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2013年12月

熊大ラジオ公開授業「知的冒険の旅」 滝川清先生

あらゆるジャンルの注目の人にインタビューする
「ヒューマン・ラボ」。
 
11月から3ヶ月間にわたって
スペシャル企画でお届けしています。
題して「FMK Morning Glory  ヒューマン・ラボ
熊大ラジオ公開授業・知的冒険の旅」
 
毎回、熊本大学の先生を講師に迎えて、
さまざまジャンルの研究テーマについて
お話をうかがいます。
 
第6回の講師は滝川清先生です。

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Q①お名前と職業・所属を教えて下さい。
 
名前:滝川清
所属:沿岸域環境科学教育研究センター
 
Q②滝川先生の専門である「海岸環境工学」とは、
どんな研究ですか、わかりやすく教えてください。
また、「環境と防災の調和した
八代海再生プロジェクト」について教えてください。
 
「海岸環境工学」:
周りを海に囲まれ、厳しい自然環境にある我が国において、
国土とともに沿岸域に集中する人々の生命と
財産を守るための「海岸の工学」と、
「海岸環境の保全とその継承」を目的とする研究で、
「気象・海象・地象」と「人を含む生態系」に
関わる非常に広範な研究分野。
 
「環境と防災の調和した八代海再生プロジェクト」
◎研究背景と目的◎
八代海域は、人間活動の影響による自然・
生態環境の悪化、台風の常襲地帯による高潮・
高波、洪水、強風等による水・土砂災害の
防災問題にも直面しています。
 
そのため環境と防災の調和した沿岸地域社会の
創成に関する対応策の構築が、海域に面する
自治体や住民から切望されています。
 
そこで平成23年度から、有明海のように広範囲に
渡る詳細な調査・研究が行われていない
「八代海」を対象として、文部科学省特別経費
によるプロジェクト「生物多様性のある八代海
沿岸海域環境の俯瞰型再生研究プロジェクト
(代表:滝川)」が5カ年の予定で開始しました。
 
本プロジェクトは、地域に立地する熊本大学が、
長年にわたり取り組んできた海域環境の研究・
教育の実績に基づき、工学・理学・社会学等に
わたる学際的学術研究の展開と実証実験を
行なって、生物多様性のある八代海域の
俯瞰型再生の研究に取り組み、「環境・防護・
利用の調和した八代海の再生・創成」を目標として
多様な学術研究機能の発揮を目的としています。
 
◎研究計画および成果・波及効果◎
わが国で最も閉鎖度が高く、環境悪化が
有明海と同様に著しい「八代海」が抱える
環境再生と防災問題の緊急かつ重要な地域課題に
対し、これまでの有明海再生に取り組んできた
多大な研究・教育等の実績に基づき、
「環境と防災が調和し、生物多様性のある
八代海の再生・創成」を目標に、
従来は学術領域として分離していた「自然・生態」
「安全・防災」「開発・利用」の3領域の
総合化の視点「俯瞰型」を基本として、
 
①自治体等の視点に立った環境と防災の調和した
再生・創成ビジョンを樹立し、
 
②「海域環境変動と生物生息環境変動の把握」と
研究を基に、生物生産や生物群を維持できる
「生物多様性の沿岸域環境」を再生する
俯瞰型再生方法論を構築すると共に、
 
③この俯瞰方再生方法論に基づいて海域環境の
「未知事象の解明」
「環境変動の評価と予測手法の開発」
「生成技術の開発と実証」と学術研究を進展し、
 
④「自然・生態」「安全・防災」
「開発・利用」のバランスを考慮した、
環境と防災の調和に関する科学的アプローチの
視点から、沿岸海域環境の地域特性に応じた
「生物多様性のある沿岸海岸域環境の再生・
保全の実践マスタープラン」の策定を行う。
 
本プロジェクトの成果は、学際的学術研究を
もたらすだけでなく、地域還元・波及効果として
①海域環境の真の再生による生物多様性・
水産資源の回復及び増加による地域活性化、
②環境と防災の調和した安全・安心な持続性の
ある地域社会の形成、
③底質改善や水質改善技術の開発による
地域環境産業の振興など、大いに期待されています。
 
Q③滝川先生がこの研究に取り組むことになった
「きっかけ」のようなものがあれば教えてください。
 
有明海の環境再生については、2000年冬の
「ノリ不作」依頼、国や研究機関を中心に
数多くの調査・研究が実施されてきており、
滝川も「有明海の再生プロジェクト
(略称):科学技術振興調整費(約4億円)」を
実施し多くの研究成果と国策に反映してきています。
 
しかしながら、八代海に関しては、
環境悪化が著しいにもかかわらず、
十分な調査・研究が進んでおらず、
不明な点が数多い状況にあります。
 
また、八代海は台風の常襲地帯で毎年、
高潮など海象災害の危険にさらされており、
災害に関する課題もあり、この相反する課題に
如何に対処するか緊急の課題です。
 
このような八代海の「環境と防災に関する
総合的研究と対策の提示」が不可欠であると、
長年来、考えてきておりました。
ようやく、23年度からの文部科学省からの
研究予算が認められ実施している現状です。
 
Q④これまでの活動を通じて、
最も印象深いエピソードをお願いします。
 
1999年9月の「不知火海高潮災害」:
災害直後の調査から、復興対策に当たっての国
・県等の委員長として、その対策の任に当たった。
想定最大高潮を基準とした新たな“減災”対策の
基本指針を策定した.
 
佐賀県の芦刈町では、我が国初の住民参加による
高潮ハザードマップ作成を指導するなど、
我国初の海岸災害の減災対策の理念を提言し,
熊本県および国の高潮減災対策の
基本方針として策定した.
これを受けて「熊本県海岸保全基本計画検討会
(委員長)」では防護・環境・利用の調和を
目指した基本計画を策定した.
 
さらに17年度の新規事業として熊本県では
複合型災害を想定して
「高潮・洪水浸水氾濫ハザードマップ策定
(減災プロジェクト)」が開始され,
この実施に際しての学術的指導・
提言を行っている.
 
「有明海・八代海の環境再生への取り組み」:
国土交通省の「有明・八代海海域境検討委員会
委員長(「海輝」および「海煌」調査の委員会)」
や農林水産省の「ノリ不作の第3者委員会委員,
同数値モデル部会委員長」,
 
また,これに引き続き環境省に設置された
「有明・八代海(等)総合調査評価委員会委員
(再生法に基づく国の諮問委員会),
同委員会に設置の海域再生対策検討小委員会
(委員長)」,水産庁の「有明海漁場
改善技術検討委員会委員」等々や熊本県の
「有明海・八代海干潟等沿岸海域再生検討
委員会(委員長)」などを通じて,
“海域環境のマスタープラン作り”に向けて
技術指導・政策提言等を行っている.
 
また,国土交通省や農林水産省などとの
共同研究をも数多く実施中で有明海・
八代海再生に精力的に取り組んでいる.
 
Q⑤今後の活動予定やPRしたいことなど
あれば教えてください。
 
①有明海・八代海の再生策のシナリオ策定:
環境省、国土交通省などの委員会の委員長の
重席にあり、その任に鋭意、尽力したい。
 
②八代海再生プロジェクトの推進:
現在、熊大で取り組んでいる
「八代海再生プロジェクト」のリーダーとして、
その成果をまとめ国策へと反映していく。
(平成23年~27年度の5年間の
プロジェクトで、あと2年間)
 
③NPO法人:みらい有明・不知火:
2002.6に設立のNPO法人の
理事長として、海域の環境・防災に関する
学術的調査・研究の推進、成果の提供を推進し、
環境と防災の調和を目指した
地域のあり方に関する活動を継続。
 
以上、「FMK Morning Glory ヒューマン・ラボ
熊大ラジオ公開授業・知的冒険の旅」でした。
 
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本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
詳しくはここ↓
 

12月5日(木)の魔法のことば

今日はラジオネーム : リトルクイニーさんが出会った、
長友佑都選手のおばあちゃんの魔法のことば。

「成功は人の表面を飾る。失敗は人の心を豊かにする。」

「総ぐるみ くまもと環境フェア2013」

企業にまつわる気になる疑問を解決する「会社のヒミツ」。
 
今日は、今月14日(土)15日(日)にグランメッセ熊本で
開催される「総ぐるみくまもと環境フェア2013」
ヒミツに迫っていきます。
 
ゲストは、熊本県環境生活部 環境局 環境立県推進課
環境活動推進班 岩永千夏主幹です。
よろしくお願いします!

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Q1、先ずは、熊本県の「環境」の問題点や今の取り組み、
また今後の目標・課題など教えて下さい。
 
テレビや新聞などでご存知かと思いますが、
昨今、地球温暖化、電力不足問題、PM2.5など
県民の生活に密着した問題が発生しています。
これらは国あるいは地球規模の問題でも
ありますが、節電・省エネの実践など私達一人ひとりが
足元から行動を起こすことが重要です。
県では、昨年策定した「熊本県総合エネルギー計画」により、
新エネの導入と省エネの推進により、家庭の電気使用量に
あたる「原油換算100万kL」のエネルギーを
捻出することを目的に様々な取組を進めています。
また、今年3月には、県民の小学生、ご家族で使用して
いただける「くまもとらしいエコライフ学習帳」略して
「くまエコ学習帳」を作成し、くまもとの環境を大切に
暮らすことについての普及啓発を行っています。
 
Q2、我々、県民に身近な問題・課題は
どんなものが有りますか?また「くまもと」らしい
環境活動とはどんなものが有りますか?
 
くまもとには「もっこす」「わさもん」という
2つの県民性があります。これらを生かし、
県民それぞれが続けられるスタイルを選び、
生活に取り入れ、県民総ぐるみで環境を大切にして暮らす
「くまもとらしいエコライフ」を、県民運動として
推進しています。具体的には、熊本県は、地下水に
恵まれた「水の国」くまもとだから水を大事に使う。
お湯を作るときは電気やガスを使って沸かしているので、
節水は省エネにもなります。
また、熊本県は、農業や水産業も盛んです。県の特産品は、
体を温める効果や冷やす効果があり、また、地元で作った
食材を地元で食べる「地産地消」は、食材を運ぶ船や
トラックから出る二酸化炭素も減らせます。
最近は、LED照明や冷蔵庫など家電製品の省エネ化も
進んでおり、10年前の製品を買い換えると大きな
節電効果があるといわれます。
最近よく聞かれる「スマートメーター」を使うなど、
県民の皆様には、ぜひ「わさもん」心を発揮して、
新しい製品やテクノロジーもどんどん利用して
いただきたいと思います。
 
Q3、今月14日(土)15日(日)に
グランメッセ熊本で開催される「総ぐるみくまもと
環境フェア2013」の中身を教えてください。
 
・くまモンが主人公の「環境紙芝居」
・「廃油キャンドルづくり」等の体験イベント
・「エコくまポイント」アンテナショップ
・クイズラリーで「くまモンカレンダー」プレゼント!
・表彰式(くまもと環境大賞、環境絵画コンクール、
こどもエコクラブ壁新聞展)
・「水の国くまもと」シンボルマークの発表
※くまモンもやって来ます!!
(14日(土)13時30分~14時)
 
Q4、上記の中で、特に注目のイベントを
詳しく紹介して下さい。
 
くまモンが主人公の「環境紙芝居」、クイズラリー参加で
もらえる「くまモンカレンダー」はどちらも、
今回の環境フェアで初お披露目となります。
どちらも、「くまもとらしいエコライフ」をテーマと
しており、ご家族連れで楽しく環境を勉強して
いただける内容になっています。
また、「エコくまポイント」アンテナショップも、
今回初めて行う企画です。
通常は県内の約90協賛店で使用いただける
「エコくまポイント」を、フェアの会場内で使って
いただけるアンテナショップをオープンします。
買い物ごっこ感覚で、小さいお子さんなど、
いろんな方に参加いただけると思います。
なお、「エコくまポイント」は、当日クイズラリーや
体験イベントに参加した方にお渡しします。
 
Q5、岩永主幹、ご自身が特に取り組んでいる
「エコ活動」は有りますか?
又はこれからやりたいこと等あればお願いします。
 
①「うちエコ診断」を受けた
(気をつけるポイントが分かった)。
②子ども達に注意されたりしています。
 
Q6、環境に関して「熊本の実はここがスゴイ!」
「ここがダメ!」など、県民の皆さんが
意外と知らないお話や情報が有りましたら、
ぜひお願いします。
 
熊本県は、九州の中でも「夏暑く、冬寒い」県といわれます。
そういった意味では、他の県に比べて節電・省エネが難しい
部分もあるのかもしれませんが、節電しているつもりでも、
まだ私達にできることはたくさんあると思います。
「水」や「農業」以外にも、熊本は、
「太陽の光が多く、太陽光発電に適している」、
「海山川などの自然が多い」など、たくさんいいところが
あります。先日、熊本県が「ひとりあたりのごみの排出量が
全国で一番少ない県」にもなったという発表もありました。
この他にも、熊本県のいいところをたくさん見つけていただき、
未来を担う子ども達のためにも、できるところから
エコライフの取り組みを始めていただきたいですし、
そのきっかけやヒントを【総ぐるみくまもと環境フェア】で
見つけていただけたらと思います。
 
今日はゲストに、熊本県環境生活部 環境局 環境立県推進課
環境活動推進班 岩永千夏主幹にお越し頂きました。
岩永さん、ありがとうございました。
 
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12月4日(水)の魔法のことば

今日はラジオネーム : メルシーさんが、
映画 「ネバーエンディングストーリー」の中で出会った
魔法のことば。

「あきらめるな。幸運が味方してくれる。」

「クリスマスパエリア」

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「やさしいごはん」
おいしい食べ物は人を元気にします。
おいしいものをおいしい季節に食べたいですね。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 
このコーナー『やさしいごはん』では
毎回、季節にぴったりの食に関する話題を
お届けしています。
 
毎月、第1水曜日に登場するのは、
『オーガニックママン』松田耒布さんです。

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Q① 松田さんの近況は?
 
お友達と山口&島根女子旅に行って参りました!
 
Q② 今日の(料理)はなんでしょう?
 
いよいよ12月!
クリスマスをはじめ、
ホームパーティの機会も増えると思います。
そこで、簡単の出来て見た目もクリスマスらしい
「クリスマスパエリア」を御紹介します!
 
※(材料)3~4人分

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鶏肉(手羽先の開きや手羽元などお好みで4本)
パプリカ赤、黄各1/2個
玉ねぎ1/2個
ブロッコリー1/2個
にんにく1片
コンソメ1個
塩、胡椒適量
米2合
ホールトマト100g
サフラン1つまみ
オリーブオイル大さじ2
白ワイン大さじ2
 
※作り方
①サフランを指で軽くつぶしながら
20㏄の湯に入れ、色を出す。
 
②にんにくと玉ねぎはみじん切り、
ブロッコリーは食べやすい大きさにカットする。
 
③鶏肉に塩、胡椒をし、
フライパンで焼き色をつける。

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④②を一旦取り出し、フライパンに
オリーブオイルを入れにんにくを入れてから
火をつけ、弱火で香りを出し、
玉ねぎを入れて軽く炒めたら
ホールトマトを入れて軽く煮詰める。

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⑤④に米を洗わずそのまま入れて

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軽く炒め合わせ、水400㏄と
白ワイン大さじ2パプリカ、コンソメ、
塩、胡椒をいれる。

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その上に鶏肉、ブロッコリー、型抜きで抜いた
パプリカを並べ、アルミホイルをしてから蓋をし、

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弱火で15~20分、最後に蓋とアルミホイルを
取って強火にし、水分が飛んだら出来上がり!

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※お好みで、あさりやいか等の
シーフードを入れてもGOOD!
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12月3日(火)の魔法のことば

今日はラジオネーム : とりおとこさんが出会った、
彫刻家 北村西望の魔法のことば。

「何度負けてもいい。
のんきにじっくりとやれば必ず勝つ日がきます。」

「かぐや姫の物語」

毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の「かぐや姫の物語」です。
この映画は、宮崎駿監督と並ぶ
「スタジオジブリのもう一人の巨匠」と言われる
高畑勲(たかはたいさお)監督が、
「ホーホケキョとなりの山田くん」以来14年ぶりに
手掛けた最新作です。
 
今年はジブリの長編映画が年に2本公開されることで
話題ですが、宮崎監督と高畑監督の映画が同じ年に
公開されるのは、1988年の「となりのトトロ」と
「火垂るの墓」以来、なんと25年ぶり。

もともとは2本同日公開を目指していたそうですが、
高いクオリティを追求し、「風立ちぬ」から4か月遅れでの
封切りとなりました。
当初予定されていたこの「同日公開」のプランに関しては、
裏話がありまして、「風立ちぬ」より早く製作が
開始されていたにもかかわらず、高畑監督のあまりの
完璧主義ゆえに作業が遅々として進まなかった
「かぐや姫の物語」。
「このままのペースだと、完成は2020年になる。」というぐらいに
製作が遅れていました。そこでプロデューサーが考えだしたのが、
「風立ちぬ」と「かぐや姫の物語」の同日公開プランです。

ライバルとして互いを強く意識している宮崎監督と高畑監督。
そのライバル心に火をつけることで製作体制を劇的に
スピードアップさせることに成功したそうです。
結果、4ヶ月遅れとはなったのですが、
なんとか2013年内に公開にこぎつけることが
できたという訳です。
 
完成した映画は、確かに時間をかけて製作されたのが
頷ける完成度になっています。
淡い色彩のまるで日本画のような美しい絵が、
動く映像をみているだけでも感動します。
高畑監督は、“いわゆるアニメ的”な表現を嫌い、
「おもひでぽろぽろ」では写実的な画を。
「ホーホケキョとなりの山田くん」では、水彩画のような背景に
マンガ的なキャラクターを融合させたりと、
常に、実験的な映像の試みを行っていますが、
今回は画面全体を淡い水墨画のように描き出し、
これまでのアニメーションのイメージを覆す、
圧倒的な表現を作り出しています。
 
映画の中で、かぐや姫の幼少期は、特別、
丁寧に描写してあって、よちよちの歩く赤ちゃん時代の
かぐや姫の描写は、赤ちゃんの柔らかな肌の質感まで
観客に伝わってくるような見事な作画になっています。
通常スタジオジブリの映画は、社員スタッフが作画を担当
していますが、この作品は、現在の日本アニメ界から
選抜れた優秀なアニメーターたちが作画を担当しています。

この作品の製作が遅れたおかげで、製作スタッフを奪われた
「劇場版新世紀エヴァンゲリヲン」最新作など
多数のアニメ作品が大幅に遅れてしまったそうです。
それくらい優秀な人材を贅沢に投入しているんですね。
 
「かぐや姫」は、“日本で最も古い物語”として知られていますが、
その文章は起こった出来事が中心に描かれ、
登場人物の心情はほとんど分かりません。
しかし高畑監督はこの映画で、原作を忠実に再現しながら、
かぐや姫や育ての親たちの気持ちにスポットをあて、
物語に深みを与えることに成功しています。
特に、田舎暮らしから都に出て行って、
多くの男性から結婚の申し込みを受けるようになった時の
かぐや姫の心の内面がどう描かれているのかに注目です。
 
個人的には、この「かぐや姫の物語」は、
高畑監督が70年台に監督したテレビシリーズ
「アルプスの少女ハイジ」との共通点が多いように思われます。
当時としては画期的な現地へのロケハンなどを行い
徹底的なリサーチを行ったアニメ。

原作にはないエピソードなどを描いて、
ハイジの心情を丁寧に描いていった高畑作品です。
当時の作画を担当していたのが、監督デビュー前の
宮崎駿だったというのは有名な話です。

ハイジではスイスだった舞台を、日本に移して描かれた
少女の成長物語がこの「かぐや姫の物語」だと
言えるかもしれません。田舎で共に暮らした羊飼いの
ペーターにあたる役が、原作には登場しない
映画オリジナルのキャクター捨丸という少年として登場します。
声を担当するのは、熊本出身、我らが高良健吾くんです。
捨丸とかぐや姫の恋の行方も、この映画の見どころの
一つとなっていますので注目してください。
 
声といえば、この映画は、作画をする前に声を収録して、
その声に合わせて作画するという「プレスコ」
(プレスコアリングの略、事前収録の意味)で作成さています。
だからキャラクターの動きと声がピッタリとあっていて、
独特の生命感を生み出しています。
ハリウッドのアニメなどでは、この方式で作られる
アニメが多いのですが、スケジュールや
予算が厳しい日本のアニメでは珍しい方式です。

だからこそ、今は亡き地井武男さんが担当する
「竹取の翁」の演技は素晴らしいです。
日本アカデミー賞の助演男優賞は、今年は
地井さんに贈るべきなんじゃないかと思える名演です。
「翁」の「かぐや姫」に対する愛情や出世欲におぼれて
ちょっと調子に乗ってしまう小市民ぶりなど。
愛すべきおじいさんキャラとして素晴らしい完成度です。
 
映像も音も、大スクリーンの劇場で観るにふさわしい作品です。
今年の締めに観るならこの1本と言い切ってしまえる作品です。
スタジオジブリの実力を、改めて感じさせてくれる1本!
ぜひ劇場で体験してください!
 
今日ご紹介した映画「かぐや姫の物語」は、
■TOHOシネマズ光の森
■TOHOシネマズはません
■TOHOシネマズ宇城
■シネプレックス熊本
■イオンシネマ熊本
で、現在公開中です。
 
「かぐや姫の物語」オフィシャルサイト
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本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
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12月2日(月)の魔法のことば

今日はラジオネーム : ただしさんが出会った、
西村京太郎の魔法のことば。

「人間、どこかで“何とかなるサ”って開き直ることがないとね。」

熊大ラジオ公開授業「知的冒険の旅」 江川良裕先生

あらゆるジャンルの注目の人にインタビューする
「ヒューマン・ラボ」。
 
11月から3ヶ月間にわたって
スペシャル企画でお届けしています。
題して「FMK Morning Glory  ヒューマン・ラボ
熊大ラジオ公開授業・知的冒険の旅」
 
毎回、熊本大学の先生を講師に迎えて、
さまざまジャンルの研究テーマについて
お話をうかがいます。
 
第5回の講師は江川良裕先生です。

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Q①お名前と職業・所属を教えて下さい。
 
名前:江川良裕(えかわよしひろ)
所属:文学部コミュニケーション情報学科
(大学院社会文化科学研究科教授システム学専攻)
 
プロフィール
関西学院大学社会学部卒業後、地方テレビ局、
広告プロダクションを経て、
(株)西武百貨店で開発企画業務に従事。
複合商業施設や地域開発などの自社開発物件の企画と
コンサルティングを担当。
その後、商業および都市開発専門の
コンサルティング会社を経て、
メーカー系のシンクタンク、
コンサルティング会社である富士通総研に勤務。
インターネット・ビジネスやサービスを中心とした
事業や商品の企画、マーケティングなどを
中心とした経営コンサルタントとして活動。
2004年10月より現職。
 
Q②江川先生の専門である「経営学」とは、
どんな研究ですか、わかりやすく教えてください。
 
経営学、もう少し細かく言うと事業戦略や
ビジネス・モデル、マーケティングが専門です。
 
事業戦略はその名の通り、事業単位での競争力に
焦点を当てており、事業としてどのような
ポジションを採るか、ヒト・モノ・カネ・
情報・知識などの組織資源をどのように
有効活用するか、ということなどが議論の
中心になっています。
 
一方で、マーケティングとは、事業より
小さな世界、製品やサービスという単位で、
競合製品やサービスにおいて、より具体的な
差別化や優位性獲得を考えるものです。
 
ビジネス・モデルとは事業戦略と
マーケティングの中間的あるいは包括的な概念と
言っても良いと思います。
価値提供、業務、収益を結びつける「勝ちパターン」
「勝利のシナリオ」みたいなものです。
 
最近では、こういった知識やノウハウを
社会的課題や地域社会にどのように
適応していくかについて興味をもっており、
研究という枠を超え、教育や地場産業との
連携などの視点から色々と試行をおこなっています。
これまで、社会的課題は公共やボランティアに
よって解決されるのが一般的だったわけですが、
公共による解決は品質やレベルが最低限で
固定的なものになりがちですし、
ボランティアによる解決は継続性という面で
脆弱です。そこから出てきたのが、
ソーシャル・アントレプレナーシップや
ソーシャル・イノベーションという考え方で、
ビジネス的な知識や手法を使って課題を
柔軟かつ持続性のある形で解決しようと
いうものです。
 
そもそも民間ベースでの事業化が難しいと
考えられた分野ですから、より高度な戦略や
モデル、マーケティングが要求されるわけで、
そこに惹かれたのです。
これについては、アントレプレナー意識を
醸成する教育をテーマにして、授業科目で
色々な試行をおこなっています。
学部あるいは大学院向けの教養教育において、
実践家を招いて課題を設定し解決のための
企画を考えるような授業などです。
 
一方で、経営学的な視点を地場産業に
適用していくことについては、
産学連携で何かを生み出すという以上に、
学生の教育の場として企業の現場を
活用することを狙っています。
 
つまり、より実践的なインターンシップ。
あらかじめプログラム化された既存の
インターンシップではなく、
チャレンジしたいことを学生から企業に提案させ、
企業サイドに認められたら実施するという
「プロジェクト」的な位置づけで、
経営学的な知識やスピリッツを現場で学生に
身につけさせることが目的です。
私のゼミの学生を中心に参加させており、
現在は鶴屋百貨店の子どもフロアの
プロモーションに協力しているほか、
調整中の企業もあります。
 
Q③江川先生がこの研究に取り組むことになった
「きっかけ」のようなものがあれば教えてください。
 
何か特別な出来事があったわけではなく
「徐々に何となく」です。
大学時代は社会学部で人間工学のゼミに
所属しており、経営なんかには全く興味が
ありませんでした。
経営学的なアプローチに興味をもった
最初が西武百貨店時代で、バブル最盛期には
「生活総合百貨店」や「まちづくり」を掲げ、
商業施設に本物の教会を誘致する、
北欧から巨大なもみの木を、ハリウッドからは
リメイクの映画で使ったキングコングの
強大なロボットを運び込み、
コングの手のひらで結婚式をあげようとか、
およそ今では考えられないアクロバティックな
企画を形にしていた企業です。
そういうところから、マーケティングの
おもしろさや深さについて考えるようになりました。
また、施設開発などから事業開発などに
フィールドを移して経営コンサルタントして
活動する中から、「プロデュース」という
視点を学んだと思います。
 
コンサルタントという仕事には何か形になった
商品があるわけではありません。
「企画書」とか「報告書」と呼ばれる
紙の冊子にクライアントは数千万円を
支払うこともあるわけで、論理的でクリアなこと、
信頼されることが求められます。
また、世界的に有名なコンサルティング・
ファームなどとの競合コンペなどでは、
ブランド力に優る相手に、どのようにすれば
勝てるのかを考えることが必要でした。
 
後は「出会い」です。
教育という切り口を重視するようになったのは、
通商産業省と文部科学省の共管で設立された
コンピューター教育開発センターのプロジェクトに
誘って頂いたことですし、私の大学院での所属が
社会文化科学研究科教授システム学専攻に
なっているのも、なぜか着任してあまり期間も
経っていない時に、話をしたこともない
先生から声をかられたからです。
 
また、社会的課題解決という分野については、
ボランティア活動をしている他学部の学生が
研究室に突然訪ねてきて、
「この人の講演会を学校でおこないたいのですが、
協力してもらえませんか」としゃべり始めたのです。
そこからネットワークが広がっていきました。
 
Q④これまでの活動を通じて、
最も印象深いエピソードをお願いします。
 
最近で良かったなと感じるのは、鶴屋百貨店に対する
子ども向けプロモーション・イベントの
役員プレゼンテーションでしょうか。
 
企画検討作業を本格化させたのが今年の春先で、
プレゼンが7月。
その間、私がサポートしながら学生のチームに
企画を検討させ、クライアントである鶴屋百貨店の
担当者と調整に当たらせたのですが、
スタート当初は「大丈夫」だろうかという感じでした。
 
前提や与件を確認せず、事例などのデータも集めずに
ミーティングをおこない、フラッシュ・アイデア
だけで役割分担し相互の連携もなく進めていくので、
「どこかで見たような古くさいネタ」しか出てこない。
 
また、アイデアやストーリーに根拠がないので、
クライアントを説得できず、結局言われたことを
無条件に飲んでくる。そんなことに対して、
「誰のために企画があるのか」と問い直し、
時にはクライアントと私がぶつかるわけです。
 
ただ、それが学生には響かないらしい。
他の先生を通じてですが
「なぜ、江川先生があんなに
一生懸命になるのかが分からない」という
学生の声があったという話には、
ちょっとショックでした。
 
ただ、そんな手応えの少ないことでも
続けることは大事なもので、対面での
ミーティングだけではなく、SNSなども積極的に
使って指導や議論を続けることで、
学生も変化していきます。
 
ヒントになる事例などを含めてアドバイスや
作業指示をSNSに書き込み、
学生にはそれに応えさせる形で作業報告を求める、
というように企画検討を進め、時には、
「言われて動くのは学生のバイト、
言われても動けないのは学生以下」とか、
声を荒げることもありました。
 
そんな一進一退の作業でしたが、
プレゼン当日にはかなり成長した姿を
学生は見せくれました。企画内容が大きく
改善されたことはもちろん、
社長以下数十名の同意を得られたことは、
単純に嬉しかったです。
 
Q⑤今後の活動予定やPRしたいこと
などあれば教えてください。
 
鶴屋さんとのプロジェクトのように、
地域の企業などの現場に入って、
学生の力や私の知識や経験を含めて、
商品やプロモーションなどの開発を
おこなってくださる企業などがあれば、
是非声をかけて頂きたいと思います。
 
紹介した社会的課題解決の分野のほかには、
商業施設・都市開発、教育などのほか、
ネット・サービス系のマーケティングや
事業開発は私のもうひとつのテーマです。
 
学生にとっては学内ではできない体験が
得られる一方で、学生と連携するという意味で
企業にとっては広報的な点でもメリットが
あると思います。
 
以上、「FMK Morning Glory ヒューマン・ラボ
熊大ラジオ公開授業・知的冒険の旅」でした。
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