あらゆるジャンルの“注目の人”にインタビューする
	
		「ヒューマン・ラボ」。
	
		NPO法人HITOプロジェクトの前原栄輔さんがゲストです。
	
		子どもたちを対象としたロボット・プログラミング教室について
	
		詳しく伺いました。
		
		 
		  
	 
	1984年生まれ。中学校卒業後、
	熊本県立小川工業高等学校情報電子科へ進学。
	まだ小中学校ではPCを使った授業がほとんど行われて
	いなかった時期に、高校で初めてPCアプリケーションの
	扱い方やコンピュータの基礎的な知識、
	教育用言語を用いたプログラミング実習等を通して
	情報技術関連を学ぶ。その後、工業系短大に進学するが中退。
	2011年よりHITOプロジェクトの事務局として活動している。
	幼少・少年のころにコンピューターゲームの普及が
	進んでいったこともあり、小さな画面を通した仮想空間で
	1つの世界や物語が作られるという不思議さと面白さを感じた。
	それが高じてコンピュータやプログラミングに
	興味を持ったことが工業系へ進学し、
	プログラミングを学び、後に子どもたちに
	教えていくきかっけとなった。
	 
	◆昨年に引き続いてのご出演となりますが、
	改めて「NPO法人HITOプロジェクト」の概要を教えて下さい。
	 
	平成19年3月16日に熊本県知事認証を受け、
	3月27日設立しました。設立当時は青少年の
	理科・科学離れが進み、工業系への進学が
	減少傾向にあったので、自己実現プログラムを通して、
	青少年に論理的に物事を考える力と問題解決能力を涵養し、
	将来さまざまな分野で活躍できる人材育成を行う目的で
	設立いたしました。
	現在は小中学生を対象に、ロボット教材を使った
	ロボット・プログラミング教室や競技会を実施しています。
	このような「モノづくり」体験を、高等教育機関に
	進学を決める時期よりもっと前の段階で体験できる場を提供し、
	工学分野への興味関心を引かせるとともに達成感を得て
	楽しく学べることを目的に実施しています。
	 
	 
	◆前原さんはロボット・プログラミング体験教室で
	子どもたちに指導されているということですが、
	概要を教えて下さい。
	 
	現在のロボット・プログラミング体験教室では、
	小学4年生~中学生を対象にしています。
	ロボットの組立てには立体的にモノを見る力が、
	プログラミングにはモーターを細かく調整するのに
	小数を使うことや、センサーを使うときに光の反射や
	状況によって判断して処理を変えることを
	理解する必要があるので、小学4年生以上になると
	比較的理解しやすくなります。
	短期の体験教室は1回の単発講座から2~4回程度の
	連続講座を行っており、1回あたりは
	2時間~4時間程でその教室の到達目標によって
	回数や時間を変えています。
	ロボット教材はLEGO社の「マインドストーム」を
	使用しており、ロボットを動かすための
	専用プログラミングソフトは第一世代から最新版まで
	その時に用意できる環境によって使い分けています。
	男女比はまだまだ8~9割が男子ですが、
	少数ながら女子も参加しています。
	女子の参加者も歓迎していますので、
	男子ならでは女子ならではの感覚でつくっていき、
	互いに刺激があるような教室にしていきたいと思っています。
	実施内容は、部品からサンプルロボットの
	組み立てから始め、次に簡単な命令を組み合わせながら
	プログラミングソフトの操作方法を覚えます。
	モーターを回す方向や強さ、量などのパラメーターを
	設定するというロボットを動かす一番基本的なことを
	行いながら、まずは動かすことを楽しみます。
	その命令を組み合わせて数手順連続でロボットを
	動かしたり、2日目以降にはタッチセンサーや
	光センサーを使って、外の状態をロボットに入力して
	判断するプログラムなどを行います。
	課題のコースを用意して、学んだことを活かして
	チャレンジします。
	全10回で行っている連続講座では、もっと1つ1つを
	じっくり学んでいき、くり返し処理と分岐処理という
	プログラミング構造や、よく使う部分をまとめる
	モジュール化についても学びます。
	もっと先に進んで大会出場を目指すレベルになると、
	変数を使ってデータを格納したり、
	そのデータで単純な計算を行うなどや、
	中学生では複数のセンサーを扱って少し複雑な
	状況判断をしたり真偽というロジックを扱う
	プログラミングを学び、競技コースにチャレンジします。
	 
	◆使用している教材について、詳しく教えて下さい。
	 
	名前からも分かる通り、子どもたちにもなじみ深い
	「LEGO」のロボット教材です。
	
	 
	 
	教材としてLEGO社の教育部門がマサチューセッツ工科大学と
	共同開発し、1998年に第一世代が発売されました。
	現在は第三世代が登場しています。
	パーツはLEGOを使用するので、組み合わせは無限大であり、
	タイヤやクローラーを付けた走行体から動物を模したもの、
	人型など様々なものを組み立てることができます。
	この教材の特徴はモーターやセンサーを搭載することで、
	プログラミングによりモーターを動作させて
	ロボットを動かすことができ、センサーから
	周囲の状況を入力することで、複雑な制御をさせることが
	できるようになっています。
	プログラミングはPCを使って行います。
	ビジュアルプログラミングという目で見て
	分かりやすいようアイコン(命令)をマウス操作で
	並べてプログラミングしていきます。
	思った通りに動かすにはその順番通りにプログラムを
	組む必要がありますが、専門知識等がなくても
	楽しみながらロボットを動かして学ぶことができます。
	 
	◆自分でプログラミングしてロボットが動くというのは、
	とても楽しいと思いますが、
	教室に通う子どもたちの反応はいかがですか?
	 
	子どもたちは段階によって違う反応を見せます。
	初めて体験した際は「自らが作ったものを自らで動かす」ことに
	対する喜びや驚きといった楽しさを感じ、
	少し学んでいくと今度は思った通りに動かないもどかしさや
	難しさ、簡単にはイメージ通りに作れないという
	奥深さなどを理解します。
	そしてその先には設定した課題をロボットや
	プログラミングという「ツール」を使ってどのように
	解決していくかを真剣に考えて試行錯誤し、
	一つの作品を作り上げる努力をし、
	できたときの達成感を味わうなど「ものづくり」への
	学びにつながっていきます。
	初めは自分で動かせたことの喜び、次に思い通りに
	いかないもどかしさ、更に進むと学びの姿勢と
	達成感という段階によって違う表情を見せてくれます。
	そして大会へ参加して成果物を見てもらい、
	本番で成功したり入賞したりすると、
	子どもたちの自信にもつながっていきます。
	 
	◆最近、都市圏ではプログラミング教室に
	通う子どもが増えているとの報道もありましたが、
	熊本ではいかがでしょうか?
	昨年までとの違いなど、実感はありますか?
	 
	急激な変化はまだ感じていませんが、
	これから変わってくるという感じがします。
	昨年から習いごととしてのものづくりやプログラミング教室が
	出てきていますが、私どもの教室も含め九州にも元々あったので、
	急なブームという感じはまだありません。
	ただ、学習塾や教材を扱う企業が教室展開に
	乗り出していることや、以前は中学生がメインだった
	参加希望者が年々低年齢化してきたので、
	これから変化していく下地ができてきているのでは
	ないかと思います。
	初めは子どもたちの興味や楽しそうだからということで
	参加される場合が多いので、ただ作る・遊ぶというだけでなく、
	プログラミング教育についての理解を得られるかにも
	関わってくると思います。
	 
	◆生徒さんたちが教室に通い始めたきっかけや
	動機はどんなものでしょうか?
	 
	初めは楽しいからとか、ロボットやプログラミングに
	興味があったり、保護者の方が子どもに
	工学系の体験もさせておきたいという理由も多いですが、
	大会に参加して成功体験を積んだことで自信につながったり、
	反対に失敗したり負けたことの悔しさが学ぶ動機に
	なっている場合もある一方で、まだ残念ながら
	プログラミング教育の学習面から参加を希望されることは
	多くありません。
	また、継続して参加される場合は、ほぼ子どもだけでなく
	保護者の方も参加することを希望されています。
	子どもだけで通えない距離に住んでいたり、
	費用がかかることなど保護者の理解とサポートが必要になるからです。
	保護者の方は子どもたちに「好きな分野を伸ばしてほしい」、
	「試行錯誤することやチームワークで取り組むことの
	大事さを知ってほしい」、
	「この時は集中して取り組んでいるので集中力を付けたい」、
	「進学の選択肢として工学分野も体験して
	自分に合うものを見つけてほしい」など様々なことを
	期待されています。
	 
	◆前原さんが思うロボット・プログラミング教室の
	面白さはどんなところでしょうか?
	また指導する上で大事にしていることはどんな点でしょうか?
	 
	面白さはやはり「自分でつくったものを自分で動かす」ことにあります。
	「つくる」だけでも「動かす」だけでもなく両方が
	掛け算になることで、アイデアが広がることも面白さです。
	また、ロボット・プログラミングは、
	プログラムがロボットを介して現実世界で動くので、
	目で見て分かりやすいため、プログラミングを
	理解しやすくなると言われています。
	実際に動かしたら様々な要因があってイメージと
	ズレが生じるので、その原因と対策を考えることで
	問題を解決する力を養います。
	実際にそこにあって目に見えて動くものだからこそ、
	解決したときの達成感も大きいのではないかと思います。
	それだけでなく、センサーなどを扱いながら
	身の回りのことと関連付けて考えることで、
	何気ない普段の生活から好奇心を刺激したり、
	実際に身近にどんなものがあるのかを知るきっかけにも
	なってほしいと思っています。
	指導に関しては、子どもたちがどれだけ気づきを
	得るかを大事にしています。
	子どもたちは大会にも出場しますが、勝つための指導と
	子どもたちの成長のための指導は必ずしも
	同じではないのも気を使うポイントです。
	子どもたちが自ら考え、自発的に取り組んでどんどん
	チャレンジし、新たな気付きを得ていけるように
	なることが目標です。そのための物事の取り組み方を
	学んでほしいと思っています。
	 
	◆8月23日(日)に「WROJapna2015熊本大会」という
	イベントが開催されるそうですが、概要を教えて下さい。
	 
	子どもたちがロボットの制御技術を競う大会
	「WROJapan2015熊本大会」を
	8月23日(日)に熊本大学工学部キャンパス共用棟
	黒髪1で開催します。13時15分開会予定です。
	このWROは「WorldRobotOlympiad」と
	いう名前の通り、世界約50カ国の子どもたちが参加する
	国際ロボットコンテストです。
	2004年にシンガポール国立サイエンスセンターの
	発案で始まりました。
	今度の熊本大会は2015年の熊本地区予選会で、
	小中学生部門の競技を行います。選抜されたチームは、
	9月に開催される日本国内決勝大会で
	各予選会34カ所から勝ち上がってきたチームと競い、
	国際大会への選抜を目指します。
	競技にはロボット教材「マインドストーム」を使用し、
	参加者が制作したロボット(縦横高さ250mm以内)に
	あらかじめ制作し組み込んだプログラムで制御し、
	障害物等が設置されたコースを走行して
	様々なミッションをクリアしながら得たポイントや
	時間で順位を決めます。
	熊本では2008年から県内の未来を支える小中学生に、
	理科離れ阻止とロボット制御や情報工学など
	「ものづくり」に対する学ぶ意欲を引き出すこと、
	創造力や論理的思考、問題解決能力の涵養に
	資することを目的として、熊本大学工学部、
	東海大学熊本キャンパスとの民学連携で開催してきました。
	なお、大会は来場・観覧自由です。
	どうぞご来場いただき、小中学生の競技をご覧ください。
	 
	◆最後にPRをお願いします。
	 
	前述のロボット大会「WRO」では、
	決勝大会で2013年には小学生チームが審査員特別賞、
	2014年には小学生チームが自チームの
	ロボットやプログラムを審査員にアピールする
	プレゼンにて最優秀賞を受賞するなど、少しずつ
	熊本の子どもたちが全国で活躍できるようになってきました。
	ただ、まだ残念ながら競技での入賞、国際大会への
	選抜チームが出ていないので、今後は国際舞台で
	チャレンジできる子どもたちの育成を目指して活動していきます。
	ロボット競技やプログラミングを見ても
	「ウチの子どもには難しい、できないだろう」と
	遠慮している方々もいらっしゃいますが、現在活躍
	している人も初めはみんなと同じゼロからのスタートです。
	「楽しそうだからやってみたい」という方も
	「頭を動かすことが好き」、
	「夢中になれるものを見つけたい」、
	「活躍できる場がほしい」という方もまずは
	どうぞご体験ください。
	楽しむことから初めていただければ嬉しいです。
	そして、「夢中になれそう」、
	「ロボット・プログラミングがあってる」など感じたら
	全国を、更には世界を目指してチャレンジすることができます。
	可能性を秘めた子どもたちが、未来で輝く
	クリエイティブな人材になるための第一歩になるかもしれません。
	体験教室や大会等の情報はHITOプロジェクトホームページや
	Facebookページで発信していきます。
	こちらをチェックいただければ幸いです。
	これからの熊本の未来を担っていく
	みなさまのご参加を心よりお待ちしております。
	 
	
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