熊本地方気象台 堤之智 台長
Q① ご出演の方のお名前と職業・所属を教えて下さい。
名前: 堤 之智
社名: 熊本地方気象台
所属(役職): 台長
昭和33年7月18日生、福岡県福岡市出身
昭和61年4月 気象庁 観測部 採用
昭和62年4月 気象庁 気象研究所
(地球環境に関する観測・研究)
平成12年4月 気象庁 地球環境・海洋部
(気象に関する国際協力など)
平成20年4月 青森地方気象台長
平成22年4月 水戸地方気象台長
平成24年4月 現職
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あらゆるジャンルの“注目の人”にインタビューする
「ヒューマン・ラボ」。
2012年2月に続いて2回目の登場。
「音声式点字タイプ」の開発に携わった、国 立大学法人 熊本大学
工学部技術部の須恵耕二さんと、熊本大学工学部の学生さんを
ゲストにお迎えしました。
「音声式点字タイプ」を制作し、盲学校に寄贈する活動を
おこなっていらっしゃいますが、その後の活動について伺いました。
Q① お名前と職業・所属を教えて下さい。
名前:須恵耕二
所属:国立大学法人 熊本大学 工学部技術部
プロフィール: 熊本電波高専(現:熊本高専)を卒業後に
2年間のキリスト教奉仕活動を経験して、九州工業大学情報工学部の
文部技官に。平成19年に熊本大学工学部へ。
技術部計測制御グループのリーダとして、技術開発をはじめ
学生実験や電気安全の指導、衛生管理などにあたる。
家族は6人。趣味はギターと釣り。
主な資格は第一級陸上無線技術士、第二種電気工事士。
熊本市在住の47歳。
ホームページ、ブログなど:
http://www.tech.eng.kumamoto-u.ac.jp/tenji/
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名前:平川聡嗣
所属:熊本大学工学部情報電気電子工学科3年
プロフィール:福岡県出身。
大牟田市立三池高校卒の21歳。文芸部所属。
人と話す事が好きで、週末はTRPGなどをして過ごす。
理系ながら小説を書くことが趣味。
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名前:嶋元遥
所属:熊本大学工学部情報電気電子工学科2年
プロフィール:熊本信愛女学院卒の19歳。
数学が得意で、音響工学を学んで将来はレコーディング
エンジニアになるのが夢。文芸部所属で短編小説を書く。
趣味は音楽を聴くこと。実は、ギターも弾く。
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名前:馬田祐佳子
所属:熊本大学工学部情報電気電子工学科2年
プロフィール:熊本県立第一高校卒の19歳。
バドミントン・サークルに所属。
学生のうちにやりたいことは、ヨーロッパへ行くこと。
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名前:廣木優里
所属:熊本大学工学部情報電気電子工学科2年
プロフィール:宮崎県出身。
延岡学園高等学校尚学館中学校高等部卒。
コンピュータでの情報処理や音響工学に興味があり、
アメリカホームスティ経験を生かした短期留学もと
考えている19歳。熊本大学フィルハーモニー
オーケストラに所属し、フルートを担当。
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Q② 活動の主体となる「事務局」の基本情報を教えて下さい。
名称: 国立大学法人 熊本大学 工学部
住所: 熊本市黒髪2丁目39番1号(黒髪南キャンパス)
電話: 096(344)2111(代表)
URL: http://www.eng.kumamoto-u.ac.jp/
※「技術部」は、学生実験指導、研究装置開発・製作、
測定装置運用、安全衛生管理、放射線管理、
各種プロジェクトでの学生教育等、業務として
研究・支援の技術支援にあたる技術職員組織。
毎年8月に実施している中学生対象の
「夏休み自由研究技術相談会」は今年で11回目を数え、
全国の大学に先駆けて早くから地域貢献活動も展開している。
Q③ 「音声点字タイプ」について、
これまでの活動を説明してください。
きっかけは2年前。視覚障碍者向け学習支援器具を開発した
他大学の方の発表に触発されて「何が出来るか分からないが、
仕事で培った技術でお役に立ちたい」と熊本盲学校に
電話をかけました。後日、盲学校で先生方より盲教育に
ついての話を聞き、盲学校の授業が通常の学校と
ほとんど同じ内容で、ハンディを補う専用器具は
高価で種類が少なく、先生方の創意工夫で教えて
おられる事を初めて知りました。
その中で「こんな物があったらとても助かる」という
話があり、大学の同僚たちに持ちかけて一緒に
開発したのが「音声式点字タイプ教具」です。
これを大学の「ものづくり講習会」で学生に勉強がてら
作って貰い、クリスマスプレゼントにと熊本盲学校に
3台贈呈したところ、子供たちが本当に大喜びして
使ってくれて、学生も私たちも大変感動しました。
その後、盲学校の推薦で全国の先生方が集う研究会
でも教具を紹介する機会に預かり「うちでも使いたい」
という声を多数頂きました。
そこで、全国的なニーズに応える検討を始めました。
まず、手作りの教具の製作工程を一から見直して、
出来るだけ手間を減らしつつ品質を高めるよう改良を
施しました。
最初の贈呈式がTV等で報道された事もあって、
大学として今後どうすれば大学らしく地域貢献出来るのかを
検討した結果、「学生の学習成果での社会貢献」という
方法が適当だろうという事になりました。
そこで、寄贈を念頭にした学生向け「ものづくり講習」の
継続に取り組みました。
「全国の目が見えない子供たちに贈ろう!」という
キャッチコピーで工学部内に呼びかけた結果、
少しずつ参加する学生が増えて製作台数も増えてきました。
昨年11月には、熊本市内で開催された「全九州盲学校長会」で
教具の贈呈式を行って頂き、九州・沖縄の全ての
盲学校・視覚総合支援学校に1台ずつ教具を贈呈出来ました。
他県への分も含め昨年は14台贈呈しています。
また、日本学術振興会の科学研究費補助金(科研費)の
研究テーマにも採択され、こちらで製作した教具20台は
今、全国各地の盲学校へお貸ししています。
こうやって実際に授業で活用される事が増えた結果、
この教具の教育上の位置づけも明らかになってきました。
開発の段階では、点字タイプライターの使い方を音で
覚えるための教具という発想でしたが、全盲だけの児童は
すぐに覚えて点字タイプへ移行できるのです。
一方で、全盲と一緒に知的障碍も併せ持つ重複障碍児に
とってこそ、この教具が必要であるという報告が
寄せられてきました。
例えば、障碍ゆえに指を分けて使うこと(指の分化)が
難しい児童、指の力がとても弱くて点字タイプライターの
キーを叩けない児童、発達障害から点字入力規則と
リズムを守れない児童、自分の気持ちを言葉で表現する事が
難しい児童など、障碍の状態は一人ひとり違うのですが、
専門知識を持った先生方が上手に教具を活用されて、
それぞれの子供たちの教育に大きな改善を見たそうです。
音声応答の機能を活かして遊びの中で点字に親しんだり、
身の回りの行動を学ぶ自立活動の時間でも役立っていると
聞いています。各地の先生方と協力関係が築けた事で、
今後もお手伝いできるような体制には近づけたと思います。
最近では、盲学校以外の視覚障碍者支援団体からも
問い合わせが入るようになりました。
点訳ボランティアの養成にと言う声や、
中途失明された方の点字学習、視覚障碍者の養護老人
ホームでの活用等です。
年齢を問わず、必要なのだと認識を改めています。
中には、活動を支援したいという個人からのご寄附や、
チャリティー活動の収益で教具をプレゼントしたい、
という問い合わせも頂いています。
このようないろんな方々の「何かをしたい」という
気持ちが、今では取組みの後押しになっています。
Q④ 前回の出演(2012年2月13日)以降、
活動に関する変化などあればお願いします。
一番大きな変化は、学生有志が製作ボランティアチームを
作ったことです。最初の贈呈式に参加した学生が友達や
後輩たちに積極的に声をかけてくれたようです。
そして、教具を製作・寄贈する活動を自分たちで企画して、
大学の「きらめきユース・プロジェクト」という
学生支援事業に応募し、製作予算まで獲得してきました。
そのおかげで、昨年の全九州盲学校長会での贈呈も
実現しました。
学生が立派に社会貢献したということで学内でも
話題となり、学長や学部長はじめ、
いろいろな先生方から応援して頂けるようになりました。
実は、私たち技術職員は製作するのが仕事ではないので、
増えるニーズに応える方法を模索して困っていた頃に、
学生たちがチームを作ってくれました。
学生がどんどん主役として活躍し、将来社会的な
視点を備えた技術者として育ってくれるなら、
大学としてこんなに嬉しいことはありません。
彼らのチーム結成によって、今に至る道が開けたと
言っても過言ではありません。
Q⑤ この活動にとりくむきっかけは?
具体的にどんな活動をやっていますか?
馬田:最初の贈呈式に参加した1つ上の先輩から
「やってみないか」と誘われました。私たちは学科の
学生会メンバーなのですが、学生チームは最初、
この中の声掛けから生まれました。
今では、学生会以外の人も増えています。
廣木:私は学科の新入生合宿研修で、
須恵さんから「ものづくりと社会貢献」という内容で
教具贈呈の話を聞いて興味を持っていました。
そこに、先輩からのとても熱いメールが流れてきて、
参加を決意しました。
平川:私の場合は、須恵さんの行動力と熱意に
まさに恐れ入った、という感じで、自分も協力したいと
思い、2年目の今年は学生チームの代表に名乗り出ました。
昨年の活動では、最初に須恵さん他職員の方々から
開発・製作の技術指導を受けて、授業の空き時間や
放課後等に少しずつ教具の製作に取り組みました。
なかなか思うように時間を取れないのですが、
その中でどうにか贈呈まで漕ぎつける事が出来ました。
Q⑥ これまでの活動の中で、最も印象深い
エピソードをお願いします。
嶋元:やはり、昨年の全九州盲学校長会の贈呈式に
参加出来た事です。
校長先生方が皆さん起立して拍手で私たちを迎えて
下さったんです。そして、皆さんが笑顔で手作りの
教具を受け取って下さいました。
ご自身も全盲のある校長先生が「大学が盲学校の
ことを考えてくれるだけでも大変有難いのに、
こんな楽しい教具まで作って下さった。
使ってみて、子供たちにやらせたい事が次々と
浮かんできました。」と御礼を述べて下さり、
本当に役に立ってるんだと、すごく実感しました。
まだ製作を始めたばかりで十分には
作れていなかったのですが、
ちょっとでも製作に参加出来て本当に良かったと
思いました。一緒に手渡した友達も、先生方が喜んで
受け取って下さったことでやる気が出て、早く1台目を
完成させたいと思った、と言っていました。
Q⑦ 8月に高校生の参加する新しいプロジェクトが
あるそうですが、詳しく教えてください。
研究成果を社会に普及・還元する事業である
日本学術振興会「ひらめき☆ときめきサイエンス」に
今年は熊大から3件採択され、私たちは、高校生に
この教具を一人1台ずつ製作してもらうイベントを、
8月7日(水)~9日(金)の3日間、
熊本大学工学部で行います。
題して
「おしゃべり点字教具で本格電子工作!
~届けよう!目が見えない全国の子供たちへ~」
3日目には盲学校訪問も予定しており、
出来上がった教具は生徒さん直筆の送付状をつけて、
全国の盲学校へ発送する予定です。
技術の勉強と社会貢献を同時に体験出来ますので、
ぜひ参加して貰えたらと思います。
定員は20名で案内は各高校に送付します。
問い合わせ先は電話096-342-3696
技術部 須恵までお願いします。
Q⑧ 「音声式点字タイプ」の活動にとって、
今後の課題は何だと思われますか?
学生たちは、それぞれ勉強・実験やレポート課題を
抱える他、サークルやアルバイト等で忙しく、
製作時間をまとめて取る事が難しいのが現状です。
これが研究室ならば、学生への課題にも出来ますが、
有志なので学業が第一、ニーズが大きくなったとはいえ、
あまり負担はさせられません。ですから、
より多くの学生を集めて人海戦術的に製作することが、
ニーズに無理なく応え、また長く継続するための
鍵ではないか、と思っています。
Q⑨ 今後の活動予定やPRしたいことなどあれば
教えてください。
平川:私たちは、全国71校全ての盲学校に
教具を贈呈する事を当面の目標としています。
少しずつでも仲間を増やして、「熊大から全国へ」と
いう気持ちで継続していけるように頑張りたいです。
また、開発する力をつけて、いつか新しい教具を
私たちからも提案してみたいですね。
「学んで、作って、届けよう!」今、これを聴いている
熊大の人がいたら、ぜひ一緒にやりましょう!
須恵:この取組は、視覚障碍者とその先生たち、
学生、大学など、関わり支えて下さっている人
それぞれに喜びがあるものだと思います。
反響や期待に応えるには、もうちょっと時間が必要ですが、
全国各地の現場の先生方、そして学生たちと協力して
必要な教具を今後も形にしながら、全盲の方のお役に
立っていけたらと思います。
また、学校だけでなく、個人でも使いたい等のニーズに
今後は応える事も必要になっています。
方法を検討していますので、必要な方は
一度ご相談頂ければと思います。
今日は「音声式点字タイプ」の開発に携わった、
国立大学法人 熊本大学 工学部技術部の須恵耕二さんと、
熊本大学工学部の学生さんをゲストにお迎えしました。
須恵さん、学生のみなさんありがとうございました。
あらゆるジャンルの“注目の人”にインタビューする「ヒューマン・ラボ」。