« 2014年10月 | メインページ | アーカイブ | 2014年12月 »

2014年11月

11月3日(月)の魔法のことば

今日はラジオネーム : 右ハンドルさんが出会った、
安部公房 の魔法のことば。

「道にこだわりすぎるものは、かえって道を見失う。」

「熊大ラジオ公開授業 知的冒険の旅」 王 斗艶先生

あらゆるジャンルの“注目の人”にインタビューする「ヒューマン・ラボ」。
11月から3ヵ月間、「FMK Morning Glory ヒューマン・ラボ
熊大ラジオ公開授業 知的冒険の旅」と題してお送りします。
 
第1回のゲストは、熊本大学・大学院先導機構
衝撃エネルギー科学分野の王 斗艶 准教授です。
王先生の専門である「パルスパワー」とは
どんな研究なのか詳しく伺いました。
 
141103.JPG
 
Q①お名前と職業・所属を教えて下さい。
 
名前:王 斗艶(おう・とえん)
所属:熊本大学・大学院先導機構・衝撃エネルギー科学分野
 
プロフィール
中国・北京生まれ。1986年来日。
 
1998年 熊本大学工学部電気情報工学科卒業
2000年 熊本大学大学院自然科学研究科博士前期課程電気システム専攻修了
2000年-2002年株式会社日立製作所原子力事業部、設計職
2003年-2005年熊本大学大学院自然科学研究科博士後期課程システム情報科学専攻修了
2005年-2007年熊本大学大学院自然科学研究科、リサーチアソシエイト・COE技術支援者
2007年-2012年熊本大学大学院先導機構、特任助教
2012年-現在熊本大学大学院先導機構、准教授
 
Q②王先生の専門である「パルスパワー」とは、
どんな研究ですか、わかりやすく教えてください。
 
パルスパワーとは、電磁エネルギーを制御することで、
ごく短い一瞬に非常に大きい電力を発生する技術です。
自然界の「雷」は、この代表的な例となります。
例えば、1,000Wのヘアードライヤーを1分間使用した時のエネルギーを、
このパルスパワー技術を使って制御すると、
人間の瞬きの約百万分の一となる1ナノ(10-9)秒の間に、
世界の瞬時発電電力に匹敵するテラ(1012)ワットの大電力を
発生することができます。このように、通常では成し得ない
高エネルギー密度状態を創り出すことが可能なため、
交流や直流の電力では起こり得ない様々な物理現象を
引き起こすことができます。
 
その一つとして、これまで真空中でしか形成できなかった
プラズマを、大気圧・高気圧気体、液体、個体の中で
作り出すことができるようになります。パルスパワー技術は、
様々な産業での応用の可能性を秘めており、
殺菌などに効果があるオゾンの生成、排気ガス・工場排水・
汚染土壌の浄化、コンクリートのリサイクルなど
幅広く研究されています。最近では、生物への応用も
試みられており、殺菌、有害生物の駆除、がん細胞の死滅、
細胞への物質導入、植物の生育制御など、
電気の力が持つ可能性を広げています。
 
Q③王先生がこの研究に取り組むことになった
「きっかけ」のようなものがあれば教えてください。
 
大学生1年生の時に旅行で訪れた中国の揚子江下りで、
綺麗かつ悠久な歴史をもつ大自然に魅せられた一方で、
人々の生活が酷い環境汚染を引き起こしていること
目の当たりにして、大きな衝撃を受けました。
 
将来は環境保全関係の仕事に就きたいと思うようになり、
大学4年生で研究室を決定する際には、迷うことなく、
環境応用の研究を取り入れているパルスパワーの
研究室を選びました。その後いろいろなご縁があり、
現在もこの研究に取り組み続けることができています。
 
Q④最近は「リケジョ」という女性の理系分野の研究者が
注目されていますが、
これから研究者をめざす女性にアドバイスなどありますか?
 
女性、既婚者の人が少ない世界でしたが、
少しずつ増えつつあります。
まずは、理系に来る学生さんが増えることを望んでいます。
実際にやってみたらロジックな考え方が得意な女性も多いです。
小学校や中学校から理系という道もあるということを、
知っておいて頂ければ、と思います。
理系から文系に移ることはありますが逆はあまりないので、
是非、チャレンジして欲しいです。
オープンキャンパスなどで実際に体験してみると
もっと興味もわくかもしれません。
 
Q⑤これまでの活動を通じて、最も印象深いエピソードをお願いします。
 
学生時代に、所属研究室に訪問滞在していたカナダからの
先生より受けた言葉がとても印象的です。
私は小さい時に中国から来日し、当時の熊本ではまだ珍しかった
子供外国人として、様々な経験をさせて頂きました。
そして、周りの方々にとっても初の試みとなることを
いろいろとして頂きました。日々の生活において、
プラスの意味でもマイナスの意味においても、
自分が外国人であることを意識するようになり、
思い悩むところもあって恐らく自身の行動を
制限するようになっていたと思います。
 
大学院生のときに、所属研究室にカナダのウィンザー大学から
教授の先生が訪問滞在し、
ご縁がありお話をする機会が時々ありました。
ある時、その先生との会話において私は、
「私は日本で育ったためあまり中国のことを知らないけれど、
日本にいるときは必ず外国人扱いをされる。
その一方で中国に帰った時は、どんなに流暢に中国を話しても、
現地では日本人扱いをされる。自分が何なのか良くわからない。」と
話をしたところ、その先生から
「あなたは一人の人間です、外国人でも、日本人でも、
中国人でもなく、自分を一人の人間として考えるべきです。」と
言われました。その一言で「曇り空が一瞬でパーッと晴れた」
ように感じました。そのカナダ人の先生は当該分野において
著名であり年配な方ですが、相手側のどんな小さな話にも
真剣に向き合って下さり、学生がつたない英語で表現した
言葉にも懇切丁寧に答えてくださる人間性が素晴らしい方でした。
 
先ほどの私との会話においても、先生としてはごく普通に考えを
述べただけなのかもしれませんが、
当時自身の境遇をどの様な立ち位置においてよいのか
わからなかった私にとっては、人生を変えるほどの大助言でした。
それ以来、私は自分が経験してきたことを堂々と
語れるようになりましたし、自分が外国人であるということを
あまり気にしなくなりました。
自身の意思では選べない「境遇」よりも、自らが考えて行動する
「その後の人生」の方が大事であることを考えさせくれる言葉でした。
 
Q⑥今後の活動予定やPRしたいことなどあれば教えてください
 
自分の研究内容が、少しでも世の中に役立つように、
引き続き応用研究に力を入れたいです。
まず、汚染物質の処理、有害生物の駆除、
有用物質のリサイクルなどに加え、細胞や生体を扱った
研究も進めていきます。
 
最近では、植物工場で栽培する野菜へパルスパワー技術を
応用することで、その成長を促進させる研究を続けており、
天候や立地条件に左右されない無農薬栽培野菜を、
よりお手頃な価格で消費者へ届けられることを目指しています。
また、自身の研究内容が実際の技術となって世の中に役立つよう、
企業あるいは民間とのつながりを広げていきたいと
考えております。最後に、研究活動あるいは教育を通して、
日中交流の役に立つことがあれば、積極的に活動を
行っていきたいです。
 
-----
本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
詳しくはここ↓
 

GLOBAL BEAT 「ミサ・ミード」さん

今日のグローバルビートのコーナーでご出演頂いた、
ミサ・ミードさんから現地のお写真が届きました。

● ロイヤル・アルバート・ホールの外観

royal_arbert_hall_1.jpg

● 会場内(真ん中の赤いカーテンで囲まれたボックスが審査席)

royal_arbert_hall_2.jpg

● 会場内天井の装飾

royal_arbert_hall_3.jpg

-----

<前へ 1 | 2 | 3 | 4