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キネマのススメ

「セッション」

「FMK MorningGlory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、今度の土曜日・7月4日から公開される
「セッション」です。
 
この映画は、2014年の「第30回サンダンス映画祭」グランプリと
観客賞のダブル受賞をきっかけに、世界各地の映画祭で注目を集め、
今年度のアカデミー賞では
助演男優賞、編集賞、録音賞の部門を見事に受賞。
世界的に大評判となった作品です。
東京地区では、今年4月に公開になり、大ヒットを記録しました。
また、この映画の解釈を巡って、ネット上で「大論争」が起き、
いろんな意味で話題になった作品です。
そんな映画がいよいよ熊本でも公開です。
 
主人公は、世界的なジャズドラマーをめざし、
名門音楽大学に入学した青年・ニーマン。
そこで待ち受ける伝説の教師フレッチャーとのぶつかり合いを
軸に描かれる音楽ドラマです。
・・・と聞くと、音楽と恋愛が絡んだ、良くある青春ドラマかな~
なんて思うかもしれません。
 
しかし、この映画は違います!
伝説の教師フレッチャーは、軍隊顔負けの鬼教師。
完璧を求める彼は、学生たちに、容赦ない罵声を浴びせ、
時には手をあげるなど、ニーマンを心身ともに、
徹底的に追い込んでゆきます。一方のニーマンも、
音楽のために、すべてを捨てて打ち込む覚悟を決め、
付き合っていた恋人を捨て、家族からも孤立。
クライマックスの9分19秒の演奏は、
「映画史を塗り替えた」とまで言われたライブ・シーン。
音楽をはさんで対峙する2人の姿は、
まるで緊迫感あふれるサスペンス映画のようです。
 
ニーマンを演じたのは、注目の若手、マイルズ・テラー。
まるでプロ・ミュージシャンのような素晴らしい
演奏テクニックを見せる彼。ハリウッドでも注目があつまり、
この秋公開のマーベルの超大作「ファンタスティック・フォー」の
主演が決定しています。
表面的には繊細な感じの表情の奥に潜む野望を見事に演じきっています。
そして、鬼教師フレッチャーは、サム・ライミ版
「スパイダーマン」シリーズでひょうきんな新聞社の編集長を
演じていたのベテラン・J・K・シモンズが演じています。
特に、今年のアカデミー賞で「助演男優賞」を受賞した、
J・K・シモンズの鬼気迫る演技は必見ですよ。
 
この、今までにない音楽映画を作り上げたのは、
弱冠29歳のデイミアン・チャゼル監督。
実は彼は、高校時代にジャズドラムに没頭。
名門バンドでプレイするほどの才能を開花させますが、
鬼コーチのスパルタがトラウマになり、音楽の道を断念した
という映画さながらの経歴の持ち主なんです。
映画の道に進んだ後も彼はこのトラウマに悩まされ、
それを克服するために自らの経験を映画化することを決意。
撮影期間19日間、製作費わずか3億円で作り上げたそうなんです!
(3億円というのは、アメリカの映画界では、かなり低予算の作品です。)
 
少ない予算で密度の高い映画を作るために、撮影は一日18時間、
のべ19日間という短期間で行われました。
これは、相当にきついスケジュールですよ。
(しかも、その撮影期間中に交通事故に遭いながら、
執念で現場復帰したんだとか・・・。
まるで、この舞台裏そのものが映画みたいですが、
この交通事故というエピソードは、実は、
この映画のストーリーそのものと微妙にシンクロしています。)
 
こんなインデペンデントな作品が、世界中の映画祭で認められ、
アカデミー賞で3部門を受賞したわけですから、
画面から伝わる監督の思いに魂を揺さぶられた人が
多かったということでしょう。
 
音楽映画としても素晴らしいんですが、
「師匠」と「弟子」の関係を描いた一種の
「スポーツ根性もの=スポ根もの」としても見ることができます。
「弟子」の才能を認めているからこそ、厳しく指導し、
ある時は「乗り越えるべき敵」として存在する・・
そう「巨人の星」の星飛雄馬と星一徹の関係を思い浮かべるのは、
ちょっと例えが古いですかね。
「北斗の拳」のケンシロウとラオウみたいなものですよ。
だから、難しい映画じゃないです。
一種のアクション映画とも言えますね。
 
この映画、東京地区では、4月に公開になり、
劇場にお客は入りきれない程の大ヒットを記録。
同時に、ジャズ・ミュージシャン菊池成孔と
映画評論家・町山智浩の間で、この映画の解釈を巡って、
「大論争」が起き、ネットでもかなり話題になった作品です。
興味を持った方もいらっしゃると思いますが、
この映画の何が彼らを熱くさせたのか・・・。
ぜひ自分の目で確かめてみてください。
 
今日ご紹介した「セッション」は、
■Denkikan
で、今度の土曜日・7月4日から公開されます。
 
「セッション」オフィシャルサイト
 
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本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
詳しくはここ↓
 

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」

「FMK Morning Glory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」です。
 
まだ無名だった若きメル・ギブソンを大スターにし、
世界中のクリエイターたちに多大な影響を与えた
伝説のアクション映画「マッドマックス」シリーズ。
 
1作目の「マッドマックス」が公開されたのは、1979年。
それまで世界的にはあまり知られていなかった
オーストラリア映画が世界中で大ヒットを記録。
低予算映画にもかかわらず、1億ドル以上の収益をあげました。
これは、「制作費と興行収入の差がもっとも大きい映画」として
長く記録を持っていて、1999年に
「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」に抜かれるまで、
長らくギネスブックにも掲載されるほどの記録でした。
 
1作目のヒットを受け、「マッドマックス2」
「マッドマックス/サンダードーム」という続編も作られ、
アクション映画の金字塔として、伝説的に語り継がれてきました。
特に「マッドマックス2」で提示されたコンセプトは、
その後の漫画や映画に大きな影響を与えています。
いまでは、当たり前とも言える「荒廃した未来」という世界観。
野獣のように暴力的な危ない男たちが、荒廃した未来社会の
主導権を争って戦うという物語が、その後、雨後の筍のように
たくさん作られることになるのですが、
すべての原点はこの「マッドマックス」シリーズなのです。
 
今日ご紹介する映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」は、
30年ぶりとなるシリーズ最新作。
(つまり、前作「マッドマックス/サンダードーム」公開の年
1985年にFMKが開局したことになります。)
監督・脚本は、「マッドマックス」シリーズを作り上げた
ジョージ・ミラー監督。
もともと医学生で「ER(救急救命病院)」で研修医を
していたことがあるそうです。
そこで数多くの交通事故に接したことが、
「マッドマックス」シリーズに大きな影響を与えているようです。
 
主人公マックスは、過去3作を演じたメル・ギブソンに変わって、
注目の俳優・トム・ハーディが演じています。
「ダークナイト・ライジング」や「裏切りのサーカス」などで
注目されていた俳優ですが、若い頃のメル・ギブソンや
スティーブ・マックイーンを思わせるワイルドな佇まいが、
新しい「マックス」にぴったりだと評判です。
 
舞台となるのは、核戦争の後、水も石油も尽きる寸前となった地球。
愛する妻と子を亡くし、砂漠をさまよっていた元警官のマックスは、
一帯の資源を独占し、暴力で支配する
イモータン・ジョーの一味に捕えられます。
瀕死の状態に痛めつけられたマックスの前に現れたのが、
ジョーの右腕であった女戦士フュリオサ。
彼女が起こした謀反に乗じて脱出に成功したマックスは、
フュリオサやイモータン・ジョーの子供を産むために
集められていた女性たちと共に逃避行を始めますが、
大軍の追手が背後から迫ってきます・・・。
 
秩序が崩壊し、暴力が支配する世界。
ライダース・ジャケットにプロテクターを装着し、
モヒカン頭で改造車を乗り回す暴走族・・・とくれば
なんか、どこかで聞いたことあるような気がしませんか?
そう、先ほども言いましたが、この作品は世界中のいろいろな作品に
影響を与えていまして、この「マッドマックス」シリーズに
最も大きな影響を受け、生まれたと言われるのが
あの「北斗の拳」なんです。
「マッドマックス」がなかったらケンシロウの
「革ジャンにブーツ」というお馴染みのスタイルも
まったく違ったものになっていたかもしれないと思うと、
面白いですね。あの革ジャン姿で
「お前はもう死んでいる」というからカッコいいんですよね。
フツーのスーツ姿だったりしたら、
漫画もヒットしなかったかもしれません。
もし、「マッドマックス」を知らなくても、
「北斗の拳」にハマった方なら、
この映画の世界にドップリ浸かれること間違いなしです!
 
男性映画なのね・・・と思った女性の方!
ぜひ注目していただきたいのが、
今回登場するキャラクターの、女戦士フュリオサです。
彼女を演じるのは、美人女優のシャーリーズ・セロン。
今回はなんと、あのブロンドヘアをスキンヘッドにして
オイルまみれとなり、美貌を封印。
男性顔負けのハードなアクションに挑戦する姿は、
女性も惚れ惚れするカッコよさです!
 
梅雨のうっとうしさを吹き飛ばしてくれる、豪快な1本!
ぜひ大画面のスクリーンでご覧になってください。
 
今日ご紹介した「マッドマックス 怒りのデス・ロード」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■TOHOシネマズ 宇城
■シネプレックス熊本
■イオンシネマ熊本
で、現在公開中です。
 
字幕版、3D日本語吹替え版 両方の上映がありますが、
日本語版は、エグザイルのAKIRAがマックス役、
イモータン・ジョー役を竹内力が演じています。
 
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」オフィシャルサイト
 
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本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
詳しくはここ↓
 

「国際市場で逢いましょう」

「FMK Morning Glory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の
「国際市場で逢いましょう」です。
 
この映画は、韓国の激動の現代史を生きてきた、
ある家族の話をドラマティックに描いた作品です。
 
第二次大戦後の復興を壮大なイメージで描いたヒット作品は、
いくつかあります。まず、1995年のアカデミー賞を受賞した
「フォレスト・ガンプ/一期一会」。
トム・ハンクス演じるガンプ青年が、ケネディ大統領と握手したり、
ベトナム戦争に従軍したり、アップル社に投資して
大金持ちになったりと、アメリカという国の「戦後史」を
ひとつの物語として語った作品でした。日本では、
「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズがそれにあたるでしょう。
東京タワーができる様子や新幹線の開通など、
日本の戦後復興の様子が、山崎貴監督得意のCGで再現されました。
テレビドラマの世界でいうと、2010年4月に放送された
三谷幸喜脚本の「わが家の歴史」という
スペシャルドラマがありました。
博多から上京した一家が、戦後を代表する様々人物と
かかわるというコメディ・ドラマでした。
高倉健、美空ひばり、黒澤明、長谷川町子、
マリリン・モンローなど多彩な登場人物が話題になりました。
 
今日ご紹介する「国際市場で逢いましょう」も
そんな手法で作られた映画です。
朝鮮戦争から現在まで、60数年間にわたる韓国近代史を
ぎゅっと1本に凝縮したような物語です。
 
主人公のドクスは、1950年、朝鮮戦争の混乱で
父親と幼い妹と離れ離れになってしまいます。
共に残された母親と弟、妹を養うため、家長として
釜山の国際市場の露店を手伝っていたドクスは、
弟の学費を工面するため、当時の西ドイツへ
炭鉱労働者として出稼ぎにいきます。
そこで派遣看護師として来ていたヨンジャと恋に落ち、結婚。
しかし末の妹の結婚費用などを稼ぐため、
今度はベトナム戦争に参加。危険と背中合わせに
なりながら、家族のためにひたむきに働き続けます。
 
まさに“韓国版「三丁目の夕日」”といった雰囲気のこの作品、
本国では1400万人以上を動員し、韓国映画史上
歴代2位の大ヒットとなりました。
現在の韓国の人口は約5000万人なので、
4人に1人が観た計算になります。
まさに国民的大ヒット映画です。
 
主役のドクスを演じるのは、「ユア・マイ・サンシャイン」の
ファン・ジョンミン、昨年公開された「新しき世界」では、
やくざ社会に生きる男をエネルギッシュに演じていましたが、
今回の役どころは全く逆。
家族のために真面目に働き続ける実直な男を好演しています。
この映画の大ヒットで「国民の父」と呼ばれる
存在になったそうです。
やさしい笑顔がとても魅力的な俳優さんです。
 
彼の妻・ヨンジャには、韓流映画ブームの火付け役となった
アクション映画「シュリ」やアメリカのテレビシリーズ
「LOST」にも出演していたキム・ユンジン、
 
また日本でも絶大な人気を誇る「東方神起」のユンホも出演し、
実在の人気歌手 ナム・ジンを演じ、
歌声を披露していることでも話題になっています。
 
監督のユン・ジュギュンは、前作「TSUNAMI ツナミ」でも
1132万人を動員した、韓国でも指折りのヒットメーカー。
今回のヒットで、韓国歴代ヒット映画のベスト10に
2本もライクインさせ、さらに注目が集まっています。
 
彼はヒットの理由を、「常に庶民にスポットを当ててきたから」と
語っていますが、今回の作品も自分の父親をモデルにしているとか。
歴史的な背景はちょっと違いますが、
一家団欒の様子や家族を思う心は日本も韓国も同じ。
懸命に生きてきた主人公の姿に、胸が熱くなる1本ですよ。
 
今日ご紹介した「国際市場で逢いましょう」は、
■Denkikan
で、現在公開中です。
 
お隣の国なのに、知らなかった出来事もたくさん描かれます。
戦後のアジアの歴史の勉強にもなります。
もちろん笑えるシーンもたくさんある人情ドラマで、
同時にかなり泣ける映画でもあります。
是非、劇場でこの感動を味わって下さい。
 
以上、「キネマのススメ」でした。
 
「国際市場で逢いましょう」オフィシャルサイト

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本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
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「海街diary」

「FMK MorningGlory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、今週土曜日・6月13日から公開される
「海街diary」です。
 
この映画は、「そして父になる」や「誰も知らない」などで
海外でも高く評価されている是枝裕和監督の最新作。
前作「そして父になる」は、福山雅治の主演で
「子供の取り違え事件」を描き、大ヒット。
カンヌ国際映画祭では、審査員賞とエキュメニカル賞
特別表彰の2冠を受賞しています。
 
今回の「海街diary」は、先月開催されたカンヌ国際映画祭の
コンペティション部門に正式招待され、上映後には、
満場の観客からスタンディング・オベーションを受けました。
国際映画祭のコンペ部門というのは、とても厳しい
映画ファンや評論家が鑑賞するので、よくない作品は、
上映の途中でも、どんどんお客さんが出て行って
しまうこともあるそうです。厳しいですね。
上映後にスタンディング・オベーションを受けるというのが、
いかに特別なことか・・・ということですね。
国際映画祭に参加した映画で上映後の映像が
報道されない場合は・・・・・・つまり・・・
どういうことか・・・・ということですね。
この映画の場合は大成功だったということです。
さすが是枝監督ですね。
カンヌ国際映画祭には、もう常連とも言える是枝監督です。
 
監督だけでなく、綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず
という、今をときめく4人の人気女優が4姉妹を演じる
豪華さでも注目の1本です。
 
舞台は鎌倉。ある日、幸、佳乃、千佳の3姉妹で暮らす
香田家に、15年前に、家族を捨てて、
家を出て行った父の訃報が届きます。
山形での葬儀に出席した姉妹は、
そこで母親の違う妹、すず と出会います。
父を亡くし、身寄りがいなくなってしまった すず に、
長女の幸は、鎌倉で一緒に暮らそうと提案。
申し出を受けた すず は、3姉妹と共に、
鎌倉で新たな生活をはじめます。
 
映画では、新たに4人姉妹となった彼女たちの暮らしを
美しい鎌倉の四季とともに、ゆったりと描いています。
大きなドラマを起こらないんですが、春・夏・秋・冬の
季節ごとに家族の間で起きるささやかな事件を
丹念に描いてゆきます。時々ケンカしながらも、
毎日食卓を囲み、周りの人と関わりながら暮らしていく4人。
 
一見ほのぼのとした話のようですが、
自分たちを捨てた両親を許せない長女・幸や、
不倫によって生まれた自分の存在を責める・すず、など
重い葛藤を抱えながら、それを乗り越えていくところが
物語のテーマ。
さまざまなエピソードを通して、お互いが心開き、
新たな家族になっていく姿はしみじみとして感動的です。
「家族を描いた」作品というより、「家族になる」物語と
言った方がよいかもしれません。
 
原作は、2013年のマンガ大賞など、数々の賞に輝く
吉田秋生のベストセラーコミック。
監督自身が、原作の大ファンだったこともあって、
その世界観をとても大事にして、撮影されています。
原作にも色んな食べ物が描かれていましたが、
映画では、ちくわカレー、アジフライ定食、
しらすトースト、生シラス丼、手作り梅酒など、
様々な食べ物が登場して、食卓を彩ります。
この食べるシーンがとても素晴らしいです。時には
お行儀が悪いような食事シーンもあったりするんですが、
そんな場面も含めてとても幸せな食事シーンが描かれます。
食卓を囲む時間を重ねることが、
家族を作っていくことに繋がっていく・・・。
映画はそんなことを伝えたかったのではないかと思います。
 
舞台が鎌倉で家族のお話というと、
思い出される日本の映画監督がいます。
小津安二郎監督です。「晩春」、「麦秋」、
「東京物語」、「お茶漬けの味」、「秋刀魚の味」などなど。
数え上げればきりがないくらいの名作を生み出した
日本を代表する名監督。鎌倉を舞台にした作品が
多いことでも知られています。
是枝監督は、家族が時間を積み重ねていく姿を
小津映画から学んだと語っています。
特に長女幸を演じる綾瀬はるか が、なんとなく
往年の名女優・原節子を彷彿とさせる「凛」とした古風な
女性になっているのも「小津風」と言えるかもしれません。
 
ヨーロッパでは、是枝監督のことを「小津の孫」と
呼ぶ記者もいるそうです。
静かなドラマの中で育っていく家族の愛情。この
「海街diary」は、現代版「小津映画」とも言えるかも
しれません。もし、小津作品を観たことがなかったら、
この機会に「海街diary」と一緒に観ることをおススメします。
 
鎌倉の四季の中で成長する四人姉妹の姿。
日本映画の伝統を踏まえながら、新しいチャレンジも
満載されている気持ちのよい映画です。
観た後に家族で食卓を囲みたくなる、あたたかな1作です。
 
今日ご紹介した「海街diary」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■TOHOシネマズ 宇城
■シネプレックス熊本
■イオンシネマ熊本
で、今週土曜日・6月13日から公開されます。
 
「海街diary」オフィシャルサイト
 
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本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
詳しくはここ↓
 

「トイレのピエタ」

「FMK Morning Glory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、今週土曜日・6月6日から公開される
「トイレのピエタ」です。
 
今も“マンガの神様”として、新しい世代にもファンを
増やしている手塚治虫。
この映画は、1989年、60歳で生涯を閉じた
手塚治虫が病床で綴っていた日記に、
監督の松永大司が触発されて作り上げた、
オリジナルストーリーです。
 
その日記の文章は、手塚が亡くなるひと月前に
記されたもので、ラストのページだったといいます。
旺盛な製作意欲を、最後の最後まで持ちづづけていた手塚治虫。
最後の最後までマンガのアイディアをノートに書き連ねていました。
短い文章なので、引用してみます。
 
1989年1月15日 
今日はすばらしいアイディアを思いついた!
トイレのピエタというのはどうだろう。
癌の宣告を受けた患者が、何一つやれないままに死んで行くのはばかげていると、
入院室のトイレに天井画を描き出すのだ。
周辺はびっくりしてカンバスを搬入しようと するのだが、
件の男は、どうしても神が自分をあそこに描けという啓示を、
便器の上に使命されたといってきかない。
彼はミケランジェロさながらに寝ころびながらフレスコ画を描き始める。 
彼の作業はミケランジェロさながらにすごい迫力を産む。
傑作といえるほどの作品になる。
日本や他国のTVからも取材がくる。
彼はなぜこうまでしてピエタにこだわったのか?
これがこの作品のテーマになる。
浄化と昇天。
これがこの死にかけた人間の世界への挑戦だったのだ!
 
これが全文です。
この映画は、この手塚の最期の言葉とも言えるこの文章から
インスパイア―された作品。
「ピエタ」というのは、聖母子像で、
死後十字架から降ろされたイエス・キリストを抱く
マリアを描いた絵画や彫刻などの芸術作品のこと。
10年ほど前に、テレビのドキュメンタリー番組で
この手塚の日記に出会った松永監督はアイデアを
ずっと胸にあたため、自らか脚本を書き、
長編デビュー作として映像化することにしました。
 
その映画の主人公は、園田宏。
美大を卒業したものの、画家の夢に破れた彼は、
日々をビルの窓清掃をして暮らしていました。
ある日、突然、病院でガンの宣告を受けた彼は、
生きることの意味を見失ってしまいます。
そんな宏と、ひょんなことから出会った女子高生の真衣。
彼女は、複雑な家庭環境の中で、毎日を苛立つように生きていました。
対照的な2人は、反発しながらも惹かれあっていきます。
 
宏を演じるのは、ロックバンド「RADWIMPS」のボーカル・野田洋次郎。
演技は初挑戦となる彼ですが、まるで宏というキャラクターそのもののような、
素晴らしい演技を見せています。
特に「つまらなそうな表情」が抜群。
演技でなく、全身で宏という役を生きて体現しているようで、
俳優にはできない存在感が抜群です。
 
女子高生・真衣役には、テレビドラマ「夜行観覧車」や
「思い出のマーニー」の声優などで注目を集めた、杉咲花。
 
ぐっさんと回鍋肉を食べまくるCMの女の子、
といった方が分かりやすいかもしれませんね。
 
生命力あふれるヒロインを、生き生きと好演しています。
また、宏の入院する病院で同室になる男性を、
リリー・フランキーが演じているんですが、
これもまた、いい味を出していますよ。
 
生と死を描いた映画は、ともすればわざとらしくなりがちですが、
ドキュメンタリー出身の監督らしく、
役者たちが物語の中で自然に生きているような演出が印象的です。
そして、タイトルの「トイレのピエタ」。
いったいどんなピエタが描かれるのか。
ぜひスクリーンで確かめてみてください!
 
今日ご紹介した「トイレのピエタ」は、
■Denkikan
で、今週土曜日・6月6日から公開されます。
 
ここでもう1本「RADWIMPS」ファンにおススメの作品があります。
「RADWIMPS」を追ったドキュメンタリー作品
「RADWIMPS 2014 Document 4×4」です。
6月6日(土)のみDenkikanでの上映が決定しました。
 
バンドのアートディレクターも務める永戸鉄也によるドキュメント作品です。
「RADWIMPS」が2014年2月5日~7月20日にわたり
アジアを含む全44ヵ所で行ったライヴツアーの模様を追ったドキュメンタリーです。
リハーサルスタジオから完全密着し、
ツアーファイナルの沖縄公演までを監督が自らカメラを持って撮影、
彼らのオフステージの様子に肉薄しています。
「RADWIMPS」ファンは、見逃せない1本です。
6月6日(土)のみの上映ですので、お見逃しなく!
 
「トイレのピエタ」オフィシャルサイト
 
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本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
詳しくはここ↓
 

「チャッピー」

「FMK MorningGlory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の「チャッピー」です。
 
2009年の長編デビュー作「第9地区」で、
エイリアン映画ながら人間社会の縮図を描き、
映画ファンの注目を集めた、ニール・ブロムカンプ監督。
当時29歳という若さだったのですが、フレッシュなビジュアル感覚と社会派なテーマを盛り込む手法の新しさに、アカデミー賞でも注目されました。
作品賞、脚色賞、編集賞、視覚効果賞など多数の部門にノミネートされ、ブロムカンプ監督は、一躍「時の人」となりました。
 
つづく長編2作目「エリジウム」は、荒廃した地球に住む労働者層と宇宙空間のコロニーに住むエリート層との「格差社会」を舞台にした作品でした。
制作費も1作目よりぐっと増え1億ドルを越えています。
3作目の今回は、再び故郷・南アフリカのヨハネスブルクに舞台を戻し、「第9地区」を思わせる、パワフルな社会派エンターテイメントSF大作となっています。
全米1位の大ヒットを記録し、ますますブロムカンプ監督の名声が上がっています。
 
今回のテーマは、人工知能、AI。
「AI」といえば、2001年にスピルバーグが監督したヒューマンドラマを思い浮かべる方も多いと思いますが、この映画は全く雰囲気が違います。
今回、AIが搭載されるのは、犯罪多発地区を警備するために作られた警察ロボット。
開発者のディオンは、上司に無断で独自に開発したAIを、スクラップ寸前のロボットに搭載します。
ところがその矢先、ディオンは警察ロボットを憎むストリートギャングに、ロボットごと誘拐されてしまいます!
生まれたばかりの赤ん坊同然のロボットは「チャッピー」と名付けられ、驚くべき速さでギャングとしての生き方を学び、成長していきます。
一方、ディオンのライバルである同僚の科学者ヴィンセントは、自分が開発した脳波でコントロールするタイプの大型ロボット「ムース」の出番がなく、不満を募らせていました。
「チャッピー」の存在を知ったヴィンセントは、彼を「ムース」の売り込みに利用することを思いつくのですが・・・・・。
 
見た目はごついロボットなのに、中身は純粋無垢なチャッピー。
最初は、まるで赤ちゃんのような無垢な存在だったチャッピーは、ギャングの仲間から急速に学習し、ギャングのように肩で風を切って歩いたり、乱暴なスラングをペラペラしゃべるようになります。
このあたりのくだりは、かなり可愛く、笑えるんですが、同時に、無垢な存在でも教育次第で悪に染まっていくという南アフリカのストリートの怖さを描いています。
この、ロボットなのに人間らしいチャッピーを演じているのが、ブロムカンプ監督の盟友シャルト・コプリー。「第9地区」では、エイリアンのDNAを浴びて変身する主人公を演じていました。
今回は、声のみの出演ですが、感情を持ってしまったロボットの喜びや悲しみを、生き生きと表現しています。
天才エンジニア・ディオンを演じるのは、「スラムドッグ$ミリオネア」でブレイクしたデーヴ・パテル。
悪役ビンセントは、ヒュー・ジャックマンが、ノリノリで演じています。短パンを履いて毒舌を吐く彼の役どころは、」かなり珍しい役どころです。
ロボットを作る会社テトラバール社の女性CEOをシガニー・ウィーバーが演じていますが、シガニー・ウィーバーと言えば「エイリアン」シリーズのヒロイン・リプリー役で有名です。なんと撮影中にブロムカンプ監督が提案した「エイリアン」の新作に関するアイディアを大いに気に入って、20世紀フォックスに熱烈アプローチ。
現在、シリーズ最新作・5作目の「エイリアン」をブロムカンプ監督とともに、正式に準備中だというニュースも飛び込んできました。
 
このように、ブロムカンプ監督は、筋金入りのSFファンです。
今回の作品が、数多くの先人の作品から影響を受けていることをインタビューでも語っています。
犯罪地区を制圧するロボット警官という設定は、昨年リメイクもされた1987年の「ロボコップ」から大きく影響を受けているそうです。
また、チャッピーのデザインは、士郎正宗の「アップルシード」シリーズのデザインから影響を受けているとのこと。
ここから先は、ネタバレになるので、詳しくは言えませんが、クライマックスの「ある展開」が、日本の有名なアニメ作品から影響を受けているのは間違いありません。
このあたりも是非お見逃しなく!
 
派手な見せ場だけの一般的なハリウッド映画と違って、「チャッピー」は、とても現代的で社会的なテーマを見事にビジュアル化した作品です。
「教育」が世の中を変える一番の武器だ!と教えてくれる とても「道徳的」な作品と言えるかもしれません。
 
今日ご紹介した「チャッピー」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■TOHOシネマズ 宇城
■シネプレックス熊本
で、現在公開中です。
 
「チャッピー」オフィシャルサイト
 
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本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
詳しくはここ↓
 

「パンク・シンドローム」

「FMK Morning Glory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、今週土曜日・5月23日から公開される
「パンク・シンドローム」です。
 
この映画は、フィンランドの
「ペルッティ・クリカン・ニミパイヴァト」という
パンク・バンドに密着したドキュメンタリー作品です。
 
パンク・ロックは、70年代にニューヨークやロンドンを
中心に誕生した音楽。
シンプルで強烈なサウンドと怒りを込めた歌詞で若者に
熱狂的に支持されました。「セックス・ピストルズ」や
「クラッシュ」などのバンドは世界的に大ヒットを飛ばしました。
時は流れて2000年代。アメリカでもイギリスでもない
北欧フィンランドでパンクをやる四人組バンドが
「ペルッティ・クリカン・ニミパイヴァト」です。
バンドメンバーは、ペルッティ、カリ、サミ、トミの4人。
下は32歳のトニから、上は57歳のペルッティと、
年齢差が大きいのもユニークですが、
最も特徴的なのは、メンバー4人すべてが知的障害者であることです。
 
バンドが結成されたのは、2009年。
あるNPOが主催したカルチャーワークショップで結成され、
活動をスタートします。知的障害があるといっても、彼らはプロ!
2010年には他のパンクバンドとのスプリットシングルという
複数のアーチストを収録したオムニバス盤の
シングルバージョンという形でレコードデビューを果たします。
これまでに7インチレコード5枚、カセット3本、
CD1枚、LPレコード1枚をリリース。
またドイツやノルウェー、イギリスでのツアーを成功させるなど、
ワールドワイドな活躍をしている有名バンドなんです!
 
「ペルッティ・クリカン・ニミパイヴァト」というバンド名は、
「ペルッティの名前の日」という意味。
キリスト教の習慣でファインランドでは、
おのおのの「名前の日」が存在します。
メンバーのペルッティの名前にちなんでのネーミングという訳です。
 
映画では、そんな彼らの練習の様子やライブ、曲作りをしているところ、
レコードデビュー、海外ツアーなど様々なバンド活動に密着。
さらにはメンバーの結婚や失恋など、
プライベートな部分にまで迫っています。
 
作詞・作曲も担当するペルッティは、とにかく服の縫い目が気になります。
他人の服の縫い目をついついチェックしてしまいます。
ボーカルのカリは、足の指の爪を切られるのが苦手。
バンドメンバーとの意志疎通がうまくいかないと
急に切れて大声を出したりします。
 
ベースのサミは、美人政治家のサポーターで、講演会に熱心に通っています。
最年少のトニは、家が大好きで、施設からの誘いを何度も断っています。
 
音楽をテーマにしたドキュメンタリー映画は、これまでにもたくさん
作られていますが、この映画が最も違うところは、
全くかっこつけていないところ。
おぜん立てされたインタビューシーンはほとんどなく、トークの部分は
彼らが自然と口にした言葉。また取っ組み合い寸前の本気のケンカや、
互いの悪口を言うシーンまで赤裸々に収め、
リアルなバンドの姿を映し出しています。
 
そしてもう1つビックリさせられるのが、彼らが歌う歌詞。
もともとパンクは、反体制的な思想が反映された音楽ですが、
その歌詞は笑っちゃうぐらい過激。しかし彼らの境遇を思うと、
これ以上ないほどのリアルさを持っていて、胸に響きます。
 
 
70年代を代表するパンク・バンド「クラッシュ」のフロントマン、
ジョー・ストラマーはこんな名言を残しています。
 
Punk is attitude. Not style.
「パンクはスタイルではない。生きる姿勢だ!」
 
この映画は、そんなパンクの魂を、時代を越え、
国境を越えて受け継いだ4人のバンドマンの物語です。
演奏やテクニックを越えた「なにか」を
スクリーンで感じることができます。
 
本国フィンランドはもちろん、日本でも山形国際ドキュメンタリー
映画祭などで上映され、絶賛された作品です。
パンクなんか興味ないという人も、この映画をみると、
きっとペルッティたちのファンになってしまうと思いますよ。
ドキュメンタリーという枠組みをこえた、
ハイパーな音楽映画と言えるかもしれません。
 
今日ご紹介した「パンク・シンドローム」は、
■Denkikan
で、今週土曜日・5月23日から1週間限定で公開されます。
 
「パンク・シンドローム」オフィシャルサイト
 
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本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
詳しくはここ↓
 

「駆込み女と駆出し男」

「FMK Morning Glory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、今週土曜日・5月16日から公開される
「駆込み女と駆出し男」です。
 
さて、気候のいいこの時期はブライダルシーズン。
結婚式に出席した方も多いと思いますが、
結婚とくれば、その逆、離婚も最近では「離婚式」のような
式をあげるカップルもいるぐらい身近な事になっています。
“最近の夫婦はすぐ離婚する”なんて話もよく聞きますが、
実は江戸時代の離婚率は今よりずっと多く、
統計によると庶民では現在の2倍ほど。
武家の場合はなんと10%を超えていたというから驚きです。
 
この時代、庶民の離婚は簡単で、
男性が離縁状を描いて女性に渡せば離婚成立。
離縁状は3行ほどだったので、「三下り半」とも呼ばれました。
しかしこの離縁状、書けるのは夫だけで、
女性から離婚を申し立てることは出来ません。
男社会ならではのとても不公平なシステムだった訳です。
 
そこで離婚したい女性の最終手段となったのが、
全国で2か所存在したという、幕府公認の縁切り寺でした。
離婚を望む女性がそこへ駆込めば、
御用宿の離婚調停人の聞き取り調査を経て、
示談がまとまらなければ寺入りし、寺で2年を過ごせば
夫は、いやでも離縁状を書くしかない、
という当時の女性を救済するためのシステムでした。
 
この映画「駆込み女と駆出し男」は、そのうちの1つ、
鎌倉の東慶寺を舞台に、日本を代表する劇作家、
故・井上ひさしが晩年11年の歳月をかけて書いた小説
「東慶寺花だより」を原案としています。
井上ひさしと言えば、日本の文学界、
演劇界で長年にわたって活躍した作家です。
古くは、放送作家として、人形劇
「ひょっこりひょうたん島」の台本を書いていたり、
自ら劇団「こまつ座」を旗揚げして、
多くの名作舞台を生み出したり、他方面で活躍した人物です。
この映画では、井上ひさしらしい江戸情緒が随所に
登場してきて、粋でテンポのいいニュータイプの
時代劇に仕上がっています。
 
監督は、「金融腐蝕列島・呪縛」や
「クライマーズ・ハイ」など社会派の現代劇を
得意としてきた原田眞人監督。
今回、初の時代劇にチャレンジした原田監督は、
日本映画黄金時代の時代劇、黒澤明の「赤ひげ」や
川島雄三の「幕末太陽傳」などの作品を
かなり参考にしているそうです。
今回、舞台として撮影に協力したのは、
兵庫県姫路市にある「圓教寺」というお寺です。
実は、原田監督、トム・クルーズ主演
「ラスト・サムライ」に俳優として出演した際に、
このお寺での撮影を見学し、雰囲気の素晴らしさに感動し、
「いつか自分の作品でも撮影してみたい。」と
念願していたそうです。
今回の企画は、この「圓教寺」での撮影ありきで
スタートしたそうですよ。「ラスト・サムライ」も
ハリウッドが作った新しい時代劇でしたが、
今回の時代劇で「離婚調停所」を描くという
斬新な切り口もまた新しい時代劇を感じさせます。
 
出演は、夫の暴力から逃げてきた・ジョゴを
戸田恵梨香が演じる、豪商の愛人・お吟を、
満島ひかりが演じています。これまでの彼女たちが
演じた役どころとは、かなり違ったキャラクターで、
様々な事情をもつ女性たちが新たな一歩を
踏み出していく姿を、時代劇らしい、
品のある映像美で描き出していきます。
 
そんな女性たちの味方として登場するのが、
大泉洋演じる戯作者に憧れる見習い医者の、中村信次郎。
どこかとぼけてコミカルで、
暖かく女性たちを見守るキャラクターは、まさにハマリ役!
たぶん「幕末太陽傳」のフランキー堺をイメージした
キャステングだと思いますが、テンポよく畳み掛けるような
口調の信次郎は、大泉洋の新境地と言えそうです。
特に駆け込み女と取り戻そうと乗り込んでくる
怖いヤクザの親分を、口八丁の出まかせで
やり込めるシーンは見事です。
また、黒澤明の「赤ひげ」でも重要な役を演じた山﨑努が、
「南総里見八犬伝」を執筆する曲亭馬琴を演じています。
信次郎が憧れる戯作者の大物を存在感たっぷりに演じています。
その他、曲者キャストも多数登場し、
飽きさせない作りになっています。
 
この「キネマのススメ」のコーナーでも、
いくつか紹介してきました映画会社・松竹の作る
新しいタイプの時代劇。「武士の家計簿」、
「武士の献立」、「超高速!参勤交代」などありましたが、
最新進化系がこの作品と言えそうです。
古い時代劇の感覚を忘れて、新しいタイプの
エンターテイメントとして楽しめる作品です。
観た後に、気持ちが晴れやかになる作品。
特に女性に観ていただきたい1本です!
 
今日ご紹介した「駆込み女と駆出し男」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■TOHOシネマズ 宇城
■シネプレックス熊本
■イオンシネマ熊本
で、今週土曜日・5月16日から公開されます。
 
以上、「キネマのススメ」のコーナーでした。
 
「駆込み女と駆出し男」オフィシャルサイト
 
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本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
詳しくはここ↓
 

「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」

「FMK Morning Glory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、今週土曜日・5月9日から公開される
「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」です。
 
この映画は、今年のアカデミー賞で有力候補として注目されたもので、
作品賞や監督賞など8部門にノミネートされ、みごと脚色賞を受賞しました。
アカデミー賞は、原作を脚本化した場合の部門の「脚色賞」と
オリジナルな脚本に送られる「脚本賞」があり、
この作品は「脚色賞」を受賞しています。
原作の複雑な内容を見事に映像化した点が評価されたようです。
 
物語の舞台となるのは、第二次世界大戦中のイギリス。
ケンブリッジ大学の特別研究員で、27歳にして“天才数学者”と讃えられる
アラン・チューリングは、ドイツ軍の暗号「エニグマ」を解読する
政府の極秘任務に呼び出されます。
当時、「世界最強の暗号マシーン」と言われた「エニグマ」。
ドイツ軍は、「エニグマ」で作った暗号を使って、
作戦に関する情報をやり取りし、戦況を有利に進めていました。
暗号のパターン数は、159×10の18乗という途方もない数。
10人の人間が1日24時間働き続けても、
全組み合わせを調べ終わるまでに2000万年かかるという複雑さでした。
しかも、ドイツ軍は毎晩0時に暗号のパターンを変えてしまいます。
 
この「エニグマ」を解読しなければ、戦況を逆転することはできないということで、
イギリス軍は、各分野の精鋭によるチームを召集します。
暗号の専門家、チェスのチャンピオン、
クロスワードの専門家など多種多彩な分野の混成部隊です。
不器用なチューリングは、彼らとの協力を拒み、
ひとりで電子操作の解読マシーンを作り始めます。
仲間との溝が深まる中、新たにチームに加わった女性ジョーンが
チューリングの理解者となり、仲間との距離を縮めてくれるように。
暗号の解読をゲームと捉えていたチューリングも、次第に変化してゆくのですが・・・・
 
この映画の主人公、アラン・チューリングは、
実はつい最近まで国家機密のために、その人生はあまり明らかにされず、
業績も正統に評価されていませんでした。
しかし、この映画で描かれているように、彼は「エニグマ」を解読し、
そのおかげで戦争の終結を早めることができたと言われているほか、
現在のコンピュータの基礎を作ったり、人工知能や人工生命、ゲーム、電子音楽、
ネットワークやロボットなど、様々な分野の研究を行っていたといいます。
 
このアラン・チューリングを演じたのが、
今、最も注目を集める俳優の1人、ベネディクト・カンバーバッチ。
彼は、“誰よりもアランを理解している“とアラン・チューリングの遺族に
讃えられるほどの迫真に迫る演技で、
アカデミー主演男優賞にノミネートされました。
「天才的なキャラクター」という設定は、よくいろんな映画に登場してきますが、
このチューリングは実在の天才。リアリティのある演技で
見事に演じているカンバーバッチが見事です。
頭のいい人って紙一重で「変人」だったりするので、
演技のバランスが難しいんですよ。
その絶妙なバランスが素晴らしいですよ。
 
また、チューリングを支える女性ジョーンを演じたキーラ・ナイトレイも
アカデミー助演女優賞にノミネートされる素晴らしい演技を見せています。
現在公開中の映画「はじまりのうた」では、
デビューを夢見る新人女性シンガーソングライターの役を見事に演じていますが、
映画によってまったく違った表情を見せられるのが彼女の素晴らしいところです。
この映画でも、キーラ・ナイトレイのクライマックスの演技が評判になっています。
映画の中では、何度も同じセリフが登場します。
それは、「時に誰も想像しなかった人物が、
想像もできない偉業を成し遂げる」という言葉です。
台詞が話されるたびに、その意味が少しずつ変化するところを
見のがさないで下さい。もちろん、この台詞を話すキーラの表情にも注目です。
「時に誰も想像しなかった人物が、想像もできない偉業を成し遂げる」、
これ「魔法のことば」でも紹介したい名言ですね。
 
知られざる天才のたどった数奇な運命。ぜひスクリーンで体験してみてください。
今日ご紹介した「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」は、
 
■Denkikan
■TOHOシネマズ光の森
 
で、今週土曜日・5月9日から公開されます。
 
「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」
オフィシャルサイト 
 
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本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
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「龍三と七人の子分たち」

「FMK Morning Glory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、
現在公開中の「龍三と七人の子分たち」です。
テレビの世界では「ビートたけし」、映画監督として活動する時は「北野武」。
二つの顔を使い分けながら、いまや日本を代表するクリエーターとして、
押しも押されもせぬ存在となった北野武監督。
その3年ぶりとなる最新作がこの作品です。
北野監督のデビューは、1989年の「その男凶暴につき」。
26年間でコンスタントに作品を発表して、この作品が長編17作目となります。
プロフェッショナルな映画監督でさえ、26年間で17本というのは、
かなり多い部類なんですが、北野監督の特殊なところは、
作品ごとにまったく違った題材を取り上げて、映画を作っている点です。
暴力映画の後におバカな映画を作ったり、時代劇を作ったり・・・・
次に何をするのかまったく読めないのが北野映画の一つの魅力になっています。
 
北野映画といえば、ベネチア国際映画祭でグランプリを受賞した「HANA-BI」などの静かでストイックなものや大ヒットした「アウトレイジ」、
「アウトレイジ:ビヨンド」といった切れ味の鋭い暴力をテーマにした映画をイメージする方が多いと思います。
しかし、メディアでもかなり紹介されていますが、
今回の作品のポイントはメインキャストが平均72歳の超ベテラン俳優たちであること!
そして、彼らが大活躍する、笑えるエンターテインメント活劇だということです。
製作スタッフはいつものメンバーの北野映画なんですが、
今回は、かなりコメディアン「ビートたけし」のテイストが濃厚に出た作品と言えそうです。
 
主人公の龍三は、かつては“鬼の龍三”と鳴らしながらも
今は同居する息子家族に煙たがられ、肩身の狭い思いをしている、元ヤクザの組長。
ある日、「オレオレ詐欺に引っかかった龍三は、
元暴走族の京浜連合と因縁めいた関係になります。
京浜連合は、高齢者をカモにしたオレオレ詐欺や訪問販売などで金儲けをする集団。
そのやり口が気に食わない龍三は、かつての仲間に声をかけ、
銃の早打ち、仕込み杖など、得意技をもつ7人の子分たちと共に、
もう一度やくざの組「一龍会」を結成!
果たして、今どきの詐欺集団と、時代遅れの元ヤクザたちの
全面戦争がはじまります!
 
龍三を演じるのは、北野作品は初参加となる藤竜也、
また、中尾彬、近藤正臣、といった顔ぶれが個性的な子分を演じます。
この8人のおじいちゃんたち、まるで漫才のような絶妙な掛け合いを
見せてくれるんですが、これには一切アドリブがなく、すべて台本通りとか。
これまでの北野映画は、現場での変更が多く、まるでジャズの演奏のようなアドリブ演出を重視した撮影が多いことで有名だったんですが、今回はしっかりと脚本を作った後に、台本の読み合わせをしてから撮影に臨むという王道の手法で撮影したそうです。
「笑いは微妙な掛け合いのテンポが大事」という北野監督のお笑いに関するこだわりから、リハーサルの段階から台詞の「間」を大事に、俳優たちに何度も練習させたそうです。
これまでもコメディ・タッチの北野映画は、「みーんなやってるか?」や「監督ばんざい!」のように何本かあったのですが、微妙に外した「クセのあるコメディ」でした。
今回の作品は、だれが観ても笑える王道のコメディ映画を狙っていて、北野監督の本業である「お笑い」へのこだわりがビンビン感じられる作品になっています。
また、北野監督は“演技も漫才と同じように一発勝負だ”という思いから、
テストをせず、ほとんど一発撮りで撮っているそうで、
画面からもライブ感あふれるエネルギーが伝わってきます。
特にクライマックスのバスのカーチェイスでは、実際に主要キャストを乗せたまま、バスが暴走するシーンを撮影したそうで、ハリウッド映画とはまったく違う「迫力ある笑える暴走シーン」になっています。
 
とにかく、ここ数年、劇場でこんなに笑いが起きた映画もなかったと思うくらい完成度の高い「喜劇映画」です。
 
この「キネマのススメ」のコーナーで、前に「喜劇映画が復活しそうな予感がある」とお伝えしましたね。「福福荘の福ちゃん」や「ジヌよさらば」のような大人のための「喜劇映画」が生まれてきていることを踏まえての発言でしたが、ここにきていよいよ真打登場という感じです。
まるで、よくできた古典落語のような味わいがあるコメディ作品だと思います。
バカなお話がどんどん展開してゆくんだけど、どこか人間の悲しみやわびしさなんかも描いた「日本の喜劇映画」です。
 
それを支えるのは、なんと言っても魅力的なキャスト。
これまでの北野映画は、あまりアップを撮らないで、俳優の表情も無表情なものが多かったのですが、この映画は、俳優の魅力的なアップの表情をたくさん使っていて、笑わせてくれます。
ネタバレになるので、詳しくは言えませんが、映画中盤で親分・龍三が、ある「コスプレ」をするシーンがあって、ここの藤竜也さんの表情が絶品です!!笑わせます!
 
ちなみに、タイトルの「龍三と七人の子分たち」の「七人」ですが、北野監督が敬愛する黒澤明監督の代表作「七人の侍」にオマージュをこめているとのこと。思い切り笑えてスカッとする、楽しい娯楽映画。
暴力描写が苦手で、これまで北野作品になかなか足が向かなかった女性たちや年配の映画ファンにもおススメですよ!
 
今日ご紹介した「龍三と七人の子分たち」は、
■TOHOシネマズ はません
■シネプレックス熊本
■イオンシネマ熊本
で、現在公開中です。
 
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