2月4日(木)の名盤は…
今週は1月14日に71歳でなくなったボビー・チャールズを紹介しました。
おそらく今までこのコーナーで取り上げた人の中でも一、二を争うほど
一般的には知名度の低い人だと思いますが、
日本の40代から50代のアメリカンロック、シンガーソングライターファンに
とっては絶対に忘れられない存在なのです。
ルイジアナ出身の彼は何と黒人音楽の名門
チェス・レコード初の白人歌手として1955年にデビュー。
残念ながらヒットは生まれず、歌手としては挫折しました。
ところが、彼のオリジナル曲を気に入った当時の大スター、
ビル・ヘイリーがカバーした「シー・ユー・レイター・アリゲイター」が
大ヒットするや、他の歌手からも作曲依頼が殺到し、
結果として1950年から60年代のロックンロール、
R&Bのヒット曲を数多く書くこととなります。
作曲家として成功を勝ち取ったのです。
しかし、彼はあまりにも欲がなく、ある程度の曲を書いた時点で
定期的に入ってくる作曲印税に満足して、隠居し、
完全に業界から消えてしまいます。
次に発見されたのは7年後の1972年。
南部のルイジアナから遠く離れた北東部のウッドストックに
移住していた彼は、そこに住むザ・バンドのメンバーなどと仲良くなり、
初のアルバムを発表したのです。
初期のロックンロールとは違う、素朴でしみじみと味わい深い、
全編に癒し効果の漂う、それでいて高い音楽性を誇るこの作品は、
当時日本で発売されず、輸入盤で口コミで話題となり、
“幻の名盤”ブームの火付け役ともなり、6年後の78年、
ついに日本盤が発売されるまでの経緯を体験したファンには
絶対的存在となったのです。
しかしここでも欲もなければ飛行機も嫌い、
人前で演奏するのも好きじゃないという彼はほとんど表舞台にでることもなく、
2ndアルバムは15年後、3作目は8年後と、その音楽性らしいマイペースでした。
忘れた頃に突然届けられる新作を楽しみにしていたファンの方にとっては、
それをもう受け取ることができないのは本当に残念ですね。