ですが、父親が優れた考古学者であったため、

エジプトで生まれ、イタリア、ギリシア、フランス、アメリカなどの

各地で育っています。

これが彼の音楽性の幅広さに大きな影響を与えたようです。

とにかく一筋縄ではいかないのです。

また彼は作詞作曲はもちろん、ギター、ピアノ、シンセサイザー、

さらには機材オペレーションからエンジニアリングまでマスターした

マルチ・プレイヤーでもあります。

20歳前くらいからパンク・バンドでキーボードを弾いたり、

様々なミュージシャンのサポートや裏方を務め、

そこで得たギャラを貯めてソロ・デビューを果たしたのが1981年。

修業時代に身につけたノウハウと人脈を駆使して作った作品は、

当然のようにヒットしましたが、

それ以上に他のプロ・ミュージシャンにとって衝撃的なものでした。

楽曲の良さ、演奏と歌唱の素晴らしさもありますが、ポイントは3つ。

まず、当時最先端の圧倒的なエレクトロニクス。

次に、ワンマンで全部できるにもかかわらず、

ゲストを迎えてのバンドサウンドが基本であること。

最後に、ものすごく革新的な音なのに、

普通のポップ・ソングとして耳になじむこと。

特にこの3つめが大きかったんです。

例えるならば、料理の時、塩を入れることで本当の甘みを引き出すように、

エレクトロニクスを導入することで、より生楽器が生々しく響く。

そんなコペルニクス的転回にいち早く反応したのが、

プリファブ・スプラウトやジョニ・ミッチェルといった

本来アコースティックなサウンドを得意とする人たちでした。

両者とも彼をプロデューサーに迎え、

アコースティックとエレクトロニクスの対比、

あるいは融合した妙に生々しいサウンドの傑作を完成させています。

こちらもぜひ聴いてみてください。

今日お届けしたのは、トーマス・ドルビーで「ハイパー・アクティヴ!」でした。