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キネマのススメ

「シンデレラ」

「FMK MorningGlory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、
今週土曜日・4月25日から公開される「シンデレラ」です。
 
幼いころに、誰もが一度は絵本やアニメで見たことのある、シンデレラ。
ディスニーランドの中心にそびえるシンデレラ城や、
ディズニー映画の冒頭に必ず上映されるロゴなど、
ディズニーにとって最も大切な象徴となっているのが「シンデレラ」です。
1950年にアニメ版の「シンデレラ」が公開されていますが、
この作品は、ディズニーの創業者ウォルト・ディズニーが
最も大切にしていた作品と言われています。
ウォルト自身、決して裕福でなかった子供時代から
大きな夢を抱き続け、苦労の末に、映画スタジオやテーマパークを
作り上げ、アメリカンドリームを掴んだ人物として知られています。
「信じれば、夢は必ず叶う」というのがウォルトの信条ですが、
「シンデレラ」にはそのメッセージが一番込められているんです。
そんな大切な物語が、アニメ版から65年たった今年、
見事に実写映画化されました。
 
監督は、俳優、脚本家、プロデューサーとしても活躍する
イギリスを代表する演出家・ケネス・ブラナー。
シェイクスピア劇の舞台を数多く手掛けてきたブラナー監督は、
シンデレラを実写化するのに最適な演出家でした。
シンデレラは何度もアニメや映画、ドラマになっている
みんなが知っている物語。だからこそ、シェイクスピア劇のように、
どう解釈して、どう演出するが重要になってきます。
インタビューによりますと、この作品について監督はこう語っています。
「有名なおとぎ話をまったく新しい視点で語り直しています。これまでのシンデレラにありがちだった『受け身』なヒロインでなく、なにが自分にとって幸せなのかを、自分の力で決断していく少女のストーリーとして描いています。」
 
シンデレラを演じるのは、イギリス出身の新進女優で話題のドラマ
「ダウントン・アビー」にも出演しているリリー・ジェームズ。
また、シンデレラをいじめる まま母を、「ブルー・ジャスミン」で
アカデミー賞主演女優賞を獲得したケイト・ブランシェット、
魔法使いのフェアリー・ゴッド・マザーを「ファイトクラブ」、
「アリス・イン・ワンダーランド」などの
ヘレナ・ボナム=カーターといった、豪華キャストが演じています。
 
これまで、「塔の上のラプンツェル」「アナと雪の女王」
「マレフィセント」と、古典的なおとぎ話を新たな女性像で
生まれ変わらせてきたディズニー。
今回も、両親を亡くし、まま母とその連れ子の姉妹に
召使のようにいじめられていた
シンデレラが、お城の舞踏会で王子様と恋に落ち、結婚する、
というストーリーは変わりませんが、シンデレラのキャラクターは
自分の意思を強く持った、勇気と優しさを兼ね備えた女性に大きくシフト。
また、王子とのラブストーリーでも、舞踏会で突然会うのではなく、
事前に森の中で出会い、王子もシンデレラの見た目ではなく内面に惹かれるなど、
より自然にアレンジされています。このちょっとしたアレンジが、
後半のドラマの意味を大きく変えていますので、注意して観てくださいね。
 
実は、1980年代あたりから、アメリカでは、「シンデレラ」という物語が攻撃されてきた歴史があります、「『シンデレラ』は、女性の自立を妨げるおとぎ話。
白馬の王子様を待つストーリーが、男性主導の価値観を植え付け、無意識に女性の自立を妨げている。」というのです。この論を展開した「シンデレラ・コンプレックス」という本が、ベストセラーになったのをきっかけに、多くの評論家が、「シンデレラ」やディズニー作品の保守性を攻撃してきました。
ブラナー監督は、このあたりの事情も十分理解して、今回の物語を再構築しています。
オリジナルのストーリーの骨格を生かしながら、細部のセリフなどの演出を工夫することで、見事に「自立した女性・シンデレラ」が描かれます。このあたりは、さすがにシェイクスピア劇での経験が生かされているポイントと言えると思います。
 
もちろん、そんな難しい解釈なんかわからなくても、カボチャの馬車やガラスの靴、豪華絢爛な舞踏会といったファンタジーの要素も満載なのでビジュアルもたっぷり楽しめます。
舞踏会のシーンは、アニメ版でも豪華絢爛なイメージで描かれた有名なシーン。
お城の大広間を再現するためにイギリスのパインウッド・スタジオに巨大なセットが作られました。巨大な階段と大理石の床、1800メートルを越える布地から作られたカーテン、わざわざイタリアでカスタムメイドされたシャンデリアとゴージャスな舞台が作られました。
 
特に、アカデミー賞衣装デザイン賞を3度も受賞したサンディ・パウエルによる素晴らしい衣装はうっとりしてしまいますよ。
舞踏会でシンデレラが着るブルーのドレスにはかなりこだわったそうで、コンセプトから実際に衣装を作るまで2年以上かけて作られました。透き通るような美しい青を是非、劇場で確認してください。
 
大人から子供まで、誰もが楽しめる王道のディズニー映画!
「アナと雪の女王」続編として話題になっている「アナと雪の女王 エルサのサプライズ」という短編映画も同時上映されますので、アナ雪ファンも必見です!
 
ここで余談ですが、ディズニーによるこの実写化シリーズは、まだまだ続きます。
今後は、「美女と野獣」、「ダンボ」、「ジャングルブック」、「101匹わんちゃん大行進」、「ピノキオ」、「ムーラン」などがディズニーによって実写映画化の予定だそうですよ。楽しみですねぇ。どんな有名監督が実写映画を手掛けるのかも、気になるところですね。
 
今日ご紹介した「シンデレラ」は、
■シネプレックス熊本
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■TOHOシネマズ 宇城
■イオンシネマ熊本
 
で、今週土曜日・4月25日から公開されます。
 
「シンデレラ」オフィシャルサイト
 
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本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
詳しくはここ↓
 

「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」

「FMKMorningGlory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の
「バードマン  あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」です。
 
この作品は、今年の2月に発表された「第87回アカデミー賞」で、
作品賞、監督賞、撮影賞、脚本賞の主要4部門を受賞した話題作。
「バベル」や「21グラム」など、シリアスな人間ドラマで知られる
メキシコのアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の作品。
なかなか発音しにくい名前ですが、
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督。
最近は省略して、
アレハンドロ・G・イニャリトゥとして表記している場合もあります。
今回の作品は、重厚な人間ドラマを得意としてきた彼が、
初めて挑んだ、ダークファンタジー。
ある意味、辛口のコメディとしても見られるとても興味深い作品です。
 
主人公は、かつてスーパーヒーロー映画「バードマン」で、
一度は、世界的な人気を博しながらも、
今は落ち目の俳優リーガン・トムソン。
彼は、一発逆転の復活をかけて、
自ら演出と脚色、主演を務める
ブロードウェイの舞台に立とうとしていました。
ところが出演俳優がケガで降板。
代わりにブロードウェイの実力派俳優マイクを迎えますが、
次第にその才能に脅かされるようになります。
さらに娘サムとの関係もこじれ、
公私ともに精神的に追い込まれていくリーガン。
やがて、存在しない架空のキャラクターのはずの
「バードマン」が語りかけてきます。
「さぁ、もう一度バードマンをやって、華麗に復活しよう!」と・・・・。
悪夢のような誘惑を振り払いながら、
演技に集中しようとするのですが、様々なハプニングが起きて、
舞台の準備は思うように進みません。
そして、プレビュー公演の日がやってくるのですが・・・。
 
主人公のリーガンを演じるのは、
ティム・バートン監督の「バットマン」で主役を演じた
マイケル・キートン。
(この役は、まさに彼自身のパロディとも言える役です。)
 
リーガンにプレッシャーをかける俳優マイクには、
エドワード・ノートン。
娘サム役には、「アメイジング・スパイダーマン」のエマ・ストーン。
この3人は、今回のアカデミー賞でそれぞれ主演男優賞、
助演男優賞、助演女優賞にノミネートされています。
それも納得の素晴らしい演技を見せています。
 
そして、この映画最大の特徴が、
全編を1カットで撮影しているかのような映像です。
5分以上の長回しのシーンをCGやアングルを工夫して
何度もつないでいるので、まるで、映画自体が
ノーカットの1本の映像のように見えます。
1カットに見せるために、カメラの動きをかなり限定しているため、
1つのシーンでの俳優の位置や演出方法は細かく決められ、
失敗が許されない緊張感の中で撮影されたとか。
 
この野心的な撮影を担当したのが、
撮影監督のエマニュエル・ルベツキ。
昨年は「ゼロ・グラビティ」の撮影を担当して、
あの宇宙の映像を見事に描いた人物です。
「ゼロ・グラビティ」でも冒頭の10分以上の長いシーンが
話題になりましたが、今回の「バードマン」は
あのシーンの何倍も長いショットになっています。
ルベツキの技術に対して、
2年連続のオスカーが贈られたのも納得の見事な撮影です。
 
この映画では、その技術的側面が話題になることが多いのですが、
大事なのは、その長回しの技術が、
映画のテーマを伝えるのに必要だったということです。
カットを割らないので、舞台裏からステージまでの空間が
シームレスにつながっています。
それで、観客は、俳優の緊張感をすぐ近くで
覗き見ているような感覚に陥ります。
これは、まさに映画という表現でしかできないことなんですが、
同時に、扱っている題材である
「演劇」の一番面白いところでもあります。
映画ではさまざまなことが描かれます。
 
俳優は舞台に対してどんな準備をするのか?
舞台のキャスティングはどう行われるのか?
舞台裏ではどんなスタッフがどんな作業をしているのか?
俳優同士は、相手の演技に対して、
どんなことを考えているのか?舞台がヒットするかどうかは、
どんな人物によって左右されているのか?
 
さまざまなショービジネスの秘密が、細部にわたって
描かれています。
 
ディティールも素晴らしいのですが、
この映画で何といっても心を掴まれるのは、
落ちぶれた元ヒーローの主人公が再起をかけて奮闘する姿!
細かいことは抜きにして、果敢に頑張るおじさんに、
きっとグッとくるはずです!
長い不思議なタイトルの理由も、ラストまで観ると判明します。
 
今日ご紹介した
「バードマン  あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」は、
■TOHOシネマズはません
■TOHOシネマズ光の森
■シネプレックス熊本
で、現在公開中です。
 
「バードマン  あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
オフィシャルサイト
 
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本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
詳しくはここ↓
 

「ジヌよさらば ~かむろば村へ~」


「FMK Morning Glory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の
「ジヌよさらば ~かむろば村へ~」です。
 
タイトルの、「ジヌ」というのは、東北地方の方言で、「銭」・お金のこと。
主人公はこのタイトル通り、“お金にさらば”して、
東北地方の「かむろば村」に移住してくる青年・高見武晴、通称タケです。
タケは、東京で銀行員をしていましたが、お金にまつわる様々なしがらみを
体験したことからすっかりお金に恐怖心を抱き、
金(かね)アレルギーになってしまいました。
そこで、彼は東京での暮らしを捨てて、「かむろば村」に移住し、
1円もお金を使わない、自給自足の暮らしを決意します。
 
原作は、大ヒット作「ぼのぼの」で知られる、
いがらしみきおのマンガ「かむろば村へ」。
主演は松田龍平・・・。
こう聞くと、ほのぼのとしたロハスな田舎暮らしを描いた話と
思うかもしれませんが、これが全く予想を裏切ってくれます。
 
というのも、監督は、劇団「大人計画」主宰の松尾スズキ。
映画にも、看板俳優の阿部サダヲをはじめ、荒川良々、
皆川猿時、村杉蝉之助といったお馴染みのメンバーが
顔を揃えているんですから、一筋縄でいくわけがありません。
以前は、演劇界でこそ超人気の存在だった「大人計画」のメンバーですが、
そこまでメジャーな存在ではありませんでした。
ところが、劇団員・宮藤官九郎が脚本を担当した朝ドラ「あまちゃん」に
「大人計画」のメンバーが多数出演し大ヒットしたことで、
「大人計画」の俳優たちが、かなりメジャーな存在になってきました。
この作品では、「あまちゃん」で共演した「大人計画」以外の俳優も
何人か登場しているので、より一層楽しい感じがグレードアップしています。
 
映画では、田舎、というある意味閉鎖された場所だからこそ起こる
ディープな人間関係を、テンション高く描いていきます。
特に後半は、思わぬ展開が続出し、
予想もしないストーリーが繰り広げられます。
 
このストーリーを盛り上げるのが、
松たか子、西田敏行、二階堂ふみ、片桐はいりなどの豪華キャスト!
まさに、“映画版 大人計画”といった雰囲気の作品です。
 
特に主役をつとめる松田龍平が素晴らしいです。
松田龍平って俳優は不思議な存在感を持った俳優だと思います。
どんな役をやっても、なんか居心地が悪い感じがします。
なにかトラウマを抱えて現実とうまく折り合いがつけられない・・・・
そんなキャラがハマる俳優です。同じ松田優作の子供である
松田翔太とはちょっと雰囲気が違う感じですね。
 
思えはデビュー作の「御法度」でも、新撰組の中の
「異分子」みたいな役でした。監督の大島渚はすでに松田龍平の
不思議な存在感を見抜いていたのかもしれませんね。
 
今回の「ジヌよさらば」では、お金アレルギーで
世の中とうまく折り合いがつけられない青年の役。
まさに松田龍平の不思議な存在感なしには成立しない役どころです。
キャステングした監督の松尾スズキとは、10年前に「恋の門」という作品で
コンビを組んでします。さらに「あまちゃん」で俳優として共演もして、
息がぴったりのコンビと言えます。
 
原作者のいがらしみきおは、連載を始める時に
「限定されたところでのファンタジー」を依頼され、
“お金を1円も使わない生活”を思いついたそうです。
増税や身近な食品の値上げ、株価など、
お金に振り回されることの多い僕たちの日常。
俳優たちの弾けた演技に大笑いしながら、
“お金”についてちょっと考えさせてくれる、そんな1本です。
 
コメディなんだけど、どこか一本筋が通っていて、
現代社会の問題点を鋭く描写しているという点では、
このコーナーでも紹介した映画「福福荘の福ちゃん」と
共通したものがあるかもしれません。
おかしな人物がたくさん登場しているんですが、
どこか人生の真実が描かれている作品です。
こういう喜劇映画がもっともっと作られるといいなぁと思います。
 
余談ですが、劇場で販売されているパンフレットが
とても出来がいいので、映画をご覧になった方は、
ついでに購入することをおススメします。
出演者のインタビューがたくさん載っていたり、
いがらしみきおの描き下ろし漫画が載っていたり、
映画製作の裏話もたくさん掲載されています。
もう一度映画が観たくなる完成度の高いパンフレットです。
 
今日ご紹介した「ジヌよさらば ~かむろば村へ~」は、
■TOHOシネマズ はません
■Denkikan
で、現在公開中です。
 
「ジヌよさらば ~かむろば村へ~」オフィシャルサイト 
 
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本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
詳しくはここ↓
 

「ジュピター」

「FMK Morning Glory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の「ジュピター」です。
「世紀の映像革命」と呼ばれ、それ以降の映画作りを変えたと言われる
1999年の「マトリックス」。
後ろにのけぞりながら銃弾をよけるキアヌ・リーブス
真似をする人が続出しましたよねー!
映画というジャンルを超えて、一種の社会現象を起こした作品でした。
その「マトリックス」で映画を変革したのが、
監督・脚本・プロデュースを担当した
ウォシャウスキー兄弟でした。
コンピュータ―の中の「ヴァーチャル・リアリティ」という
あまり一般的でなかった「概念」を黒づくめの男たちの
クンフー・バトルで表現するという驚くべき手法で描いた作品でした。
「マトリックス」シリーズ3作の世界興行の合計は
1800億円を超える大ヒットになりました。
 
その後、兄のラリー・ウォシャウスキーは、
自らの「性同一性障害」をカミングアウトして、手術を受けます。
名前もラナ・ウォシャウスキーと変え、
完全に女性として生きてゆく決意をします。
このストーリーだけでも1本映画が作れそうな波乱万丈な人生です。
 
今日ご紹介する「ジュピター」は、「ウォシャウスキー兄弟」から、
「ウォシャウスキー姉弟」となった二人が、
「マトリックス」シリーズ以来11年ぶり生み出す
完全オリジナル・ストーリーのSFアクション大作です。
 
主人公は、地球で家政婦として日々を追われる生活を送るジュピター。
彼女はある日、何者かに襲われたことをきっかけに、
地球が宇宙最大の王朝の植民地であり、
自分がその王族の一員であることを知ります。
王朝では3人の兄妹が権力争いを繰り広げていて、
彼らはジュピターの存在を疎ましく思い、
亡きものにしよう狙っていたのです。
ジュピターは、自分を助けるために現れた、
ケインと名乗る戦士と共に、地球の危機を救うため戦うことを決意します・・・。
 
「マトリックス」で、世界に大きな衝撃を与えた「ウォシャウスキー姉弟」らしく、
今回も緻密に作りこんだビジュアルは、一見の価値あり!
特に、作品の大きな見せ場となっているのが、ケインのチェイスシーン。
無重力を操る特殊なシューズで空中を飛び回り、
敵とバトルを繰り広げるシーンです。
この映画のために開発されたカメラシステムを使って
シカゴの街が最も美しく見える、夜明け前数分間の映像を撮影。
そこにCGを組み合わせたアクションを重ねて、
スリリングで幻想的なシーンを作り出しています。
また、「2001年宇宙の旅」や「ブレードランナー」など、
SF名作映画へのオマージュをこめたシーンが差し込まれているのも
ファンにはうれしいところ。
 
「ジュピター」役のミラ・クニス、
彼女を守る戦士「ケイン」役にチャニング・テイタムがキャスティングされています。
この二人は、雑誌で「もっともセクシーな男性」
「もっともセクシーな女性」の1位にえらばれた今ハリウッドで
最も勢いのある俳優です。チャニング・テイタムに関しては、
「キネマのススメ」でも何度が取り上げていますが、
マッチョな体格とセクシーな顔が、いま全米の女性のハートを
とらえて離さないと言われるセクシー・スターです。
さらに、今年の「博士と彼女のセオリー」で
アカデミー賞主演男優賞を受賞したエディ・レッドメインが、
悪役バレムを演じています。常に小声でしゃべる独特の発声で、
不気味さを醸し出していますが、急に大声になるシーンが
ありちょっとびっくりします。そのあたりも、注目して観て下さい。
 
「ウォシャウスキー姉弟」は、今回の作品を
「スペース・オペラの復活」と呼んでいます。
「スペース・オペラ」というのは、SFのひとつのジャンルなんですが、
いわば「宇宙を舞台にした冒険活劇」。
一番わかりやすい例は「スターウォーズ」シリーズです。
CG中心の時代で映画がリアル志向になって、
このジャンルの映画はあまり作られなくなっていたんですが、
去年「ガーディアンズ・オブ・ユニバース」が大ヒットして、
少し事情が変化してきました。
今年は「スターウォーズ」の新作も年末公開され、
「スペース・オペラ」が再びブームになる予感がしています。
この「ジュピター」もかなり壮大なビジュアルの
「スペース・オペラ」なんですが、
「ウォシャウスキー姉弟」らしいストーリー展開が、
ひとひねりもふたひねりも効いていて、
新しい時代の「スペース・オペラ」になっています。お楽しみに!
 
今日ご紹介した「ジュピター」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■シネプレックス熊本
■イオンシネマ熊本
で、現在公開中です。
 
「ジュピター」オフィシャルサイト
 
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ここで、イベントのお知らせです。
熊本市中央区大江の「グランパレッタ熊本」では、
毎月1日に映画招待券が当たる
「映画大好き!おかわり君抽選会」を開催します。
「グランパレッタ熊本」テナント各店でのお買い物500円ごとに1回、
「シネプレックス熊本」の映画の半券1枚で2回、
「がらポン」にチャレンジできます!
「がらポン」では、「シネプレックス熊本」の
映画招待券を10人の方にプレゼント。
チャンスは毎月1日です。
あなたも「グランパレッタ熊本」に出かけてみませんか?
 
ここで、番組からプレゼントのお知らせです。
抽選でお2人の方に、
「シネプレックス熊本」の映画招待券をプレゼントします。
 
ご希望の方は、メール・FAXで番組までご応募ください。
メールは、glory@fmkumamoto.jp
FAXは、096-355-5200
 
締切りは、今日中必着となります。
沢山のご応募お待ちしています。

■グランパレッタ熊本 オフィシャルサイト
http://www.granpaleta.com/
 
 
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本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
詳しくはここ↓
 

「ナイトミュージアム エジプト王の秘密」

「FMKMorningGlory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の
「ナイトミュージアム エジプト王の秘密」です。
 
誰もが想像したことのある「もし博物館の展示物が、夜になると動き出したら・・・?」
そんな空想をスクリーンで見せてくれた人気シリーズが「ナイトミュージアム」です。
2006年に1作目、2009年に2作目が公開され、全世界で大ヒット。
主演のベン・スティーラーも、それまでは、ちょっと過激でクセのあるコメディアンという印象だったのが、このシリーズのヒットの影響でファン層が拡大。子供から年配まで楽しめるファミリー・ムービー・スターとして、一躍、有名になりました。
実は、この映画のヒットの影響で、実際に「夜の博物館」を見学するツアーを実施する博物館も多数出てきたということで、いろんな影響を世の中に与えているヒット・シリーズなんです。
 
その3作目にして最終章となるのが、今日ご紹介する
「ナイトミュージアム エジプト王の秘密」です。
 
アメリカ・ニューヨークの「アメリカ自然史博物館」で、
展示物たちに命を吹き込んできた、エジプト王の石板。
博物館の夜間警備スタッフのラリーは、この石板に異変が起きていることに気づきます。
どうも魔法の石版の力が弱くなってしまったようなのです。
展示物たちが2度と動けなくなるかもしれないと、心配したラリーは、
石板の謎を解くカギが、イギリスの大英博物館にあることを知り、
息子のニッキーや、展示物の仲間たちと共に大英博物館へ乗り込みます。
 
今回もおなじみのメンバーたちが、
アーサー王伝説の騎士・ランスロットと出会ったり、
エッシャーのだまし絵に迷い込んだり、恐竜トリケラトプスに襲われたりと、
さまざまな冒険を繰り広げます。
しかも、博物館だけでなくロンドンの街中へ飛び出すなど、スケール感もアップ!
日本でもおなじみのあの人気スターが、意外なところで登場するシーンも見逃せません。
これは、ネタバレすると、笑いが半減するので、あえて言いませんが・・・。
日本の車のCMにも出ている「あの有名俳優」です。彼が主演しているSF大作シリーズのパロディなんかもありますので、お楽しみに!
 
そしてもう1つ、今回の映画の裏テーマになっているのが、父と子の関係。
ティーンエイジャーとなって、ラリーから親離れしようとしている息子のニック、
魔法の石板を持つアクメンラーと、彼の父親である偉大なファラオ、
ラリーにとって父親のような存在である、テディことセオドア・ルーズベルト大統領、
彼らの関係がどのように変わり、新たな一歩を踏み出していくのか・・・。
 
実はこの作品、テディを演じ、去年8月に亡くなったロビン・ウィリアムズの
最後の出演作でもあります。ロビン演じるテディが最後に残す言葉は、まるでロビン・ウィアムズ自身の言葉のように観客には聞こえることでしょう。
 
この映画シリーズは、コメディ作品でありながらも、歴史を学ぶことの大切さ、博物館が存在する意義などをしっかりと描いています。
シリーズ1作目で、初めて主人公ラリーが、「自然史博物館」を訪ねたときに、先輩の職員から「博物館がどんな場所なのか君はわかっているか?」と問われるシーンがあります。今回、完結編のラストのシーンで、その質問に対する回答が見事に描かれます。
シリーズ映画ならではの見事な締めくくり方だなぁ・・・・と思いました。是非、このあたり見逃さないでくださいね。
 
こういうコメディ・シリーズものでは、登場人物があまり成長することはないと言われていますが、このシリーズは例外です。主人公ラリーは、1作目より2作目が成長していますし、3作目の今回、父親として、息子の成長を見届けるという、彼にとって、最大の成長が描かれます。ちなみに、ベン・スティーラーの実際の子供たちも、この「ナイトミュージアム」シリーズの大ファン。撮影が終了した後、あの「石版」をスタッフから送られたそうです。きっと子供たちに見せて映画の話をいろいろしてあげたんでしょうね。
 
シリーズ3作の監督をすべてつとめたショーン・レヴィは、「このシリーズで目指したのは、自分たちが子供のころみた『スピルバーグ映画』のような楽しさだった」とインタビューで語っています。特に今回は、冒頭のエジプトでの発掘のシーンが、まんま「インディ・ジョーンズ」のパロディにもなっていて、ファンはたまらないと思いますよ。
子供のころワクワクした「インディ・ジョーンズ」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「グレムリン」や「グーニーズ」のようなファミリーで一緒に楽しめるエンターテイメント大作。きっとこの映画を映画館で観た子供たちは、一生映画が好きになるじゃないでしょうか?さらに、歴史や博物館も好きになる可能性も高いです。日本語吹替え版もありますんので、親子で鑑賞、おススメです。
 
ワクワクする冒険とギャグを楽しみながら、
子供たちは大爆笑、
そんな子供時代を思い出して、大人は、ちょっとせつなくなる1本です。
見事なファミリー映画ですね。
 
 
今日ご紹介した「ナイトミュージアム エジプト王の秘密」は、
■TOHOシネマズ光の森
■TOHOシネマズはません
■TOHOシネマズ宇城
■シネプレックス熊本
■イオンシネマ熊本
で、現在公開中です。
 
「ナイトミュージアム エジプト王の秘密」オフィシャルサイト
 
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本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
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「イントゥ・ザ・ウッズ」

「FMK Morning Glory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の「イントゥ・ザ・ウッズ」です。
 
ブロードウェイ・ミュージカルとハリウッド映画界は密接な関係があります。
ブロードウェイ・ミュージカルが映画化されることも多いですが、
最近は、映画を原作としたミュージカルがブロードウェイで
公演されることもあります。
あの「スパイダーマン」でさえミュージカルになっているんです。
映画がヒットすれば、舞台もさらにヒットする訳で、
どの作品が映画化されるかに世界中の注目が集まります。
 
確かに、一時期、日本では、映画のミュージカルは当たらないと
言われたことがありました。舞台ではヒットしても、
映画になると興行が厳しいという作品もいくつかありました。
ところが、「シカゴ」や「レ・ミゼラブル」の映画版が
大ヒットしたあたりから、日本でも映画のミュージカル・ファンが
急増していきます。
 
そして決定打となったのが、昨年の「アナと雪の女王」の大ヒット。
興行収入250億円を超える大ヒットとなって「アナ雪」ブームが
起きたのは、記憶に新しいところ。
そして、今回、世界が注目するのが、この「イントゥ・ザ・ウッズ」です。
先週末日本でも公開され、現在大ヒット中。本年度の洋画では
NO.1スタートの大ヒットとなっています。
なんと、「レミゼラブル」、「シカゴ」、「オペラ座の怪人」などの
名作も抜いて、今世紀公開の実写ミュージカル映画の中で
NO.1のオープニング記録を打ち立ててしまいました。
すごいですねー!
 
この「イントゥ・ザ・ウッズ」は、1987年にブロードウェイで
初演された作品「ウエスト・サイド物語」の昔から活躍し、
「ブロードウェイの伝説」と呼ばれるスティーヴン・ソンドハイム
によるロングランミュージカルが原作となっています。
アメリカ演劇界の権威・トニー賞を受賞し、日本版でも
宮本亜門の演出でミュージカル公演が行われたことがあります。
今回、「シカゴ」でアカデミー賞を6部門独占した
ロブ・マーシャル監督が映画化しました。
 
この「イントゥ・ザ・ウッズ」の面白いポイントは、
有名な昔話の「その後」が描かれるところです。
おとぎ話のエンディングといえば、「めでたし、めでたし」で終わる、
ハッピーエンドが定番ですよね。
でも、その後にもお話が続いていたとしたら・・・? 
「イントゥ・ザ・ウッズ」とは、「森へ」という意味。
果たして、その森には何があるんでしょうか?
 
主人公は、魔女にかけられた呪いのせいで、
子供に恵まれないパン屋の夫婦。
彼らは、子供を授かりたければ「赤いずきん」「黄色い髪」「白い牛」
「黄金の靴」の4つのアイテムを森から持ち帰るよう魔女に予言されて
森へ向かいます。
時を同じくして、赤ずきん、ラプンツェル、「ジャックと豆の木」のジャック、
シンデレラというおとぎ話の主人公たちも、それぞれの夢を叶えるために
森へとやってきます。
パン屋の夫婦を通して出会った彼らはめでたく夢を叶えるのですが・・・。
 
この映画“大人のためのアフター・ハッピーエンド・ミュージカル”という
キャッチフレーズの通り、かなりビターな味付けのストーリー展開が見もの。
王子様と幸せな結婚をしたはずのシンデレラが、
王子の浮気を疑ったり、「ジャックと豆の木」のジャックが、
大変な事件に巻き込まれたり・・・・・。
お馴染みのキャラクターの意外な「その後」が描かれています。
 
また、魔女役のメリル・ストリープや、オオカミ役のジョニー・デップなど、
超豪華なキャストが聞かせてくれる素晴らしい歌声も、楽しみの1つ。
特に、映画がスタートしてから約16分間のシーンは、
ほぼ歌いっぱなしのミュージカルシーンになっています。
たくさんの登場人物を同時進行で紹介しながら、
みんなが異なる目的で「森へ行こう!」となるまでのお話を
テンポよく描いています。ミュージカル映画として
「つかみはOK!」といった感じの名シーンが続きますので、
決して映画館に遅れて入ってはいけませんよ。
時間厳守でお願いします。
 
この映画の製作は、ご存じ「ディズニー」です。
ミュージカル映画はお手の物の老舗の会社「ディズニー」が、
おとぎ話の主人公をちょっと違った切り口で描いているので、
意外に思う人もいるかもしれません。
でも、思い出してみてください。去年公開になった
「アナと雪の女王」も「マレフィセント」も、どっちかというと
「王子様と結ばれてめでたし、めでたし」と言ったタイプの
古い物語とはちょっと違っていました。どっちかというと
「王子様」なんかに依存しない自立した女性像を描いていて、
新しい時代のプリンセス・ストーリーだったように思います。
 
今回、この「イントゥ・ザ・ウッズ」では、王道のハッピーエンドの
「その後」をあえて描いてみせることで、「本当の幸せ」とは
何かを観客に問いかけているのかもしれません。
クライマックスでキャストたちが歌う素晴らしい楽曲に
そのあたりの答えがあると思いますので、
見逃さないで、聞きのがさないで くださいね。
 
キャストは、どの人も演技も歌も素晴らしいんですが、
やっぱり魔女を演じるメリル・ストリープが凄いですね。
アカデミー賞を19回ノミネート、ゴールデングローブ賞に
いたっては29回ノミネートされているという歴代最高の
ノミネート数を誇る名女優。歌もオペラ歌手並みの声量で
聞かせてくれます。
 
ハッピーなおとぎ話が好きな方は、
ちょっと戸惑ってしまうかもしれませんが、
幸せの形は1つではないことを知っている大人なあなたには、
共感できることも多いはずです。
 
今日ご紹介した「イントゥ・ザ・ウッズ」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■TOHOシネマズ 宇城
■シネプレックス熊本
■イオンシネマ熊本
で、現在公開中です。
 
今日は、映画オリジナルグッズのプレゼントがあります。
映画「イントゥ・ザ・ウッズ」オリジナルのメモ・パッドを
お二人の方にプレゼントします。

ITW_Memo Pad Set.jpg
 
(宛先)
E-Mail : glory@fmkumamoto.jp
FAX : 096-355-5200
 
(締め切り)
3月17日(本日)中
 
「イントゥ・ザ・ウッズ」オフィシャルサイト
http://www.disney.co.jp/movie/woods.html

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本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
詳しくはここ↓
 

「ビッグ・アイズ」

「FMKMorningGlory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の「ビッグ・アイズ」です。
 
この映画は、「チャーリーとチョコレート工場」や
「アリス・イン・ワンダーランド」など、
壮大なビジュアル・イメージを駆使したファンタジー大作映画で、
日本でも大人気の映画監督ティム・バートンの最新作です。
 
今回の作品のテーマは、「ゴースト」
いかにもティム・バートンらしい、と思うかもしれませんが、
ゴーストはゴーストでも、「ゴースト・ライター」のゴーストです。
 
日本でも昨年、音楽業界を舞台にして「佐村河内事件」が起き、
「ゴースト・ライター」という言葉が注目を浴びました。
この映画「ビッグ・アイズ」は、1960年代にアメリカで
実際に起こった事件をもとにしています。
ファンタジーで知られるティム・バートン監督が、実話を題材にしたのは、
アメリカ史上最低と呼ばれた映画監督を描いた「エド・ウッド」以来、
実に20年ぶりだとか。
脚本を担当したのは、「エド・ウッド」と同じ、
スコット・アレクサンダーとラリー・カラゼウスキーのコンビ。
実話ベースの物語なんですが、実にティム・バートン監督らしい作品に
仕上がっています。
 
さて、このタイトルになっている「ビッグ・アイズ」の意味なんですが、
アメリカで大人気となったポップアート作品、
「ビッグ・アイズ」シリーズのこと。
少女マンガのように大きな瞳を持つ、
悲しげな子どもたちを描いたこのシリーズは、
ハリウッド女優をはじめ多くの人に愛され、
作者のウォルター・キーンは
一躍美術界の寵児として脚光を浴びます。
 
ところが、実際にこの「ビッグ・アイズ」の絵を描いていたのは、
妻のマーガレット・キーンだったんです。
彼女が典型的なアーティスト気質で、口下手で、
自分の作品を売り込むのが苦手。
それをいいことに、作者と称するウォルターは、
社交的な性格と口のうまさを駆使して
ビッグ・アイズを売り込み、巨額の財を築いていきます。
 
しかし、どんなに世間の評判が高まっても本当のことを言えず
アトリエで孤独に絵を描き続けていたマーガレットは、
ついに自分が本当の作者であると公表することを決意します・・・。
 
マーガレット役を演じたのは、
「魔法にかけられて」などの演技派女優エイミー・アダムス。
アーティストとしての才能がありながら、
自分の売り込みは苦手な画家を好演。
この作品の演技で、今年のゴールデングローブ賞の
ミュージカル・コメディ部門主演女優賞を受賞しています。
夫のウォルター役には、「イングロリアス・バスターズ」で
アカデミー賞助演男優賞を受賞した
クリストフ・ヴァルツが扮しています。
このウォルター役が劇中かなり面白くて、絵を描く才能はないのに、
口八丁でのし上がっていく男を軽妙に演じています。
ストーリー的には「悪役」なのに、
どこか憎めない面白キャラになっているのは、彼の演技の賜物です。
 
実は、本物のマーガレットさんは現在87歳で、今も創作活動中。
映画にもゲスト出演しています。公園のベンチに座っている老婦人役です。
 
出来上がった作品を見た彼女は、“クリストフ・ヴァルツの姿・声・行動、そのすべてが
ウォルターそのもの“と感想を語っていたそうです。
 
実は、このウォルター・キーンという人物。それまでは、
オリジナルの作品だけが、売り買いの対象となっていた
アート界に「コピー」を販売するという手法を導入した人物。
いまでは、ゴッホやダビンチの作品でさえ、
ポスターやポストカードになり販売されていますが、
彼がこのアート・ビジネスの先駆者だったという意外な事実。
映画の中でも、そのあたりのアートの歴史が描かれていますので、
見逃さないでください。
 
思えば、この60年代のアメリカから起きた
「ポップアート」というムーブメントは、大量生産、
大量消費という現代社会をテーマにした芸術運動でした。
消費社会を考察した芸術作品が数多くつくられました。
この「ビッグ・アイズ」シリーズは、
とても個人的作品として誕生したものですが、
映画では、「ビッグ・アイズ」シリーズが、ウォルターのプロモーションによって、
社会的な作品になっていくというプロセスを丹念に描いています。
新聞やテレビ、ラジオを使って自分たちの作品を売り込んだ
夫・ウォルター・キーンの存在なくしては、
「ビッグ・アイズ」シリーズも世に知られることはなかった訳だし、
商業的成功もありませんでした。この皮肉な展開。
この映画を観ると、メディアとアートの関係についても考えさせられます。
 
私たちが、芸術作品に触れる時には、
どんな作品なのかという情報も含めて作品を鑑賞するという
時代になっていますよね
まったく何の予備知識なしに、
純粋に作品と出会うことが難しい時代とも言えます。
そんな現代人とアートの関係についても、
この映画は鋭い考察をしているじゃないでしょうか?
 
もちろん、そんな難しいことを考えなくても、
物語の面白さにグングンと引きこまれる
映画になっていますので、ご心配なく!
さすがのティム・バートン監督印の
エンターテイメント作品になっています。
ティム・バートン監督は、もともと「ビッグ・アイズ」シリーズの
コレクターで作品の評価をもう1度高めたいという思いから、
この映画を作ったとか。それだけに、同じクリエイターとしての
愛情があふれる1本になっています!
 
今日ご紹介した「ビッグ・アイズ」は、
■Denkikan
で、現在公開中です。
 
「ビッグ・アイズ」オフィシャルサイト
 
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本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
詳しくはここ↓
 

「ソロモンの偽証 前篇・事件」

「FMK Morning Glory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、今週土曜日・3月7日から公開される
「ソロモンの偽証 前篇・事件」です。
 
この映画は、「火車」、「模倣犯」、「名もなき毒」など、
数々の作品で知られるベストセラー作家・宮部みゆきの小説の映画化です。
原作は、15年の構想と9年もの執筆期間をかけ、
3冊にわたって刊行された、かなりボリュームのあるもの。
傑作の多い宮部みゆき作品の中でもベストワンに押す人も多い傑作サスペンス小説。
現在、文庫版も発売中ですが、6冊にわたるかなりの分量の内容です。
それだけに映画のほうも1本では収まりきれず、前篇・後篇の2本に分けて公開されます。
 
物語の舞台は、1990年のクリスマス。
中学校の男子生徒が校庭で転落死し、遺体となって発見されます。
警察は自殺と断定しますが、事件の目撃者と名乗る「謎の人物」から
「あの事件は殺人だ」と告発する手紙が届きます。
そこに書かれていた犯人は、有名な不良少年の名前。
自殺か、殺人事件か。マスコミの報道が過熱し、校内が混乱に陥る中、
主人公の藤野涼子は、自分たちの手で真実を確かめようと
中学生たちによる校内裁判を行うことを決意します。
 
中学校内での生徒を死をめぐる事件、となると、
2010年に公開され話題となった中島哲也監督の映画「告白」を連想するかもしれませんが、
それとは全然内容も雰囲気も違っています。
「告白」は“ショック”が大きなテーマでした。凝った映像で中学生の心の空虚さを浮かび上がらせ、観客の心をえぐるような映画だったように思います。
一方、この「ソロモンの偽証」は、もっともっと生徒たちの繊細な心情の変化にフォーカスを当てたものです。
宮部みゆきの小説に描かれる繊細な心理。中学生キャストの見事な演技は、中学生たちの揺れ動く心情を、観客にリアルに伝えてくれます。
彼らが懸命に真実を求めようとする姿に心を揺さぶられ、
それが明らかになる後篇への期待が一層高まるという演出です。
 
監督は、「八日目の蝉」で日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ数々の映画賞に輝いた成島出監督です。昨年は、吉永小百合主演の「ふしぎな岬の物語」も大ヒットさせ、いまノリにノッている監督さんです。
成島監督は、登場人物の心理を食べ物で表現するのが上手い監督です。「ふしぎな岬の物語」では小百合さんの煎れるコーヒーがとても美味しそうでした。
「ソロモンの偽証」でもいろんな食べ物が登場してきます。今回は、美味しそうな食べ物だけじゃなく、実に不味そうな食べ物も登場します。
出てくる食べ物が、そのシーンの登場人物の心理を象徴している場合も多いので、是非、このポイントを見逃さないで観てください。
 
今回、この作品の製作には、いまの日本の映画界ではかなり特殊な方法がとられています。
まず、映画を作る前に1万人規模のオーディションが実施されました。
面接や、ワークショップを経て、数か月の演技レッスンやカメラテストを行い、最終的に33人の中学生キャストが選ばれました。その期間、およそ一年間。ここまで大々的なオーディションで映画を作るのは最近の日本映画では異例中の異例のこと。
普通は、何人かすでに有名なキャストを決めてから、他の人をオーディションするという方法が一般的です。今回は、作品のイメージにぴったりあうキャストを選ぶために、オーディションのみで中学生キャストを決めています。
 
その結果は、大成功だったと思います。映画には、佐々木蔵之介、夏川結衣、永作博美、
小日向文世、黒木華、尾野真千子など芸達者な俳優が脇をかためていますが、中学生たちの演技はまったく彼らに引けをとりません。
特に、主役の女子中学生を演じる新人女優さんは、役名をそのまま芸名の「藤野涼子」としてこの映画でデビューしています。
これから彼女は日本を代表する女優さんになること間違いなしの見事な主演ぶりなんですが、オーディションの時は一番頼りない感じで、周囲が心配するほどだったとか。この存在感を見抜いた成島監督の眼力はかなり凄いと思います。
「凛」としたまなざしが実に素晴らしい藤野涼子さん、来年の今頃は、日本アカデミー賞主演女優賞の最年少受賞者になるかもしれませんよ。それぐらいの見事な演技です。
 
こういうリスクのある映画作りにチャレンジしたのは、昨年からこの番組が注目している映画会社「松竹」です。
このコーナーでも昨年、「白ゆき姫殺人事件」、「超高速!参勤交代」、「紙の月」などの松竹映画を紹介しました。
どの作品も、いまの日本映画ではなかなかチャレンジされない大人向きの映画です。
往年の日本映画を思わせる豊かな映画作りは、さすがに歴史のある映画会社という感じがします。長年、松竹映画というと、山田洋次監督がエースとして君臨していたんですが、いよいよ次世代の若い才能たちが台頭してきたという感じがします。
今後も松竹映画には注目ですねぇ・・・・・。
「あなたが映画好きなら、この春、この映画を絶対に見逃していけない!」と断言してしまいましょう!
 
今日ご紹介した「ソロモンの偽証 前篇・事件」は、
 
■シネプレックス熊本
■TOHOシネマズ はません
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ 宇城
■イオンシネマ熊本
で、今週土曜日・3月7日から公開されます。
(「後篇・裁判」は、4月11日・土曜日から公開)
 
「ソロモンの偽証 前篇・事件」オフィシャルサイト
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本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
詳しくはここ↓
 

「アメリカン・スナイパー」

「FMK Morning Glory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の「アメリカン・スナイパー」です。
 
この作品、昨日発表されたアカデミー賞でも大注目された作品です。
一応、主要部門の結果をご紹介しておきますと・・・・・
 
▽助演女優賞は「6才のボクが、大人になるまで。」のパトリシア・アークエット
▽助演男優賞は、「セッション」のJ・K・シモンズ
▽主演女優賞は、「アリスのままで」のジュリアン・ムーア
▽主演男優賞は、「博士と彼女のセオリー」エディ・レッドメイン
▽監督賞は、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
▽作品賞も同じく「バードマン」でした。
 
今回のアカデミー賞、下馬評では、「6才のボクが、大人になるまで。」と今日ご紹介する「アメリカン・スナイパー」の一騎打ちと言われていたんですが、フタを開けてみると、「バードマン」が4部門、技術的な賞4部門を「グランド・ブダペスト・ホテル」が受賞という結果になりました。
「バードマン」の作品賞受賞にも驚いたんですが、逆に受賞確実と言われていた「バードマン」の主演マイケル・キートンが主演男優賞の受賞を逃すなど、数々のサプライズがあった授賞式でした。
 
今日、ご紹介する「アメリカン・スナイパー」は作品賞など6部門にノミネート。
受賞は「音響編集賞」のみだったのですが、
ナショナル・ボード・オブ・レビューなど数々の映画賞で高い評価を得ているほか、
全米での興行収入が3億ドルを超える大ヒットとなっていまして、これまでも大ヒットを連発しているクリント・イーストウッド監督作品でも最大のヒットとなっています。
 
舞台となるのは、2003年に始まったイラク戦争。
この戦争で160人もの敵兵を狙撃し、米軍史上最強のスナイパーと言われた
アメリカ海軍特殊部隊ネイビー・シールズの狙撃手、クリス・カイルの自伝を
名匠クリント・イーストウッド監督が映画化したものです。
 
クリス・カイルを演じたのは、「世界にひとつのプレイブック」「アメリカン・ハッスル」で
2度のオスカーにノミネートされた、ブラッドリー・クーパー。
今回の「アメリカン・スナイパー」でも体重を増やすなど徹底して役柄を作りこみ、
相当なマッチョな体型に肉体改造し、ハードな狙撃手の設定にリアリティを与えています。
役作りの甲斐あって、3度目のオスカーにノミネートされています。
(しかも3年連続となるからすごい!)
また彼はこの原作にほれ込み、映画化権の獲得に奔走。
プロデューサーとしても名を連ねています。
 
アメリカの伝説的なスナイパーが主人公で、しかも本国アメリカで大ヒットしている
というと、主人公がヒーローとして大活躍する話のように思うかもしれませんが、
実は中身は全く違います。
クリスは、2003年から09年までの間に、4度イラクに行っているんですが、
戦場という極限の状況で過ごすうちに、精神がコントロールできなくなっていきます。
極限状況を体験した人間が陥ると言われるストレス症状・・・・・「ポスト・トラウマティック・ストレス・ディスオーダー」(心的外傷後ストレス障害)。いわゆる「PTSD」です。
この映画は、そんな、心を病んでいく兵士の姿を、ドキュメンタリーのようなタッチで淡々と、しかしリアルに描いていきます。
 
そもそも、イーストウッド監督は、「PTSD」の話を何度も映画化しています。「父親たちの星条旗」は第2次大戦の兵士の「PTSD」の話でした。「グラントリノ」の主人公も朝鮮戦争でのつらい思い出を抱えた人物でした。戦争映画ではありませんが、アカデミー賞を受賞した「許されざる者」も、人殺しをした苦悩を抱えたガンマンの主人公でした。これらの作品のラインナップを見ていると、今回の作品が、決して戦争賛美の映画でないことは、あきらかです。
特に今回の「アメリカン・スナイパー」は、戦争の壮絶な描写と、帰国してからの家族と過ごす時間の落差が見事に描かれているので、「PTSD」がどんなものなのか、兵士たちは、何を体験し、心にどんな傷を負って帰国したのかが、観客にリアルに感じられるように作られています。
 
イーストウッド監督らしい研ぎ澄ました演出が随所に見られるんですが、特に音の演出が素晴らしいので、是非、映画館で観てもらいたい作品です。1キロ以上の遠距離から狙撃されるとどんな音がするのか?空気を切り裂くライフルの音の怖さは、映画館でなければ体験できない立体感です。そのあたりがアカデミー賞でも評価されての「音響編集賞」の受賞だと思います。
 
またこの映画、エンドロールに音が入れられていない、無音であることも
話題になっています。
アメリカでは、愛国的だとか、そうではないとか、この映画を巡って
様々な論争が起こっているそうですが、イーストウッド監督本人は、
一貫してイラク戦争には反対とのこと。
みなさんは、映画からどんなメッセージを受け取るでしょうか。
ぜひご覧になってみてください。
 
今日ご紹介した「アメリカン・スナイパー」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■TOHOシネマズ 宇城
■シネプレックス熊本
■イオンシネマ熊本
で、現在公開中です。
 
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「6才のボクが、大人になるまで。」

「FMK Morning Glory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の
「6才のボクが、大人になるまで。」です。
 
この映画は、タイトルの通り、1人の少年の12年にわたる成長を写した物語です。
アカデミー賞の前哨戦として有名なゴールデン・グローブ賞では、作品賞、監督賞、助演女優賞をすでに獲得しています。
いよいよ来週(2月22日)発表になるアカデミー賞では、作品賞、監督賞を含む主要6部門にノミネートされ、作品賞の大本命と言われています。
 
映画の製作プロセスについて、かなり話題になって各方面で取り上げられたので、
ご存知の方も多いんじゃないでしょうか?
 
ある人物の人生を描いた話ならそんなに珍しいことでもない
と思うかもしれませんが、この映画のすごいところは、
少年の6才から18才までの12年間を1人の俳優が演じていること。
つまり撮影に12年かけている映画なんです。
しかも“演じている”と書いている通り、ドキュメンタリーではなく演技、
ドラマとして撮影されたものです。
主人公の少年だけではなく、その家族、父、母、姉を演じた俳優もそれぞれ1人。
家族4人全員が、12年間1つの映画を撮影し続けたという、今までにない画期的な手法の映画なんです!
 
そんな映画を作り上げたのは、「スクール・オブ・ロック」などで知られる リチャード・リンクレイター監督。
彼の代表作といえば、あるカップルの18年間の年月を3部作で描いた
「ビフォア」シリーズですが、今回の作品は、このシリーズのアップデート版。
「ビフォア」シリーズでは、3作に分けられていた時間経過を、1本の作品の中で
1人の少年と家族の変化として描いた野心的試みです。
 
主人公は、テキサス州に住む6才の少年メイソン。キャリアアップのために大学で学ぶと決めた母に従ってヒューストンに転居した彼は、そこで多感な思春期を過ごすことになります。
離婚して別のところに住む父との再会。母の再婚。周囲の変化に耐えながら、メイソンは子供から少年へ、そして青年へと成長してゆきます。
 
主人公・メイソンを演じたのは、オーディションで監督に見出された
エラー・コルトレーン。無垢な少年時代から、悩み多き思春期まで、その成長とともに
見事に役を演じています。
主人公の母には、「トゥルー・ロマンス」のパトリシア・アークエット、
父には、「ビフォア」シリーズでも監督と組んだ、イーサン・ホーク。
姉役には、監督の娘のローレライ・リンクレーターが扮しています。
 
撮影期間は、2002年の夏~2013年10月までで、毎年夏の数日間に行われたとか。
脚本は完成していなくて、監督が1~2週間前から出演者と会って、
その年の展開を決めていったといいます。
監督の中ではある程度骨組みが決まっていたんでしょうが、
キャストとしては、もしかしたら公開されないかもしれない、
という不安もあったでしょうし、主人公の少年もグレたりすることなく、
誰かが辞めることもなく、12年間撮影できたとはまさに奇跡の映画です!
 
注目してみてほしいのは、随所にさり気なく描かれる時代の変化。
例えば、メイソンが遊んでいるゲームの機種が、最初は「ゲーム・ボーイ」だったのが、
「X-BOX」にかわり、やがて「Wii」にかわりと時代の変化を取り入れています。
また、「ハリー・ポッター」の新刊発売の話や「スター・ウォーズ」新作の話。大統領選挙の話など、とてもさりげなく年代がわかるように描写されています。
 
この映画のキャッチコピーは「すべての瞬間に『大切』が宿っている。」です。
人生とは、さりげない瞬間の積み重ねで、すべての瞬間が輝いているんだとこの映画は語っている気がします。
物語としては、特別ドラマティックな出来事は起きないけれど、
時間の経過が作り出す大きなドラマを目の当たりにできる、貴重な1本です。
 
 
今日ご紹介した「6才のボクが、大人になるまで。」は、
■シネプレックス熊本
で、現在公開中。
 
2月21日(土)からは
■TOHOシネマズ 光の森
でも公開されます。
 
「6才のボクが、大人になるまで。」オフィシャルサイト
 
本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
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