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「ヒューマン・ラボ」。
今日は熊本地方気象台の堤 之智 台長をゲストに
お迎えして、8月末からスタートする「特別警報」
について解説していただきました。
Q① ご出演の方のお名前と職業・所属を教えて下さい。
名前: 堤 之智
社名: 熊本地方気象台
所属(役職): 台長
昭和33年7月18日生、福岡県福岡市出身
昭和61年4月 気象庁 観測部 採用
昭和62年4月 気象庁 気象研究所
(地球環境に関する観測・研究)
平成12年4月 気象庁 地球環境・海洋部
(気象に関する国際協力など)
平成20年4月 青森地方気象台長
平成22年4月 水戸地方気象台長
平成24年4月 現職
Q② 「熊本地方気象台」の基本情報を教えて下さい。
熊本地方気象台:
〒860-0047 熊本市西区春日2丁目10番1号
熊本地方合同庁舎12階(案内図)
代表電話:096-352-7740(総務課)
Q③ 「熊本地方気象台」とは、
具体的にどんな仕事をしているところですか?
わかりやすく説明をお願いします。
気象台は気象、地震、火山、海洋などに関する情報を
提供して、人々の命を守ったり、暮らしを支援するための
情報を出す所です。
気象台には「台」という字が入っています。
これはもともと土を高く積んで見張るための
物見台のことです。観天望気と言う言葉がありますが、
天気を予想するために物見台に上って空を観察することから
気象台という言葉がついたのだと思います。
他にも台がつくものは天文台や灯台があります。
そして空を見て天気を観測するというのは、
適切な情報を出すために、今でも気象台の
大切な仕事に一つになっています。
気象台は1年365日24時間休みなく、
天気の変化や地震などを見張ったり予測したりして、
天気予報や気象警報などの情報を発表しています。
そして、住民の方々にそれらを使っていただくことに
よって、災害の防止・軽減に貢献しています。
Q④ 今回「特別警報」というあたらしい警報が
スタートするとのことですが、詳しく教えてください。
一昨年の台風12号により紀伊半島で大きな被害が出ました。
また昨年九州北部豪雨でも大きな被害が出ました。
何れの場合も既に警報は出されていたのですが、
このように警報基準を遙かに上回るような現象が
起こった場合に、自治体や住民の方々にいっそうの
注意喚起をお願いするために、新たに特別警報が
発表されることになります。
この特別警報が発表されるのは、大雨、台風、津波、
火山噴火などで重大な災害が起こる恐れが著しく
大きいと思われる場合です。
尋常ではない現象が起こっていたり、
今後起こる恐れがあります。内容を良く確認して、
安全のために、直ちに身を守る行動を取ってください。
また、日頃から安全と思って使っているいつもの道、
橋、トンネルなどが危険になる場合があります。
いつもの行動が安全とは限りません。
周囲に十分警戒して最善の避難行動を取って
いただくようにお願いします。
もし外出することが危険な状態に既になって
いるときは、無理をせず家の中で比較的安全な
場所にとどまってください。
従来からの警報も、引き続き重大な災害が起こる
おそれのあるときに発表されます。
特別警報によってこれまでの警報の基準が
変わるわけではありません。警報が発表された段階で、
十分に警戒して早めの対応を行うようにお願いします。
Q⑤ 気象台からの情報について、わたしたち熊本県民は、
どんなポイント注意する必要があるのでしょうか?
気象台はさまざまな情報を出しています。
いざという場合になってあわてて情報を見ても、
よく理解できない場合があります。
落ち着いて判断するためには、特別警報を含めて
どういう情報があり、それぞれがどういうものなのかと
いうことを日頃から理解しておくことが重要です。
また、それらの情報が出された際に、
どういう行動をすればよいかを知っておくこと、
考えておくこともいざという際に適切な行動を
とるためには重要です。
気象台はいろんな機会を使って広報を行っていますが、
こちらから出向いて出前講座などもやっていますので、
住民の方々も身を守るために、日頃から情報の理解に
務めていただくようにお願いしたいと思います。
Q⑥ 「台長」というお仕事は、たいへんだと思いますが、
一番苦労する点、そのほか、仕事でのやりがいなど
あればお願いします。
私の台長という仕事は、自治体や一般の住民の方々に
気象台を身近に感じていただき、気象台の発表する情報を
利用してもらうために、住民と気象台とをつなげるのが
仕事だと思っています。
気象台からの情報をもっと利用してもらうことによって
住民の方々の生命・財産が守るために、
いろんなことに取り組みたいと思っています。
住民の方々の理解を得ることが出来たり、
住民の方々の役に立ったと感じたときに、
この仕事のやりがいを感じます。
我々はもちろんお叱りを受ける場合もあるのですが、
気象台からの情報と住民をもっと結びつけるためには、
住民の方々が気象台からの情報をどう考え、
何を要望し、何に苦労しているのかを知ることが必要です。
そのためには、住民の方々からもいろんな声を
聞かせていただければありがたいと思います。
また大雨などが起こっても、被害がなかった場合には、
我々の情報が役に立ったのかどうかはわかりません。
もし役に立ったことがあれば、それも気象台に伝えて
いただければ、気象台の職員はいっそう努力して
仕事をやれるようになると思います。
Q⑦ 「気象台」に長年お勤めの中で、
これまでで、最も印象深いエピソードをお願いします。
平成23年3月の東日本大震災発生時に水戸の気象台で
勤務していました。その際の地震は大きくてゆっくりと
した地震で、それが長く続きました。
停電したので直ちに非常電源に切り替えて、
機器の故障がないことを確認し、職員の安全を確保して、
徹夜で情報の提供を行いました。
県の災害対策本部に人を派遣するとともに、
ラジオにも電話で職員が出て随時情報を伝えました。
県内ほぼ全域で停電したのでTVは見れず、
ラジオは有力な情報伝達手段となりました。
茨城の沿岸には津波も繰り返し襲ってきましたが、
各方面の尽力と地形の効果などにより、
東北地方ほどの被害は出ませんでした。
このとき、東北地方の全ての津波計が津波のために破壊、
故障してしまった中で、茨城県大洗にある津波計は
生き残りました。これが津波の状況を把握するための
貴重な観測装置となりました。
停電しているのでバッテリーで動いていたのですが、
2日間でバッテリーが切れてしまうため、
その間に気象庁本庁と力を合わせて、津波計まで
予備のバッテリーを持って行きました。
担当者は救命胴衣をつけながら波止場にある津波計まで
行ってバッテリーの交換を行いました。
茨城県の被害は、それほど報道されていないかも
しれませんが、地震による被害は相当なものでした。
県庁所在地の水戸市内でも停電、断水し、
市内では長い所では停電は5日間、
断水は6日間にわたりました。
多くの建物で倒壊の恐れがあったり、
高速道路も含めて交通網は寸断されました。
このため、食料などの物資は途絶し、スーパー、
コンビニなどあらゆる店から長期にわたって
食料品やガソリンがなくなりました。
そういう困難な状況の中で、住民だけでなく、
復旧工事の現場や避難所に対しても、気象台の職員が
力を合わせて、気象情報を提供し続けることが
出来たことが印象に残っています。
Q⑧ その他、熊本県民にPRしたいことなど
あれば教えてください。
最もニュースなどに取り上げられている情報の一つは、
気象台からの情報ではないでしょうか?
「気象台からの情報に依りますと・・」や、
「気象台は呼びかけています。」などニュースで
よく聞く言葉です。
また、日常の会話でもお天気に関することほど、
広くどこでも誰でも話している話題は
無いのではないでしょうか?
これほど身近なお天気に関する情報ですが、
さらにもう一つ踏み込んで、どういう場合に危なくて、
その場合にどうすればよいかということは、
今ひとつ理解されていないかもしれません。
いざ情報発表を知っても、
その情報の意味を知らないと適切な判断は出来ません。
気象台は情報を出すだけではなく、
その利用に関する様々な普及活動も行っています。
是非気象台からの情報の見方やその利用の仕方も
覚えていただきたいと思います。
いざという時に必ず役に立つと思います。
また、気象台のホームページには、
実はいろんな情報があります。気象に関する知識や
過去の観測データなどもホームページ見れます。
さらに、気象台は地球温暖化防止のために、
これまでの熊本での気候変化などの情報提供も
行っています。どうかご活用ください。
最後に、先ほども申し上げましたが、
気象台に対していろんな声を聞かせていただければ、
今後の業務の参考になると思います。
よろしくお願いします。
今日は熊本地方気象台の堤 之智 台長をゲストに
お迎えして、8月末からスタートする
「特別警報」について解説していただきました。
堤さん、ありがとうございました。
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