今日は、数あるクリスマスソングの中でもアイルランドのバンド、
ザ・ポーグス、1987年の大ヒット曲「ニューヨークの夢」を紹介しました。
歌の内容を説明するなんてのは本当にヤボですが、
それでも伝えずにはいられないのがこの曲で歌われる物語なんです。
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物語は酔っ払って牢屋に入れられた初老の男の回想で始まります。
歌の1番では、若い頃、妻と二人で夢と希望に胸を膨らませて
ニューヨークへ移住した当時の幸せな姿が、
2番では結局何ひとつ夢は叶わず、落ちぶれた生活の中で、
お互い口汚く罵りあっている、年老いた現在が歌われます。
妻の役をカースティ・マッコールという人が
見事に客演しているのも聴きどころです。
そして3番で老夫婦は語り合います。
男が「こんなはずじゃなかったのに」と言うと、
妻は「あなたは私の夢を持っていったきりなのよ」と言います。
すると男は「それは今でも大事に預かっているよ。だから一緒にいておくれ。
俺は君なしでは、もう夢を見ることさえできないんだ」。
喧嘩しながらも、お互いを心の底から必要としあっている、
と言えば聞こえはいいですが、相手の支えがなければ
一人では生きてさえいけない悲惨な姿とも言えます。
でも強い絆が感じられます。
秀逸なのはコーラスの部分です。こういう一節があります。
“牢屋の外からニューヨーク警察合唱隊が、
アイルランドの有名な民謡「ゴールウェイ湾」を歌うのが聴こえる。
「ああ、もうクリスマスなんだな・・・」”。
この一節で初めて、この老人も、そして合唱隊の多くも
アイルランド移民であることが分かる仕掛けになっています。
アイルランドからアメリカへの移民は昔から非常の多く、
その大半は生活苦から移民せざるを得なかった人々なんですね。
れはそんな移民の歴史、夫婦愛、圧倒的多数の負け組みの
人生といったものを4分間に詰め込んだ、救いようはないけど、
真実と温かい眼差しに溢れた、感動的な名盤です。
ジョン・レノンや、ワム!や、バンド・エイドを押さえて、
“イギリス人が好きなクリスマスソングNo.1”に選出されたのも当然な、
エバーグリーンな1曲と言えるでしょう。