2/17「ザ・B.B.&Q.バンド」
ミュージシャンだけが良質の音楽を作るわけではありません。
何千、何万枚ものレコードを聴いた優れたリスナーが、
自分の理想を求めて素晴らしい音楽を生み出すこともあるのです。
今週はそんなお話をお届けしました。
イタリアはミラノで輸入レコード店をやっていたジャック・フレッド・ペトラスと
その常連客であるマウロ・マラヴァシは意気投合し、
自分たちでダンス・ミュージックを作ろうと決心します。
音楽マニアの2人はアイデアを出し合い、
音大でクラシックを学んでいるマラヴァシが最終的に曲を書き、
それをイタリアの地元のスタジオ・ミュージシャンに演奏させて録音。
当地のヨーロッパではあまりなじみのなかったであろう、
アメリカ黒人ファンク調の音楽は、
頼まれたほうも大変だったと思いますが、とにかくバック・トラックは完成。
しかしイタリアにはソウル・マナーで歌えるシンガーがいません。
そこで2人はニューヨークへ乗り込み、
本物のソウル・シンガーに歌を入れてもらいます。
もちろん、そんなものに有名歌手は参加するわけありませんから、
駆け出しの若手に狙いをつけます。
しかしさすがマニアの2人ですから、その眼力は凄い。
後に大物になるルーサー・ヴァンドロスやジェイムス・ロビンソン、
アリソン・ウィリアムス、メリサ・モーガンなどなどを見出したのです。
本物を見抜くセンスには脱帽ですね。
こうやって世に送り出したのが、チェンジ、ハイ・ファッション、
そしてザ・B.B.&Q.バンド。
基本的にはこの3つ、全て同じくこの方法で作られているので、
全部同じもので、全部架空のグループです。しかし内容は極上。
今聴けばスタジオ・ミュージシャンらしく上手いけれど、
線が細く破綻のない点に気付きますが、
“踊らせる”という機能に徹するなら、むしろ強烈な個性は
ないほうがベターですし、
当時の最先端ニューヨークサウンドのいいとこどりした音は
本当に気持ちいいです。
いろんなところからいいところを少しずつつまみ食いする、というのは
現在のDJの手法の先取りとも言えますね。
いずれにせよ、非ミュージシャンならではの発想に違いありません。
しかし。それにしても先入観なしで聴いて、
これをイタリアでクラシック畑の人が作ったと思う人がいるでしょうか?
凄いですよね。
お届けした曲は、ザ・B.B.&Q.バンドで「オン・ザ・ビート」でした。