熊本市民劇場・事務局長 中村 宣長さん
あらゆるジャンルの”注目の人“にインタビューする「ヒューマン・ラボ」。
今日は熊本市民劇場の事務局長 中村 宣長にお話をうかがいました。
熊本市民劇場は、芝居を観るのが好きな人たちが集まる、会員制の演劇鑑賞団体です。
今日は中村さんに、市民劇場のことや、演劇の魅力などをうかがいました。
Q① 中村さんのプロフィールを簡単に教えて下さい。
高校卒業後、日本電子工学院に学ぶ。バイトで歌舞伎座、明治座などで大道具の裏方につく。
その後帰熊し、印刷所に勤務。その時に熊本市民劇場前事務局長に出会い1980年市民劇場に入会する。1991年入局。1992年前事務局長の死去にともない事務局長を受ける。
Q② 熊本市民劇場とはどんな団体ですか?概要を教えて下さい。
創立は1961年5月、俳優座「十二夜」を第1回例会として迎えます。1951年熊本演劇協会が結成されます。各演劇団体の横の連絡や親睦をはかることを中心とした活動をしていました。1961年自立劇団「土曜会」で創造活動をしていた前事務局長のもとへ、俳優座から熊本に演劇鑑賞団体を作って欲しいと要請が届きます。土曜会の仲間や労働者の中からも「良い演劇を観たいという」要求が高まっていたこともあって、既に発足していた北九州、長崎、鹿児島の鑑賞会などの応援もうけ3月に15団体20名の参加による準備会を発足させます。「労演を作ろう」「良い演劇を安く鑑賞しよう」と多くの職場の仲間に広がっていきます
作品の種類分けを尋ねられると難しいものがあります。歌舞伎、喜劇、悲劇、ミュージカル、逆にストレートプレイ等々長い歴史の中で育まれた名作や、卓越した演技力を持つ名優たちの優れた舞台を例会に迎えています。迎える劇団は市民劇場の産みの親でもある俳優座などの新劇団の作品です。
音楽座ミュージカル「シャボン玉とんだ宇宙までとんだ」が4月5日~7日まで県立劇場で公演をしましたがこの例会が358回目に当たります。
無名塾、民藝、俳優座、文学座、エイコーン、青年座、昴、青年劇場、前進座、シャボン玉座、木山事務所、幹の会、東京芸術座、NLT,テアトルエコー、東演、イッツフォーリーズ、加藤健一事務所、こまつ座、無くなりましたが地人会などです。
仲代達也、奈良岡朋子、樫山文枝、日色ともゑ、大滝秀次、平淑恵、江守徹、内野聖陽、長谷川博巳、春風ひとみ、篠田三郎、黒柳徹子、栗原小巻、西田敏行、高畑淳子、嵐圭史、小沢昭一、平幹二郎、熊倉一雄、加藤健一。 亡くなられた俳優さんでは、宇野重吉、滝沢修、杉村春子、北村和夫、など。
Q③ 熊本市民劇場はどんな人が入会できるのでしょうか?入会の条件はありますか?入会金、会費はいくらですか?1年に何回公演が予定されていますか?
どなたでも入会できます。小学生高学年から、90歳の方まで入会されています。入会の条件はあらたに3人以上でサークルを作って入会するか、現在あるサークルに入るか、いずれかです。お一人で1回限りの観劇は出来ません。3人以上でサークルを作り1年間は観続けましょうと入会を誘っています。入会金は2000円です。会費は大人2200円、大学生1500円、中高生1200円です。「自分たちで会費を持ち寄り自分たちで運営する」を基本に全て会員の会費で運営しています。年6回例会を迎えています。
Q④ 今年度の上演はどんなものが予定されていますか?
6月8日~10日に平幹二郎さん主演の「王女メディア」、8月8日・9日に奈良岡朋子さん主演の「カミサマの恋」、10月12日~14日若者に読まれ最近ベストセラーになった小林多喜二の「蟹工船」東京芸術座、12月6日~8日に水上勉原作「ブンナよ、木からおりてこい」、2013年2月前進座「三人吉三巴白浪」、4月には栗原小巻さん、樫山文枝さん主演の「メアリー・スチュアート」まで決まっています。
Q⑤ 中村さんご自身が演劇を好きになったきっかけを教えて下さい。
若い頃から映画が好きで観ていました。宝塚、大劇、シネロマン、センターシネマなどで見ていました。また、銀座の並木座などでも見ていました。バイトで先代の水谷八重子さん、大川橋蔵さんの舞台の裏方に尽きました。そのころはお金もなくチケットを買うことができず、観ることも出来ませんでした。
熊本に帰って映画は見ていました。初めて客席で観たのが民藝の「アンネの日記」 でした。(勿論小さい頃東雲劇場とか二本木の小屋で親に連れられ大衆演劇は観たことはあります。)その後、青年劇場「クイズばあさんの敵」、前進座「怒る富士」、民藝「夜明け前」、を観つづけたことで今まで見たことのないものを感じました。楽しい、可笑しい、豪華などだけでなく私たちの目線で描かれているというのか、そんなものを感じました。それ以後観つづけています。
Q⑥ 市民劇場以外ではどんな風に演劇と関わってこられましたか?
これまで何本くらい、あるいはどれくらいの割合で観劇されていますか?
演じる側の経験もお有りですか?
熊本の劇団、市民舞台などの公演は出来るだけ観に行きたいと思っています。市民劇場の事務局で講演の案内もしています。約350本くらいでしょうか。現在は年6本の例会と東京公演年2~3回(1回で3~5本)、先日は福岡であつた韓国演劇フェスチバル「トンマッコルへようこそ」を観てきました。熊本である市民劇場以外の公演も観られる時は見ています。
演技の経験はありません。
Q⑦ 個人的に特に印象に残っている舞台は何ですか?理由も教えて下さい。
印象に残っている作品は数々あります。これという作品を上げるのは難しいのですが、上げて下さいと言われれば、仲代達也さんの「セールスマンの死」、北村和夫さんの「花咲くチェリー」などの作品が好きです。家族を思いながらも自分自身の夢を捨てきれず男の悲哀みたいなものを描いてあるところが好きです。
Q⑧ その他市民劇場を含めて、演劇と、あるいは役者さんとの印象に残っているエピソードを教えて下さい。
事務局に入局仕立ての頃、熊本公演中に仲代達也さんの誕生会にお招きを受けました。
身近に接するのは初めてでしたので隣の席に座りながら舞い上がってしまいました。焼酎に梅干しを入れて飲まれているのが印象に残っています。多くの俳優さんとご一緒できることが嬉しくもあり気も遣い大変です。会議や劇団の創立記念パーティーなど色んな集まりで演出家の方、俳優の方と多く接することができ、得るものが多くあります。
Q⑨ 中村さんの思う演劇の面白さ、魅力はどんなところでしょうか?
演劇にも東宝、松竹を始め四季などいろいろあります。それぞれに良さはあると思います。見方もタクシーで博多座に乗り付け観劇しているという話も聞いたことがありますし、また、辛抱しながら1年に1回観る舞台を楽しみにしているという方もおられます。それぞれに見方はあっていいと思います。舞台は明るく楽しい芝居がいいとか、癒されたいという方もおられます。しかしそれだけではなく現実を切り結び、人間が人間らしく生きていくは、社会の不条理や、俗悪な文化状況と戦う以外にはないと考えます。そうした戦いの意識が舞台から触発された時本当の意味で心は癒され、励まされ、元気づけられると思います。
個人的には、たとえば昴の「クリスマス・キャロル」では守銭奴のスクルージが三人の精霊によって悔い改める事が描かれています。そんな作品を観ると、私も聖人君子ではありませんので思い当たることもたくさんあり明日からまじめに頑張ろうという気持ちになったり、NLTの「幸せの背比べ」では笑いの渦に引き込まれながら、愛、結婚、不和、老い、死が語られ幸せとはなにかを考えさせられます。舞台から投げかけられる様々な事を考えることが演劇の魅力です。
Q⑩ 熊本市民劇場の活動の魅力はどんなところでしょうか?
「新劇の持つ演劇の魅力」を観つづけることが一番の力になります。もう一つの魅力は、新劇を観つづけていくために多くの会員が運営にかかわられます。運営をしていく会議の中でそれぞれに発言をしていただくわけですが自分の思いで芝居の感想や自分自身の現状を話されます。横で聞いていますと芝居の見方は人それぞれにあり、あんな見方もあったのか、こんなところを観ておられるのかと気づかされることが沢山あります。又家庭では親の介護をしながら、地域のボランティアなど様々な活動をされながら、私が元気で生き生きしているのは市民劇場で芝居を観つづけているからと発言される方もおられます。その様な人達とふれあえることが市民劇場の魅力です。嬉しいことです。
熊本市民劇場の住所、連絡先
熊本市中央区練兵町15上田ビル402
096-322-0500
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