企業にまつわる気になる疑問を解決する「会社のヒミツ」。
今日は「クロバー株式会社」のヒミツに迫ります。
あみもの・手芸・ソーイング用品の製造・
販売・輸出を行っている会社です。
1925年創業、来年2015年には創業90周年を迎えます。
1964年、現在のクロバー株式会社に商号変更(設立年)し、
現在に至っています。
主力商品は「ぬい針」「レース針・かぎ針」「あみ針」など針類。
近年は手芸人口を増やすための取組みに力を注いでいます。
また、海外展開も積極的に行っており、アメリカ、ヨーロッパ、
アジアとクロバー商品のファンは全世界に広がりつつあります。
今日お話を伺ったのは、「クロバー株式会社」
マーケティングディビジョン広報担当 渋川芙美さんです。
Q1 「クロバー」という社名の由来を教えてください。
クロバー(別名シロツメクサ)は、非常に繁殖力の強い植物として
知られています。かつて列車が輸送手段の中心であった頃、
貨物列車につまれた荷物に付着したクロバーの種子が、
風に吹かれて拡散し、線路伝いに日本全国に
生息地域が広がったといわれています。
そのことを知った創業者岡田敏夫が、自社の製品を
クロバーのように、永続的に反映する企業にしたい、
全国津々浦々のお客様に届けたいとの思いから1948年に
「クロバー」の商標権を取得するに到りました。
よく、クローバーと「ロ」と「バ」の間にハイフンを
入れて表記すると間違われます。当社は英語の発音表記と
同様、クロバーです。
Q2 「クロバー」は手芸業界では有名な企業ですが、
業界シェアはどのくらいですか?
当社では道具商品を中心に、あみ針・あみもの用品、
手芸用品・ソーイング(洋裁・和裁)用品と幅広く商品を
展開しています。ですので、業界内シェアを測定することは
難しいのが現実です。ただ、前述の通り、針類においては、
主力販売チャネルである手芸店様において圧倒的な
シェアを持っています。特に、ぬい針「絆」、
竹あみ針「匠」は殆どの手芸店様にて取り扱いがあり、
60%程度のシェアを獲得していると考えています。
Q3 「クロバー」は、どんなイメージの会社を
目指しているのですか?
私たち、クロバーは、「手づくり」を支える会社です。
クロバーは、お客様に満足・感動していただけるモノづくりを
通じて、支持される企業であり続けたいと考えています。
私たちがお客様に感じていただきたいイメージ
「クロバーらしさ」とは、「高品質であること」、
「ユニークな製品であること」です。
クロバーのブランドマークをつけてもおかしくない品質なのか?
素材を選ぶところから始め、安全性や正しい規格で作られて
いるかどうか、高い品質基準に基づき、生産過程でも、
最終完成品段階でも厳しくチェックしています。
クロバーの商品・手づくり道具は、精密機械や
IT機器と比べると単純な構造のものばかりです。
でも、モノづくり企業としては、当然のこととして、
品質の高さにこだわっています。ですから、お客様に
「品質がいい」と言っていただけるととてもうれしく思います。
そして、「ユニークさ」。お客様が「手づくり」を
気持ちよく楽しんでいただくために、より使いやすく、
より便利な道具となるよう、「難しい」を「カンタン」
にするアイデアを追求し、優れた機能と新しいスタイルを
生み出しています。伝統的な道具も、常に新しい素材や
製造方法、アイデアを取り入れて見直し、
他にないクロバーだけの商品を生み出しています。
こうしたことを続けているうちに、海外でも様々な国で
「クロバーの商品は、ユニークで品質が高い」と
言っていただけるようになりました。
それから、クロバーが今とても力を入れているのが、
「手づくりをする人を増やすこと」です。今は、
手づくりをする機会をなかなか持ちづらいかもしれません。
そんな時代だからこそ、手づくりが楽しくなり、
手づくりをすることの価値を感じていただけるような
商品づくりに取り組んでいます。
ですから、「クロバーの商品を見ていたら、手づくりを
してみたくなった」と言われるのが
一番うれしいかもしれません。
Q4 「クロバー」の商品で最も売れた商品は何ですか?
累計でどのくらい売れている商品ですか?
「デスクスレダー」という商品があります。
針の頭を穴に差し込み、ボタンをひと押しするだけで、面倒な
糸通しが簡単に、スピーディにできるというすぐれものです。
細い針から太い針まで、ソーイングやパッチワークの
殆どのぬい針に適合しています。この「デスクスレダー」
という商品が、毎年30万ヶ近く売れる当社のNo.1ヒット商品です。
(輸出用途の数量を含みます。)
Q5 上記商品のセールスポイントや
開発秘話があれば教えてください。
最初に卓上糸通しを発表したのは、1998年でした。
当時のものは、細い針用と太い針用の2つの種類がありました。
針の太さによって使い分けてくださいとしていました。
また、ボタンは2つついていました。
1つ目のボタンで針穴を揃え、2つ目のボタンで針穴に
糸を押し込み、通すというものでした。
発売当初はもの珍しさもあり、売れ行きは好調でした。
ところが少し経つと「せっかく買ったのに使いづらい」
「うまく糸が通らない」という声がたくさん寄せられました。
ソーイングやパッチワークに使用する針の太さは0.5mmから0.9mm。
その太さを自分で判別して使い分けることは意外に
難しいことでした。また、2つのボタンがあることも煩わしい、
間違えることが多いとの指摘もありました。
それなら、お客様の期待に応える商品を作ろう。
開発部門内でのプロジェクトがスタートしました。
思考錯誤の上、穴に針穴部分を差し込むと自動的に
一定方向に針穴が揃い、ボタンを1プッシュすると
針穴部分に糸を押し込んで通す機構を完成させました。
商品を発表したのは2,001年、2年の月日が経過していました。
Q6 「クロバー」では、手芸関係のたくさんのアイテムを
扱っていらっしゃると思いますが、初心者や
一般ユーザーにもおススメの商品などあれば教えてください。
羊毛のフェルトを使って、かわいいマスコットが簡単に作れる、
フェルトパンチャーがお勧めです。
引っ掛かりのある細長い針がついた道具なんですが、
ふわふわしたキレイな色の羊毛フェルトにこの針を
何回も突き刺すと、だんだんと形が固まってきます。
針の引っ掛かりが羊毛どうしを絡ませることで、
固まっていくんですが、立体的に整えることで、
スイーツや動物など好きな形を楽しむことができます。
もちろん、平面的なものに模様を描いて、
アップリケのようにすることもできます。
アイデア次第でどんな形でも作れて、とても楽しいですよ。
Q7 「クロバー」の歴史の中で
もっとも印象的な出来事は何ですか?
クロバーの中心商品に編み物をするあみ針があります。
編み物業界では昔、「不況になると手編み業界は活性化する」と
言われていました。それは、景気が悪くなって収入が減ると、
消費者は手作りすることで衣料品の支出を減らして生活防衛をする、
ということがあったそうです。
いまでは、ちょっと考えにくいことですが。
ただ、編み物というのは、そんな経済的な理由以外でも、
全国的に流行して、ブームとなることが何回かあったのですが、
最大のブームが1985年ころでした。ブームの主役は、
20代を中心とした女性で、当時はほとんどの女性が
あみものの経験があったとアンケート調査の記録が残っています。
渋谷や原宿の若い女性への調査では、9割以上の人があみものを
したことがある、7-8割の人が編み物が好き、と答えています。
彼女たちは、自分のために編んでいただけではなく、
それを好きな人にプレゼントすることが流行していました。
もらったほうも、もらうことが自慢で、もらえないと
肩身の狭い思いをしたとか、そんな雰囲気でした。
ですから贈り物をしたいから編み物を始めた、という方が
4割近くいらっしゃいました。その頃の手芸店では、
編み物シーズンの夜になると会社帰りの女性が集まって、
お店の方に教わりながら編み物をする光景が普通に
見られたそうです。そんな状態ですから、
その頃から販売している弊社の竹あみ針ブランド「匠」は、
ものすごい勢いで売れに売れ、生産が全く追い付かなかったと
いいます。最盛時には、月産140万本、年産1000万本以上生産し、
90年代には、累計生産数1億本を突破しました。
当時は、作る前からどのお客様に販売するか、
営業マンが取り合いをしていたそうです。
営業マンは、いただいた注文を断るのが仕事。
最後には、ディスプレイにかかっているサンプルまで
無くなったという、今の時代では創造もつかない話も
残っています。
Q8 そのほか「クロバー」に関する
面白いエピソードなどあればお願いします。
屋外型であみものをするというイベント、
「ニットアウト」でしょうか。今から10年くらい前の数年間、
東京の六本木ヒルズなどで、大規模な屋外型の
自由参加あみものイベントを行いました。
これは、あみものの楽しさを、もっとたくさんの方に
体験してもらいたい。そして、多くの人たちが楽しんでいる
ところを通りがかった人にも見てもらって、
あみものに対して関心を持ってもらいたい、との思いから
実施した非営利のイベントです。クロバーだけでなく、
他の毛糸メーカーにも多数参加してもらいました。
もともとアメリカのニューヨークなどで行われていた
同種のイベントを見た弊社の社長が、日本でもあみものの
イメージづくりに役立つのではないかと、考え企画したものです。
ニットアウトでは、全くの事前告知なしに、当日偶然に
“六本木ヒルズ”へ来られた不特定多数の多様な人々に、
毛糸と道具を無償で配布して、その場で簡単なマフラーを
編んで楽しむことを呼びかけました。
編み物に興味があるなしを問わない無差別な働きかけでしたが、
来場者の反応はとてもよくて、予想以上の参加者がありました。
当初、比較的編み物に親しみがある中高年女性の参加が多いのでは
ないかと考えられていましたが、実際には若い女性や
あみもの未経験者の参加が多く、しかもカップルで
男女ともに参加するケースも目立ちました。
サンプル配布数は延べ5000個以上、実際にあみものへ
参加された方は2500人以上にもなりました。
その参加者には外国人や男性、家族連れや子どもも含み、
幅広い人々があみものを熱心に行い、予想以上の関心の高さに、
関係者は驚いたそうです。
参加者からは、“とても楽しい時間を過ごせた”、
“初めてだったが夢中になってしまった”と、
あみものの楽しさを感じる声が多く聞かれました。
広い会場内で、たくさんの人々が一心に手を動かしている
光景はとても感動的で、あみものをすることそのものが、
人を無心な状態にするのだなということが感じられました。
このようなイベントは、表参道ヒルズや東京ミッドタウンなど、
所を変えて数年行われました。
スタジアムで野球を観戦しながらあみものをする、
という形式で行ったこともあります。
Q9 そのほか、オススメの商品、サービス、
キャンペーンなどPRしたい案件があればお願いします。
弊社がお手伝いして進めています、各地手芸店でのあみものや
ソーイング、手芸などの講習会、
ワークショップにぜひ来ていただきたいですね。
先ほどもお話しましたように、クロバーは、
「手づくりをするひと」がもっともっと増えてほしいと
思っています。だから、「手づくりを始めたけれど、
わからないことがあってやめてしまった」とか、
「手づくりを始めたいけれど、どうしたらいいかわからない」
なんていうことが無いようにしたいと思っています。
そのために、手づくりを始めたい人や、
昔やっていたけれどまたやってみたい、というような方が、
気軽に始められるような環境をお客様の身近に作りたいと、
各地区の手芸店さんと享禄して、
こうした手づくりの講習会、ワークショップを提案しています。
手づくりをされていない方でも、簡単にに始められるような
メニューをたくさん用意していますので、
気軽に参加していただきたいですね。
ぜひ、お近くの手芸店をのぞいてみてください。
それから、クロバーのホームページでもご案内しております。
今日お話を伺ったのは、「クロバー株式会社」
マーケティングディビジョン広報担当 渋川芙美さんでした。
渋川さん、ありがとうございました。
「クロバー株式会社」オフィシャルサイト
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