一風変わった珍しい曲の名盤を紹介しました。
イギリスにクリス・スペディングというギタリストがいます。
一般的には、それほど有名ではないかもしれませんが、
知らず知らずのうちにこの人のギターの音を耳にしている
音楽ファンはとても多いんです。1960年代から現在に至るまで、
スタジオミュージシャンとして、
おそらく数千曲のセッションに参加しているのです。
ロキシー・ミュージックには正式メンバーとして一時期在籍していましたし、
セックス・ピストルズのレコードで実際にギターを弾いたのは、
この人という話もあります。ロックを中心としながらも、
ジャズからロカビリーまで何でもこなせる天才職人ギタリストとして、
超売れっ子な訳ですが、そうなると当然のように
自分名義の活動をしたくなるのが人情ってものでしょう。
そんなソロ活動の中の1曲が、1976年にリリースした、
この「ギター・ジャンボリー」です。なんのことはない、
当時の人気ギタリストのものまねをメドレーでつなげたという、
安直な企画のノベルティ・ソングです。
本人としてもお遊びのつもりだったでしょうし、録音状態もあまり良くなく、
第一この人の技量をもってすれば、
ギターもアンプも本人と同じ物をそろえて、完璧にコピーすることが
できるであろうに、自分のギター1本で、適当にやった感が伺えます。
恐らく、こんなの朝飯前で作ったのでしょう。
ところが、これが売れたんです。
今なお、彼のソロ名義で、これを超えるヒットはありません。
本気で心血を注いで作ったものではないものが、
自分の代表作と言われてしまう不幸。
思うようにはうまくいかないのが人生、ということなのでしょうか。
でもロックファンが聴けば、間違いなく楽しめる1曲です。