5月8日(木)の名盤は…
今日紹介したのは「ネッド・ドヒニー」です。
1948年、ロサンゼルス・ビバリーヒルズで生まれ、
7才からギターを弾き始めた彼は、
クラブで自作曲を弾き語っていたところを見出され、
新興レーベル、アサイラムからデビューしたのが1972年。
当時流行のシンガー・ソングライターの流れを汲みながらも、
他とは一線を画すファンキーなリズムと、少年のような甘いヴォーカルが独特、
一部のマニアに高い評価を受けました。
その個性をさらに推し進め、確立させたのが、
4年後にCBSへ移籍して発表した2ndアルバム「ハード・キャンディ」です。
これは世界中でヒットし、AORを決定付けた名盤として、
彼の名を知らしめました。
ところが彼の音楽活動は、本国アメリカではここで終わってしまいます。
翌1977年に録音した3作目はレコード会社が発売を拒否。
2年後に日本だけで発売されましたが、この後、彼の名前は消えます。
1988年、およそ10年ぶりに復活するも、
日本の会社との契約だったため、アメリカでは未発表。
ここで4枚のアルバムをリリースしますが、
1993年を最後に現在まで新作は出ていません。
実はこの人、ロサンゼルスでも屈指の大富豪の息子なんです。
実家近くに「ドヒニー通り」という名前の道があるほど。
生活にはまったく困っていないのです。
その点を“金持ちの道楽”とか“甘ちゃん”と指摘することはたやすいでしょう。
けれども、確かに「私には音楽しかないんだ」と、
この道一筋の迫力が名曲を生み、
われわれを感動させる場合が多いわけですが、
音楽に生活がかかってないことの余裕から生まれる名盤もあると思うのです。
彼の最大の武器は、この「音楽なんていつだってやめられる」という
凄みではないでしょうか。
普通のミュージシャンには絶対に身にまとうことのできないこの凄みと共に、
久々に新作を聴かせて欲しいと願うファンはたくさんいるんじゃないでしょうか。