今週はサザン・ソウル/ディープ・ソウルについて紹介しました。
サザン・ソウルというのは、ごく簡単に言ってしまうと、
アメリカ南部から生まれた、ゴスペルやブルースに直結した、
いわゆる「濃~い」ソウル音楽のことで、必ずしも南部出身ではない
場合もあることから、ディープ・ソウルとも呼ばれています。
有名なところでは、1960年代のオーティス・レディングなどがいます。
全身を使って声を振り絞って歌う中に、哀しみがじんわりと滲み出てくる、
そんなイメージです。
こういった音楽は1960年代から70年代前半までは、
とても人気があったのですが、時代の流れとともに、だんだんと衰退、
70年代後半には、一部の愛好家たちを除いて、
メインストリームからは姿を消してしまいます。
まぁ、お酒でもタバコでも、ライフ・スタイルから人間関係、
さらには人間そのものが、ライトでマイルドな方面に向かっていく時代には、
そんなヘヴィで濃い歌は、ずいぶんと野暮ったく聴こえたのでしょう。
さらにはソウルの主な購買層である黒人たちにとっては、
そんなディープな歌は、苦しく貧しかった奴隷時代を思い出すということで、
特に社会進出を果たした都会の裕福な黒人層からは
拒絶されることもあったようです。
そんな中、1983年にジェイ・ブラックフットという人の「タクシー」という曲が
思いがけずヒットしました。
60年代からソウル・チルドレンというグループで多くのヒットを放った
彼のソロ第1弾で、サウンドこそは80年代風に洗練されているものの、
歌声はまさしくディープそのものでした。
若年層や白人にも受け入れられたこの曲のヒットが、
「黒人ならではのディープな感覚というものは、
いつの時代でもコンテンポラリーたりうる」と証明してみせました。
そしてその感覚はヒップホップ以降にも確実に息づいています。